ロンドン五輪の決勝戦。
組織に優れ粘り強いメキシコと圧倒的な個の力のブラジル。
勝負を分けたのはほんの一瞬の隙であった。
決勝に相応しい熱い試合であった。

勝ったメキシコはもちろん素晴らしかったが、それ以上にやはりブラジルは強かった。
上手いじゃなくて強い。
前線の動き出しがどうのこうのというレベルじゃない。
一人一人の力で引きつけ突破し崩してしまう。
故の脆さもあるが、今の日本代表ではまだ全く対抗できないであろう。

今日は審判が地元イングランドの人であったからか、フィジカルコンタクトを流すシーンも目立った。
日本代表では蹂躙されてしまうであろう光景だ。

日本の選手の個々の足元の技術レベルはどんどん上がっている。
これからは、さらなるフィジカルの強さが求められそうだ。
何度この光景を見ただろうか?
いったいいつになったら縦パス一本で失点や、中盤ボランチからのパスを掻っ攫われて失点するというシーンを日本は無くすことができるのだろうか。

決勝に進んだチームを見た時、3位決定戦で韓国と激突するというシナリオだけは勘弁だな、と思ったのだが嫌な予感は的中してしまった。

韓国が素晴らしいサッカーをしたとは思わないが、日本は完敗であった。
正直言えば、前半の韓国は最悪であった。
あんな危険なプレーを平気で仕掛けてくることに反吐がでる。
そんな中、縦パス一本で決まってしまった1点で歯車が狂ってしまった日本は
ついぞ立て直すことができないまま試合が終わってしまった。

ベスト4で燃え尽きた感のある日本と、対日本戦ということで気持ちを切り替えて死にものぐるいになった韓国。
そもそも国内で史上最強と評された韓国代表と、エースを欠きオーバーエージには参加を断られ惨敗が予想され期待もされなかった日本代表。

この気持ちや姿勢の差が結果となって現れたのではないだろうか。

理由は多々あるであろうが、この年代は常に韓国に跳ね返されている。
この敗戦を次に繋げたい。もう負けは勘弁して欲しい。
期待されていなかった。
海外組もいてA代表に選ばれる選手もいる。
最終予選も5勝1分と決して悪い成績ではない。

しかしあまりにも期待薄であった。

それは北京五輪のせいかもしれない。
トゥーロン国際大会の惨敗のせいかもしれない。
女子代表なでしこに比べてあまりに扱い悪かった。

だがそれがハングリー精神、反骨精神に繋がったのだろう。
日本は決して強いチームでも上手いチームでも経験豊かなチームでもなかった。
だからこそ誰かに頼るわけではなく全員が団結し強い気持ちを持って90分間走り続けた。

結果としてスペインを破り無敗で無失点で予選を突破し、
勢いに乗って準々決勝に勝ち進むことができた。

だがここまでであった。

日本はベストメンバーではなかった。
少なくともこの世代の出世頭でありエースである香川真司というピースを欠いている。
もし準決勝に香川がいたら何か違っていたであろうか。

いや、もしかしたら香川がいたことで予選を突破できなかったかもしれない。
香川という名前に周りが連携しチームとして一つになれなかたかもしれないからだ。

しかし日本が決勝に進みさらには金メダルを取るためには、
ベストメンバーを組む必要がある。

徳永はいい選手だ。
今回も素晴らしい活躍をした。
だが仮に長友がいたらどうだっただろう。

扇原と山口も素晴らしいプレーを魅せた。
しかし長谷部あるいは細貝がいたらどうだっただろう。
あるいは最後のオーバーエージ枠に本田圭佑を使うとしたら。

オリンピックの舞台を若手の成長の機会と割り切ることもありだ。
だがそれは金メダルからは遠ざかることかもしれない。


まとめよう。
準決勝まで行けたのは香川がいなかったからだ。
決勝まで行けなかったのは香川がいなかったからだ。

この矛盾を日本はどう捉えるできだろうか。

世界は日本の躍進を称えるかもしれない。
だが、世界への道はまだ遠い。
奪われたボール。
相手選手は危険なエリアで不用意な切り返しを見逃さなかった。

すかさずシュート。
ゴールネットが揺れる。

やってしまった。
そう思ったに違いない。

ボールを奪われたのは扇原隆宏、20歳。
試合は決勝進出をかけたロンドンオリンピックの舞台。

この失点が決勝点となり日本は初の決勝進出を逃す。

負けたのは決して彼のせいではない。
試合自体、対戦相手であるメキシコに圧されていたし、
ボールを奪われたのもGK権田のフィードが不用意であったとも言えるし、
周囲のフォローも声も足りなかったからだとも言える。

しかし彼は、扇原は負けたのは自分のせいだと思っているのではないだろうか?

試合後号泣していた彼は今も落ち込んでいるだろうし、この日のことを一生涯忘れることはきっとないだろう。

しかし私はこう思う。
僅か20歳にして、日本代表を背負いその責任と重さを感じたこの試合のこの失点と敗戦が、彼を一段高いステージへと導くことになるのではないか、と。

今日のこの出来事は彼の才能と輝かしい未来を否定するものではない。

「この試合がターニングポイントであった」
後にそう言われることになること、日本を代表し、世界にその名を轟かせることになることを願ってやまない。