国保や税金面から考える、キャバクラ・風俗の優良店を見抜く方法 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

税務調査を徹底的に研究・分析し、合理的な対応により追徴最小化を目指すブログです。「なんとなく」の対応ではなく、会計・税務・法律の知識及び経験に裏打ちされた税務調査対応をお求めの方は、小職までご連絡ください。

こんにちは、公認会計士、税理士のたけよしです。
このブログで最もヒット数が多い記事、「風俗嬢 キャバクラ 水商売 と恐ろしい税金 」が好評で色々な方からご相談をいただいております。ブログを開設して数年がたちますが、数多くのご相談をお受けしたことで様々なノウハウがたまりましたので、今回は税金や国民健康保険面から考える、「勤務先で迷ったらここを選んだほうが良い」という評価ポイントを記載したいと思います。読者の対象は、これからキャバクラや風俗で働こうと考えている女性です。キャバクラや風俗で働こうと思っている方が、「A店とB店、待遇や立地はほとんど同じだけどどっちで働こうかな。できれば優良店で働きたいな。」と迷った時に参考にしてください。記事の書きぶりは、今までと変えて分かりやすさ重視としています。




【結論】
支払調書や報酬の明細を発行してくれる店で働くべし。



 いきなり結論ですが、これまで相談に乗ってきた経験からのアドバイスを一言にまとめるとこれに尽きます。ただ、これだけでは「支払調書とは何?」というような声が聞こえてきますので、順を追って解説します。




まず、月100万円以上を稼ぐような超売れっ子以外の大多数のコンパニオンの方(年間の稼ぎが2~3百万円くらいの方)は、確定申告(※後で説明します)をすることで、税金が還付されます。また、国民健康保険や年金、住民税等の軽減につながることも見込めます。「なぜ税金が還付されるのか?」「還付金詐欺ではないか?」という声も聞こえてきそうですので、貴女が店に勤めることを決め、実際に働き、報酬を受け取るというサイクルに沿って説明します。



貴女がお店でコンパニオンとして勤務することを決め、店と契約して勤務したとします。そうしますと、当然ですが勤務の対価(お金)が発生します。これを目的に働いているのだから当然ですね。日払や月払い、現金払いや振込など支払われる方法は色々ありますが、「報酬総額 - 報酬総額の一律10% = 手取り額」という計算を行い、手取り額が実際に手許に入ってきているはずです。例えば、今月の報酬総額は30万円、天引き額が10%の3万円で27万円が自分に支払われる、という仕組みです。勤務形態によっては雑費という名目で経費が引かれることもありますが、これは別の問題なのでとりあえず置いておきます。では、この引かれた3万円は何なのか?という疑問が出てくると思います。


この3万円は実は、「貴女が国に納めた所得税」なのです。「私は知らない。国に納めた覚えは無い。」という方がほとんどだと思いますが、そう感じるのは当然です。なぜなら、この3万円は貴女が知らないところで店が税務署(国)に支払っているため、知らなくて当然です。少しこんがらがってきたかと思いますので、先ほどの例で詳しく説明します。


お店は貴女に、勤務の対価として30万円を払おうとしています。ただし、貴女に勤務の対価を支払う時、「支払総額の一律10%を、相手に支払うタイミングで、相手から強制的に徴収して税務署に納めなさい」という税金上のルール(所得税法)があります。従いまして、お店はこのルールにのっとり、貴女には27万円を支払い残りの3万円は店が直接税務署に支払っているのです。この3万円は、実際にはお店が税務署に支払っていますが、実質的には貴女が負担している所得税なのです。この仕組みを「源泉徴収」と言い、あたかも天の神様の見えない手で引かれているようなので別名「天引き」ということもあります。源泉徴収される金額を「源泉徴収額」とか「天引き額」ということもありますね。


これで勤務の対価を店からもらう時、所得税を負担している、ということが分かってもらえたかと思います。1年間働きますと、手取り額もある程度高額になると思いますので、所得税の負担額も高額になります。例えば、年間手取りで270万円稼いだ方は、30万円(270÷0.9×0.1)所得税を負担していることになります。さて、名前は聞いたことはあるかもしれませんが、1年間が終わったら「確定申告」をするのが普通です。確定申告は、「私は1年間でこれぐらい稼ぎました。だから私が払うべき所得税はこのくらいです。」という意思の表明を、申告書という計算書を通して国にアピールするものです。ここで、一つ疑問が出るのではないでしょうか?「今までのたけよしの話だと、所得税は毎回勤務対価をもらう時に天引きされているということだった。だから、もう既に私は税金を払っちゃっているんじゃないのか?」とは思いませんか?そのとおり、正解です。貴女は源泉徴収という仕組みにより、知らず知らずのうちに所得税を支払っています。ただし、「不相当に高い」所得税を、ですが。


