このところ、データの整理等をやってましたので、「遅ればせながら」になりましたが、

なでしこのプロ化について私見を記載します。

 

私は専用グラウンドが良いとか、ファンサービス向上とか、秋春制の是非とか、そういうことよりも、

もっと経営的なところに興味が有るのですが、

残念ながら今の協会提示案(的なモノ)には賛同していません。

 

私は、女子サッカーのプロ化は資本家がリードしていかないと、無理だと思っています。

理由は以下のようなモノ。

 

 

 

1.プロリーグを立ち上げるための現状把握と成立パターン。

 

①現状把握;今の入場者数では自立出来ない。

 

現時点の1219人/試合という入場者数(90-01:リンク参照) では、プロ球団として自立出来ない。

根拠は、アメリカのNWSLの実績に有る。

現在提案されている460万円以上が5人以上というサラリー条件は、

ホンの数名のスター選手の雇用を除けば、ほぼNWSL並の経営条件になるだろう。

NWSLはチームの自立を前提としているのだが、自立出来ずに既に2チームが消えている。

いずれも2千人台の平均入場者数だった。

(今あるチームは最低でも4千人程度の入場者数がある。)

 

脱線するが、この観点から言えば、日本のバレーボールのプロ化は、3千人以上の集客力(ただし、巡業形式で2試合/1開催が多いので、単純比較はできない。)があるので、即時可能なはず。

それが企画時点で不成立になるのは、リードすべき協会側より、チ-ムオーナー(企業)の方が力(資金)を持っているから、まとまる話もまとまらないのだと私は思っている。

 

②原点状況では自立が無理だったが、成立している例。

 

これはすなわち、投資から始めるモノである。

成立するのは2パターンだと思っている。

 

海外女子サッカーリーグの入場者数推移 と合わせ読んでいただければ幸いです。

 

パターン1 男子BIGクラブの投資:ヨーロッパ型

現在勢いの良いヨーロッパ各国の女子サッカーリーグは、5万人以上入ったとかいう情報もあるが、人気チーム同士の戦いのみ。1000人以上が入っている試合は案外少ない。

なでしこリーグの方が、安定して入っていると言って良い。

今現在リーグが成立しているのは、男子のBIGクラブが、女性ファンの取り込みと、女子サッカーの将来に期待して投資しているから。

BIGクラブの発言力が大きいスペインリーグの状況が、良い意味でも悪い意味でも、端的に物語っている。最低年俸の約160万円さえ払えないチームが1部でも多発し、女子選手がストライキに至っている。バルセロナなどのBIGクラブが無理気味に、余裕の無いチームも引っ張り込んだからだ。

各BIGクラブは女子サッカーの発展と言いつつ、覇権を争うことにも重きを置いているから、チーム戦力は、資金力に大きく影響されてしまっていて、観客動員もばらついてしまう。

 

パターン2 興業としての投資:アメリカ型

アメリカ女子サッカーはNWSLに至るまでに、2つのプロリーグが立ち上がり、破綻している。

3つのリーグいずれも、興行主的な人がリーダーとなって、リーグの構成や運営方法を提案する形で始まっている。

現状が自立には無理な観客動員でも、工夫すればなんとかなると思った金持ちが、リーグ運営に投資するのです。一種のアメリカンドリームなのでしょう。

そのためには、戦力均衡は必要で、NWSLでは「ドラフト」「サラリーキャップ」「代表選手の協会サラリー負担と分配」「チーム数の限定:入れ替え無し」をしている。

 

2.私の結論

 

日本の場合、BIGクラブと言っても、ヨーロッパの1桁下の規模。

投資するほどの余裕は無いので、パターン1は無理だと考えています。

 

なので、パターン2のアメリカ型だと思うのですが、これはこれで解決すべき難点があります。

育成です。

ドラフト制・サラリーキャップ・代表選手の分配などと言うモノは、育成と合いません。

クラブオーナーが自分のチームを強くするために、(悪い言い方をすれば)青田刈りをする。

それが今の育成組織だからです。

 

現状、なでしこリーグ各チームやなでしこJAPAN・アンダー世代代表を見ていても、育成組織からの出身者は多い。

戦力均衡を図ることによって、各チームの育成に対するモチベーションが下がったら、今の中学・高校が受け止められるか?と言えば、まず無理。10年掛かっても厳しいでしょう。

 

解決方法は、育成に報いる全く新しいドラフト制の構築に有ると思います。

例えば・・

①ドラフト1巡目に先んじて自育成出身者を指名できる。(ただし、指名した場合は1巡目指名権を失う。)

②他チームのドラフトに掛かった選手を育成したクラブは、協会・指名チームから対価や代替選手を得る。

③サラリーキャップの計算時に、自育成出身者に関しては、割引を設ける。

などなど。

サッカーは、アメフトなどと違って、僅かな戦力差が試合結果に直結するわけでもないので、このくらいの融通が有っても良いでしょう。

 

また、「代表選手の協会サラリー負担と分配」は、代表活動を自由にするので必須だと思います。

リーグ戦の日程と代表活動の日程が被っても、「金は払っているんだし、どのチームからも公平に選手を持っていくのだから、問題ない。」と協会側は言えるはず。

 

でも当然お金が協会側には必要になります。

 

だから、「(酔狂とも言える)資本家」が必要だと言うのです。

女子サッカーのために、「いずれ、女子サッカーというコンテンツを黒字にしてみせる。だから私の案に賛成の奴は、この指止まれ!」と立ち上がる起業家はいないモノだろうか?

プロ野球球団や、Jリーグのチームを買収しても、所詮リーグ全体を思い通りに出来るわけじゃ無い。

金額的にも大したことないし、名を残せるのは、こっちじゃないかな?

 

と、そんなお金のない私は思う。

 

 

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