かつて相棒だったFの死体が自宅アパートで発見されたのは、一昨日のことらしい。
おれみたいに舞台や映画、イベントの仕事を流浪にこなしていると、ワンシーズン一緒に仕事しただけでもう一生逢わないなんてーな”仲間”がたくさんできる。
Fもその一人で、十数年前、大手映画会社の企画で練馬区大泉の撮影所を一般に開放してのイベントがあり、その中のステージで忍者の戦隊が現代に蘇った吸血鬼と闘うなんてーな劇場型ヒーローショーをやり、おれとFは二人で巨大コウモリ怪獣を浄瑠璃で操っていたのだ。
だからFとは稽古で一ヶ月、本番一ヶ月の都合二ヶ月の間柄なのだが、Fの基本は制作でおれは演出部だから、コウモリ怪獣が出番のとき以外は、さほど一緒の仕事はない。
非常に微妙な相棒だったのだ。
更に記憶するならば、ビタビタの関西人のFの言動と行動と味覚は、ケチョンケチョンの江戸っ子であるおれとはソリが合わず、はっきりいって、ちとめーわくなヤツだったのだ。
とくに嫌だったのは、スタッフルームに段ボール一箱分のドロソースを持ち込んだことなのだ。
わざわざ取り寄せた本場のドロソースは関東で買えるのとはだいぶ違うぞ。
あの恐怖のテロリスト的ドロソース。
素材の味を全て抹殺し、濃厚でスパイシーな香りで全てが台無しのドロソース。
カレーや揚げ物にドロソースは当たり前で、焼き物や豆腐にもドロソースで、納豆もドロソースなら食えるで!
そーしてまで喰うなよ、食材に失礼だろ。
Fは相変わらず大泉の撮影所で、お面かぶった変身バイク乗りシリーズの制作をしてたらしいのだが、無断欠勤があってから、アパートで発見されたらしい。
只今警察が調べているので詳しくは分からんが…。
Fはおれのことを覚えていただろうか。