「不相当に高い」所得税とは??疑問が出てきたと思いますので、また説明します。実は、所得税には累進課税が適用されます。累進課税とは早い話、「所得をたくさん稼ぐ人は多額の税金を支払わせるため、高い税率を適用します。一方、所得が少ない人は税金の負担を軽くしてあげるので、低い税率を適用します。」という仕組みです。「なるほど、所得が低い人は負担する所得税も少ないんですね。」と思ってもらえれば大丈夫です。しかし、ここでまた疑問が出てきますよね?「さっき、天引きは支払総額の一律10%って言ってましたよね。そうすると、1億円稼ぐコンパニオンも10%だし、200万円稼ぐコンパニオンも10%ってことですよね。稼ぎが多い人には高い税率を、稼ぎが少ない人には低い税率を適用する、って言ってたのに、これじゃ不公平じゃないですか?1億円稼ぐ人には40%や50%の税率を、200万円の私には5%とか場合によっては0%で免除してくれないんですか?納得いきません!」というような疑問ですね。はい、貴女の考え方は正しいです。稼ぎが多い人には高税率を課し、少ない人には低税率を課しましょう。所得が低い場合は5%にします。


さて、ここでまた疑問が出てきますよね?「わかりました。私は所得が低いので5%が適用されるはずです。だけど、今まで1年間、天引きで10%分も払っちゃってました。この差額の5%分は税金を払い過ぎちゃってると思いますが、返してくれませんか?」はい、返してあげますよ。確定申告をすれば、国が返してくれます。先ほど、確定申告について説明しましたが、もう少し詳しく説明すると、「私は1年間でこれぐらい稼ぎました。だから私が払うべき所得税はこのくらいです。ですが今まで天引きで支払ってきた金額は、私が本来払うべき金額より多かったじゃないですか。だから、その差額分を返してくれませんか?その差額分の計算結果は、この計算書(=確定申告書)を見てください。これに全部書いてあるんだから、早く返せ~!!!」というものが確定申告です。(余談ですが、年間1億円稼ぐコンパニオンは、確定申告により天引き額が少ないこととなるため、追加で納税することになります。)


確定申告のイメージが変わったのではないでしょうか。確定申告をすることにより、稼ぎが少ない人は国から払いすぎた税金を還付してもらえるのです。これで冒頭に記載した、「月100万円以上を稼ぐような超売れっ子以外の大多数のコンパニオンの方(年間の稼ぎが2~3百万円くらいの方)は、確定申告をすることで、税金が還付されます。」という仕組みは判ってもらえたかと思います。分からなかった場合は、もう一度このブログを見返してください。とにかく、天引きで強制的に取られた所得税が多かったので、多いということを確定申告で証明すれば、税金が戻ってくるのです。細かい計算説明は省略しますが、「一人暮らし、家賃月5万円の家に住み、水光熱費が月2万円、携帯電話代が月2万円、年間の化粧品代10万円、美容院代やエステ代10万円、自己負担した交通費10万円、国民健康保険や年金等20万円で、年間の稼ぎが手取りで270万円」という方であれば、概算で払うべき所得税は約8万円です。天引きで30万円取られていますので、確定申告をすれば22万円もお金が戻ってくる計算です。加えて、健康保険なんかも累進課税的な考え方が適用されますので、申告により負担が減ることも考えられます。


このように、確定申告をすればお金が返ってくる、ウハウハじゃないかと思われるかもしれませんが、一つネックになることがあります。税務署の立場になってみてください。ある人が貴女に「私は30万円天引きで支払ったが、本来払うべきは8万円だ。だから22万円返せ」と言ってきたときに、「本当か?」と思いませんか?思うだけでなく、「では、それを立証してください。」と言いませんか?税務署もやっぱりそう考えます。正確には「思う時がある」という表現が正しく、思ったときに稀に「立証してください」と言ってくる感じです。そして、残念ながらこれは貴女が立証しなければなりません。でも、立証はそんなに難しくないですよ。立証するポイントは2点です。それは、①30万円天引きで支払ったこと、②払うべき税金が8万円であること、だけです。


説明の都合上、②から説明します。②を立証するには、「私は1年間で270万円稼いだ。そして、あれやこれやそれやにいくら使った。だから所得はこのくらいで払うべき税金はこれくらいだ」ということを立証することになります。税務署は還付額が大きくなる場合に目くじらを立てますので、「何にいくら使ったか」をメインで立証することになります。「何にいくら使ったか」を立証するには、どうすればいいでしょうか?それは、「領収書を見せる」という方法が一番簡単です。こんな格言を同僚や先輩から言われたことありませんか?「とにかく、領収書は捨てずに全部集めなさい」と。実は、領収書は所得が低いことの立証に使えるので、領収書がたくさんあれば何にいくら使ったかが明確になるからです。結果的に払うべき税金が安くなり、手許にお金がより多く残るのです。ですので、コンパニオンの皆さんは、とにかく領収書を捨てずに集めることが重要です。


