壁に掛けられた松井奈穂さんの作品と対面しました。 一見、石のような重厚感を湛えたその作品。けれど実際に触れさせていただくと、驚くほど軽やかに、けれど確かな「自然の息吹」を宿していました。
キャンバスには、土が塗られ、草や趣のある葉が層を成し、今の季節を告げる紅梅の花びらがそっと埋め込まれています。塗ったり、貼ったり、時には引っ掻いたり……。幾重にも重なる手の痕跡は、そのまま大地の質感そのもののようでした。
■ 昼の顔、夜の顔 この作品の真骨頂は、灯りが灯された瞬間に現れます。 昼間に見る「大地の力強さ」とは打って変わり、内子の和蝋燭の光を透かして見ると、そこには全く別の世界が浮かび上がるのです。
闇の中で、光の揺らぎに照らされるキャンバス。 すると、隠れていた月がぽうっと現れ、その周りに瞬く星々が見えてきました。 「昼の絵」と「夜の絵」。 一つの作品の中にこれほど違う世界観が共存していることに、ただただ圧倒されました。
■ 闇が繋ぐ、率直な対話 暗闇の中では、お互いの顔がはっきりとは見えません。 けれど、それがかえって心地よい距離感を生んでくれました。 相手の表情をうかがいすぎることなく、自分の心に浮かんだ感想を率直に言葉にできる。 見えないからこそ、心が通い合う。そんな贅沢な時間を共有できたように思います。
和蝋燭の炎が大きくなれば、「芯切り」という特別な金具で芯を整える。 パチパチという音とともに、静かに流れる時間。 一筋の灯火を囲み、自然と命の鼓動に触れた、忘れられないひとときとなりました。
なごみ邸が浮かび上がってきました。







