オプジーボを使いたいという問い合わせが相次いでいるようです。
「効果があるのは2割から3割ほどの患者に限られている」と上の記事にもあります。
効かない患者さんのほうが多いのです。
亡くなる患者さんもいます。
善意で第三者が患者さんやご家族に勧めることが良くない理由を下の記事でも書きました。
オプジーボは素晴らしい薬ですが、他のがん治療薬と同様に、効く場合も効かない場合もあれば、副作用も出ますし、重い副作用は致死的です。
もちろん本庶佑博士のノーベル賞やその元となった大発見、オプジーボ開発・上市自体は素晴らしいことであり、それに対しての意見ではないことは最初に強く申し添えておきます。
ところで少しだけ話は変わりますが、6月から医療機関のホームページの規制が厳しくなりました。
下のような記載があります。
③ 医療機関にとって便益を与える体験談の強調当該医療機関にとって便益を与えるような感想等のみを意図的に取捨選択し掲載するなどして強調することは、国民・患者を誤認させ、国民・患者を不当に誘引するおそれがあるものであり、ホームページに掲載すべき でないこと。
とあり、医療機関は患者さんの体験談を掲載することが難しくなっています。
もちろんこれは元々は、怪しい治療を体験談付きで勧める医療機関への対策でしょう。
しかしそのおかげで、まともな医療機関が、正当な治療を行って、良くなりましたという体験談も載せることが難しくなっています。
緩和ケアについてわかりやすく発信しようとホームページを作っている私にとっても頭が痛い問題です。
それくらい、医療機関には厳しいのに……
たまたま、テレビ番組が、オプジーボで良くなった患者さんの体験談を報じていました。
「良くなりました」
「この薬を使っている人で本庶先生の名前を知らない人はいないです」
とその患者さんは仰ります。
本庶先生の世紀の発明は素晴らしいと思いますが、私の知っている複数の患者さんは本庶先生の名前を知らなかったので、これは「景気が良い」感想です。
そして、このような取り上げ方をすれば、誰だって受けたいと思うのが当然なのでは?(ちゃんと勉強されている患者さんやご家族以外は)
そう思いました。
成功例しか報じなければ、それも命の恩人と感謝している方「だけ」の談話を取り上げれば、そうならないほうかおかしいです。
でもちょっと待てよ……と。
私の運営しているような医療機関には厳しく規制しているのに(もちろんそれも一部の医療機関の素行が原因ですが。でも自分は無関係なのに)、
なぜ大手メディアが成功例だけ、景気が良いエピソードを流すのはOKなのか、と。
もちろん法的には問題がなくても、そして小野薬品には格別な感情はありませんが、ニボルマブではなくオプジーボと商品名であれだけ宣伝となる「体験談」を流すのは、なぜOKなのでしょうか?(なおこれが医療機関ならば、広告で商品名を掲載することは禁じられています。p38)
もやもやします。
ただ一視聴者の感覚として言えば、あのような素晴らしい成功例を流せば、使いたくなり、勧めたくなるのは当然だろうと。
意図せずとも成功例を集めた宣伝そのものであり、混乱の一因そのものと感じました。
医療機関にも厳しく私利となる行動を戒めるのならば、意図はなくても特定の薬剤を強烈にプッシュするような報道に関しても少しは規制があっても良いのではないかと感じました。
大成功例を映すならば、大失敗例も映すべきです。
そしてそれは本庶佑博士のノーベル賞という偉業と、世紀の大発見の素晴らしさをいささかも変えることはないはずです。
めでたいことだから、少数の成功例だけ映すという考えこそ偏り(バイアス)でしょう。
今日の「早期緩和ケア大津秀一クリニック」の記事です(自費もいろいろです)。