次に①です。30万円天引きされた、ということはどう立証しましょうか?一番簡単な立証方法は、「お店に話してもらうこと」とは思いませんか?お店が、「1年間でこの人に270万円支払い、30万円は税務署に納めました。間違いありません」と言ってくれれば、税務署も信用します。しかし、お店が話してくれない場合、この立証は貴女がするしかありません。具体的には、「私の通帳や家計簿を見ると、1年間で270万円の収入があります。だから、0.9で割り返して計算した30万円が天引き額なのです。信じてください。」ということになります。ですが、自己証明になりますのでお店が話してくれるよりも面倒かつ難しくなります。場合によっては、税務署が「それは信用ならない。直接お店に聞きに行くから待っていなさい。」ということで、あなたの勤務先の店に押し掛けることもあり得ます。


このように、①の立証は店が協力してくれないと非常に面倒なのです。確定申告すればお金が戻ってくるのに、店が協力してくれないのは腹立たしい、と思いませんか。実は、この立証が最初に記載した「支払調書」というものです。支払調書には、以下が記載されています。

・お店を運営している事業者名(会社又は個人)
・その事業者の所在地
・貴女に年間でいくら払ったか
・貴女から年間でいくら天引きしたか

この支払調書は税務署にも提出する義務があり、貴女が「出してください」と店に言えば、出してくれるのが普通です。ここで全ての話がつながります。具体的な思考の流れは以下のとおりです。


お店に勤務すると、報酬をもらえるけど一方で所得税の前払をしている。

⇒この所得税の前払額は、通常、不相当に高額。

⇒1年間が終わったら、確定申告して不相当に高額だった部分を返してもらおう。

⇒しかし、確定申告するには所得税の前払額を立証しないといけない。

⇒それには、店が協力してくれるのが一番早い。

⇒同じ報酬や待遇なら、協力してくれる店で働きたい。

⇒協力してくれるかどうかは、「支払調書を発行してくれるかどうか」ですぐにわかる。


つまり、勤務前の面接で「このお店では支払調書や報酬の明細を発行してくれますか?」と質問してみましょう。「はい、しますよ。」というお店であれば、「貴女の税金の還付に協力します。」と言っているのも同じで、少なくとも税金上は信用に足る店ということができます。一方、「いえ、発行していません」と言ったり回答をはぐらかしたりするような店であれば、「協力しない」ということですので税金面では敬遠した方が無難です。本来戻ってくる22万円を犠牲にしてまでその店で働く価値があるかどうか、考えた方が良いかと思います。


では、なぜ発行してくれないことがあるのでしょうか?支払調書の記載内容を見ればわかりますが、こんな内容を税務署に出してしまえば、所得が税務署に開示され、脱税できなくなってしまいます。そうです。店が脱税するにはコンパニオンに支払調書なんて出してはいけないのです。店が貴女に支払調書を出せないのは、面倒だからという理由ではなく脱税がばれるからという理由がほとんどだと思われます。そしてさらに悪質になると、コンパニオンから10%の天引きを行うが税務署に支払わず懐に入れる、という店も現実にあります。こんな店であれば支払調書なんて絶対に出すことが出来ません。脱税の罪及び貴女に対する詐欺罪に相当しますが、店の脱税で何の責任も無い貴女が不利益を甘受する言われはありません。


「支払調書を出してくれますか?」と聞きにくい場合でも、そのような店を見破る経験則はあります。例えば、以下の店は脱税の可能性が高いです。

・店長や経営者や社長と呼ばれる人物が出入りし、誰が実質的に経営しているのか不明。
・店の名前がころころ変わる。
・1年程度ですぐに店が移転する。
・出店しては2年程度でたたみ、その後新規オープンして2年程度でたたむ、という行為を繰り返す。


逆に、長いこと同じ名前で営業している老舗であったり、コンパニオンのサポートを厚くしてくれたりする店であれば、税金面もしっかりしている可能性が高いです。きちんと税金を払わないと、長く営業できないですから。


ということで、長々と書いてきましたが、勤務するお店に迷った時は、税金や国民健康保険の面からは以下の結論となります。


【結論】
○支払調書や報酬の明細を発行してくれる店で働くべし。
○領収書は捨てず、とにかく何でも保管しておくべし。



【具体策】
○面接で、「このお店では支払調書又は報酬の明細を発行してくれますか?」と聞く。
回答がOKなら良心的、そうでないなら勤務の再考がお勧め。もし、「何に使うんですか?」ときかれたら、「確定申告に使います」と答えてください。


○これとは別に、領収書をとにかく集めてください。確定申告に使えるかどうかは税理士等が判断します。集めれば集めるほど、戻ってくるお金が多くなるかもしれませんよ。





今回の記事は以上です。


※こちらから返信できないケースが多発しています(特に、ドコモユーザー)。パソコンから送信する「@gmail.com」のドメインの受信許可設定をしていただくか、フリーアドレスからのお問い合わせをお勧めします。




ご意見は以下まで。


<問い合わせ・無料相談先>(匿名・フリーメールアドレスOKです)

たけよし

info@zeicho-shinryo.com