4~5年前になるか、おれのバカアニキは長年勤めていた動産管理会社を辞めて、ドッグ・ブリーダーの仕事はバカ女房に任して、自分で似たような会社を興したのだ。
不動産関係の会社なんて、有限会社が多いのだが、ヘンなプライドで銭もねーのにムリして株式にしてしまった。
更には銭がねーもんだから、賃貸の一軒家を引き払って、ラブラドール・ファミリーご一行様と、バカアニキ一家が実家にやってきたのだ。
んでもって、バカアニキがゆーとこのウマい話しってーのがあって、なんでも流行のビッキング強盗から家を守る、画期的なカギの販売なのだ。
どーだい、これは売れるぞ、なんならお前にも手伝わしてやるが、どーだい、え?
などとのたまうので、おれはアニキに、正気で言ってんのか? そんな水道の蛇口を売るような、先が分かる商売だぞ。行き渡ったらそれでチャンチャンだぞ。
当時は携帯電話が行き渡って、0円でもいらねー時代になっていたのだ。
蛇口を売るなら、水道を売ったほうがいい。
携帯電話を売るなら、通話料が取れるコンテンツを売ったほうがいい。
それはムリに決ってんのだから、そりゃーまあ、カギなら住人が引っ越せば取り替えるだろーが、そんなスパンじゃー商売にならん。
ピッキングが流行って新しいタイプのカギが他社からもジャンジャンできてるのだ。
そこの隙間を模索して、新しいことで商売するのが起業ってーもんだろ。
んなこと社会人なら誰にでも分かるのだ。
そもそも、工業高校を卒業してすぐに、大日本国を自衛するとゆー大義名分の土木作業員の公務員に長らくいたので、そこらへんのセンスは無いに等しい。
なんでも川崎のカギ工場は何件か倒産してるときいた。
銭湯の下駄箱のカギ、頑丈で何十年も壊れないし、銭湯自体が減ったかららしいのだ。
だからって、壊れたから取替えってーワケにはいかんだろ、カギなのだからな。
長々とバカアニキのバカを丸出しにしてしまったのだが、借金にまみれて、バカ女房と殺し合いみてーなケンカを繰り返して離婚。
更には実家を売って、間が悪いことにお袋の糖尿が悪化して、病院や介護施設に入院したあげく他界。
おれは先祖代々の位牌を持って、当時飼っていたネコの『師匠』と共に引っ越した。
バカアニキは、お袋っ子だったので、お袋の位牌だけ持って行方不明。
介護施設からは、費用が未納の連絡があり、バカアニキの引越し先を訪ねたそーだが、更に引っ越したみてーで行方不明が判明した。
子犬は貰い手があったのだろーが、元々のゴッドマザーの老犬は、実家のご近所さんが引き取ったそーだ。
おれは心苦しいよ。
お袋の位牌も返して欲しいし、犬や施設や実家のご近所さんたちにもケジメを付けて欲しいのだ。
ネットでバカアニキの名前を検索したら、バカアニキ本人らしいセンスの会社名のHPを見つけた。
ってーか、そこそこ珍しい苗字なのね。
一つは以前に潰した会社で、もう一つはPCオペレーターの派遣業だったが、日付が三年前で止まっている。
二つとも台東区三ノ輪~千束あたりで、行方不明当時の住所から離れてないので、今でもそこらへんに潜伏してるのだろーな。
いずれ探し出してとっちめてやるのだ。
バカアニキ。