むかし世話になったプロデューサーは、まあ映画を観るのが仕事なのだが、一本の映画を観るにも、まずフツーに観て、次はストーリーを観て、んでもって最後はカット割りと、三回観るのだとのたまった。
んなもんだから、それだけでも一日仕事になっちまうのでオールナイトで観るらしい。
おれも時間があるときは三回観て、DVDの場合は観ながら脚本に書き直すなんてーな修行みたいな観かたもしたな。
プレステージはフツーに一回観ただけなのだが、19世紀のイリュージョン・魔術師の話で面白かったのだ。
面白かったのだって、なんかガキの感想文だな。
おれは映画評論家でもないし解説者でもなくて、どちらかとゆーと作り手側のヒトなのだ。
だから詳しいことはそれなりのとこで観てね。
たしか19世紀ってーとイリュージョンの草分け、ハリー・フーディーニが人体消失をはじめたくらいで、本編にも出てくるトンデモ科学者のニコラ・テスラが自分の電気で感電していたころなのだ。
それまでは化学と神の領域が曖昧なオカルティズム(隠秘学)が長く、その狭間に錬金術があってその思想が宗教にまで昇華され、薔薇十字団とか黄金の暁団とかフリーメーソンとか秘密結社ができたりして、縦横無尽に混沌としていたのだ。
平たくゆーと、錬金なんかできやしねー錬金術師が小ゼニ欲しさに神がかりな演出で魔術・イリュージョンをやって見せて、パトロンを集めてたってーな山師が多かった時代なのだ。
んなもんだから、見世物の魔術の歴史は古くて、ピタゴラスがフルチンで竹やりを振り回してマンモスを捕まえ、まだ火が恐いので仕方なく生肉で食していた時代から魔術・マジシャンは日銭をかせぎ、ピタゴラスはピタゴラスの定理を発見して、錬金術師のみなさんから賢者の称号をもらっていい気になっていたのだ。
するってーと、錬金術師(魔術師)のみなさんは、自分の持ちネタを発見するたびに独自の暗号や記号でノートに記し、それを盗み見て間違った解釈をした下等な錬金術師のみなさんが、間違った方法でどっかの真理教みたいな実験を繰り返して、瀕死の重症を負いながら、マッチの火薬を発見したり、ブランデーやビールなどを発見したのだから、ありがとう。
ヤツらの研究の身の上は蒸留と醗酵だからな、偶然にしても本当にありがとう。
だいぶ話がずれてきたのだ。
だけども魔術・イリュージョンのネタがばれると、騙しやがったなこの野朗、ふてぇヤツだ。ってんで殺されかねない時代があり、同業他者との差別化をはかるためにも、ヒトを消す。消したら現れる。どーせ現れるなら別なヒトにする。ってエスカレートして、そのためには舞台そのものを改良したり、現代ではそのための劇場を仮設したりするのだ。
最近では街角イリュージョンのセロとかすごいけど、プレステージ本編には当時からサクラがいるし、不可能と思われるマジックは氷山の一角しか見せていない。ちっぽけなイリュージョンほどバカバカしいくらい大掛かりな背景、仕掛けがあったり、要は目的のイリュージョンをこなすためには小ズルイといわれようがラッキョといわれようが手段を選ばないのだ。
あ、マジック・ナポレオンズはどこにいった、最近みないな。
こんなバックボーンがあれば、より楽しくプレステージが観れると思ったのだが…。
知らぬが華でも秘密は知りたいのだ。