境界を歩く(後編)
― 座標の「しるし」を求めて
:一等三角点・高尾山
新治の森から、さらなる高みへ
新治の森をほぼ一周し、里山の深い気配を十分に吸い込んだ後、私の足はそのまま次なる目的地へと向かっていました。目指すのは、緑区長津田にある「高尾山(たかおさん)」
「高尾山」と聞くと、多くの人は八王子の有名な観光地を思い浮かべるかもしれません。
ですが、今回私が訪れたのは横浜市緑区長津田にある「高尾山」です。標高は約100.43mとコンパクトですが、実は横浜市内でも屈指の眺望を誇る隠れた名所。
新治の森にはピークこそあれど、明確な「座標」のしるしとなる三角点は存在しません。そこで、緑区で最も高い場所にあるという「一等三角点」をこの目で見たいと思ったのです。
横浜と東京の「境界」に立つ
この場所の面白いところは、横浜市緑区と東京都町田市のちょうど「区境(くざかい)」に位置していることです。
私が歩いてきた新治の森から地続きでありながら、一歩踏み出せば別の都市へと繋がる境界線。
東急田園都市線の「すずかけ台駅」からであれば、徒歩約15分ほどで辿り着ける、日常に隣接した静かな高台です。
山頂に鎮座する「飯縄神社(いいづなじんじゃ)」の傍らには、今回の旅の目的である「一等三角点」があります。
ここは単なる高い場所ではありません。「緑区遺産」にも指定されており、実は大正時代に完成した日本の5万分の1地形図の作成において、基準となる三角網の「底辺」を測るための極めて重要な拠点だった場所なのです。
地面に埋め込まれた石の「しるし」は、かつて測量士たちがこの場所から遠く離れた山々を見渡し、正確な日本の姿を描こうとした情熱の跡。その重厚な石の質感を前にすると、目に見えない座標がこの足元から全国へと広がっているような、不思議な感覚に陥ります。
長津田十景「高尾暮雪」の眺望
神社の周囲は非常に眺望が良く、「長津田十景」の一つ「高尾暮雪(たかおぼせつ)」としても愛されています。
この日も空はどこまでも青く、遠くには富士山が見えました。
かつての向山(むかいやま)で「昔は富士山が見えたのかな?」と疑った気持ちが、ここで一気に晴れるような、そんな圧倒的な景色。木々に吊るされたCDがキラキラと光を反射し、静かな境内に不思議なリズムを与えていました。
高尾山の名前の由来
この山に鎮座する 「飯縄神社(いいづなじんじゃ)」 が深く関係しています。
* 信州・高尾との繋がり: もともと飯縄神社の本宮は、長野県(信州)の飯縄山にあります。飯縄信仰は古くから高尾山(八王子)とも深い繋がりがありました。
* 「たかお」の語源: 一説には、「高い場所(たか)」+「尾根(お)」 という地形からきていると言われています。横浜のこの地も、周囲を見渡せる高い尾根道であったことから、自然と「高尾(たかお)」の名で呼ばれるようになったと考えられています。






