オモチャ箱をひっくり返して悪どい色のペンキをぶちまけたような街らしい。
江戸川乱歩がそう書いていたのだ。
小学生の頃に読んだ小説だから、うろ覚えだが。
その頃はよく自転車で遊びに行っていた。
当時の花やしきは入場無料で、釣堀や水ヨーヨー釣りとかフツーに縁日みたいな店がたくさんで、小銭で遊べたからな。
マルベル堂だっけ。そこでブロマイドを見にいったりもしたが、あまり興味はなかったな。
どぢらかとゆーと、六区の映画街を当てもなくうろつくよーなガキだったのだ。
浅草寺はちと恐かった記憶がある。
多分に江戸川乱歩の影響が大きかったのだろーな。
二階建てバスが走るってーときはそっこー行ったよな。
六区の映画街の古い映画館が壊される前とかは、浅草おかみさん会主催のジャズ・フィスティバルにはよくいった。
それこそ東京倶楽部とかの建物は、建物自体が江戸川乱歩で、洋風で朽ちてて廃墟一歩手前で大人の男のクセにドキドキワクワクときめいちゃったの。
いまは浅草ロックとかいって、コジャレた街になっちまったが、まあ隅田川の方にいくとフラワーな無職のじっちゃんたちが、ビジュアル的にはニューオリンズみたいにバンドをやっていて楽しいし、伝法院通りの古道具屋やチープな時計屋をひやかして、競馬通りの居酒屋で一杯呑るのも楽しい。
あとは大黒屋の天丼か、あれは美味いがごま油の重さが老人殺しだと思う。
でも老人が食ってるよな。あ、死に損なっているからいいのか。
おれのじっちゃんは三定のてんぷらが好きだったが。
あ、そうだ。浅草一丁目一番地の神谷バーで電気ブランか。
シロップみたいなビールのおかず。
でもいついっても混んでるからな。
おれはみんなでワイワイ呑むのは好まないので、一人か二人で呑みにいく。
んでもって、店で呑んで屋台で呑んで、缶酎ハイ片手にヨチヨチアーケードを徘徊して、時期がよけりゃー神社の境内で寝ちまうだよ。人間のクズみたいにな。
そのときに、江戸川乱歩を思い出すのだ。
もう随分と読んでないので、記憶がごっちゃになっているのだが、浅草十二階の話しやヒトの腕をもった小人が潜んでいたり、探偵の真似事をしている青年が夜通し張り込んで、磨いてない歯を気持ち悪そうににちゃにちゃさせていた浅草寺なのだ。
うつし世は夢、夜見る夢こそまこと。
だったっけ…。
おれの浅草は江戸川乱歩の夜なのだね。