おれは負けたのだ。
自分自身に負けたのだ。
貧しさにも負けて、世間にも負けた枯れすすきなのだ。
地下鉄の車輌、一両まるまる8~12歳くらいの多様な年齢のガキが歯のよーにびっしり座っていたのだが、多少歯肉炎気味で、ぽつぽつと歯抜け状の席には一般の大人が不愉快に座っていたのだ。
ときに地下鉄一両分の座席キャパシティは幾人なのだ?
小学校のスポーツ・クラブの団体っぽかったので、一クラス強の人数はいたよな。
もちろんガキはバカに決っているのだが、一応、照れなのか集団心理なのか獣の縄張り心理なのかは動物学者なのでわからんが、女子のかたまりと男子のかたまりに分かれていて、んでも適当に色気づいてるもんだから、男子が席を立ちゃあ、ケータイもって女子のコロニーにちょっかいを出しにいくのだ。
それがうっとーしーし、だんだんと傍若無人になってくる。
おれは読んでいた週刊文春をたたんで、保護者か教師、またはそれに準ずる責任者みてーのを、ガキの行動とそれに視線をくれるヤツをたよりに探したのさ。
したら一番大人っぽくて、おれより身長がある青年がいたので、そいつが責任者かと思ったのだが、口のまわりにウブ毛が生えてやがるのさ。
話しにならん。
チャンスをみて、ガキが隣に座ったら責任者を聞き出す用意をしていたのだが、おれが甘かった。
つり革につかまってホーホーヒーヒーわめくチンパンジーにまで進化してたのだ。
今、そのチンパンジーを捕獲したら、その他のチンパンジーの反応が恐くなってしまった。
例えば多少乱暴にチンパンジーを捕獲したら、隠れていた飼育係が姿をみせることもあろーと思ったのだが、万が一、飼育係がウブ毛の長身少年のガキだとしたら、そのガキの飼育係にどんな対応を望めるのだ。
そのガキも飼育される立場だろ。
そこまで考えたら、あとに残ったのは絶望だけだったのだ。
でも、おれみてーな大人の男が平成にいるってーことを、見てみぬフリしてる卑怯な大人にも知らせるため、おれは一人立ちあがろーとしたのだが…。
言い訳なのだが、リンゴを抱えてサル山に放り込まれてみなさい。
トイレット・ペーパーを持ってヤギの柵に入ってみなさい。
負けは認める。
だが、負けはリベンジのためにあるのだ。