奪われたボール。
相手選手は危険なエリアで不用意な切り返しを見逃さなかった。

すかさずシュート。
ゴールネットが揺れる。

やってしまった。
そう思ったに違いない。

ボールを奪われたのは扇原隆宏、20歳。
試合は決勝進出をかけたロンドンオリンピックの舞台。

この失点が決勝点となり日本は初の決勝進出を逃す。

負けたのは決して彼のせいではない。
試合自体、対戦相手であるメキシコに圧されていたし、
ボールを奪われたのもGK権田のフィードが不用意であったとも言えるし、
周囲のフォローも声も足りなかったからだとも言える。

しかし彼は、扇原は負けたのは自分のせいだと思っているのではないだろうか?

試合後号泣していた彼は今も落ち込んでいるだろうし、この日のことを一生涯忘れることはきっとないだろう。

しかし私はこう思う。
僅か20歳にして、日本代表を背負いその責任と重さを感じたこの試合のこの失点と敗戦が、彼を一段高いステージへと導くことになるのではないか、と。

今日のこの出来事は彼の才能と輝かしい未来を否定するものではない。

「この試合がターニングポイントであった」
後にそう言われることになること、日本を代表し、世界にその名を轟かせることになることを願ってやまない。