「死にたい」



外来で叫ばれたあの日。



しかしがんの方のうつ病は、投薬に反応して改善することが多いです。



その方もまさしくうつ病でした。


(※)「薬なんか飲んでも良くならない!」


「良くなります」


「絶対に、良くならない! 良くなるはずがない。薬に頼りたくない」


「今は、必要な時期です」


※に戻るを、何回も。


「……そこまで言うのならば……」



少しずつ、少しずつ。


表情が変わりました。


にっこり。


ん、これは今までなかった表情だ。


にこにこ。



外に出るのも億劫だったり、怖かったりしたのが、外出もできるようになりました。



病気になる前は、とても温泉が好きでした。



しかし病気は、皮膚病変もある乳がんです。



乳がんの方でも行ける温泉を教えたりもしました。



シルバーウィークはどうぞ温泉へ ピンクリボンのお宿


今年はこんな記事も報じられました 乳がん:手術痕気にせず温泉 入浴着に理解求めるポスター - 毎日新聞


それでも心配だったようです。


しかし、とうとうその日が来ました。


「そういえば……」


「どうしましたか?」


「先生、こないだ温泉入りました」


すっぽり入るのが大好きでしたから、本当はそうしたかった。


しかし貸し切りとは言え、半身浴に留めました。


「あれから初めて、温泉、入れました」もう一度。


笑顔。そしてうるうると。



「死にたい」「生きている意味がない」


そこから1年ごしにたどり着いたのは、「生きてて楽しかった」という瞬間でした。



実は、37℃のナトリウム・カリウム・カルシウム泉が両目からちょっと湧きそうでした。