日本人の矜持―九人との対話 (新潮文庫)/藤原 正彦

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アメリカとイギリスに住んでいた経験がある著者が語る日本の在り方は、非常に考えさせられる事ばかりでした。

数学者の著者には全く畑違いに思われる日本語教育に関しても、藤原氏の一貫した考えには特に驚きました。

対談の中で一番面白かったのは、最後の阿川弘之でした。海軍でのインテリジェンスとしての経験談や素読の良さについてのびのびと話しているのが清々しいです。

意外に、ビートたけしの対談が面白くなかったです。というのも、数学者の著者と数学の話を展開し、話がそこからあまり広がっていかなかったからです。

五木寛之との対談では、歌の話に終始し、私にとってはあまりなじみがなかったため、いまいち対談の感動が伝わりませんでした。



対談なので、語り口は非常に軽快です。ただ、内容はとても共感させられる事も多く、より深く著者の考えを知りたいと思いました。

ということで、いまだに読んでいないベストセラー「国家の品格」を早速読まねば、と思いました。

日本辺境論 (新潮新書)/内田 樹

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読了後のまず最初の感想としては「わかったような、わからないような」という感覚です。

「本書では、縦横に奇説怪論を語り、奇中実をとらえ怪中真を掬して自ら資すという、

当今ではまったく流行らなくなった明治書生の風儀を蘇生させたいと思っております。」

と著者が断っている通り、「大雑把な論述」で構成されています。

つまり、自由気ままに書き連ねているため、脱線あり、脈絡ない方向転換あり、論理に穴あり、です。

なので、初めて読む人は、あっという間に「何に関する本を読んでたっけ」という考えに陥ります。

ただ、結論としては、正しいとか間違っている、ということを論述したいのではなく、

自分たちの持ち合わせた資質をひもといて理解し、その強みを存分に活かそうという、

ポジティブなメッセージです。

例えば、日本文化に根強い「空気を読む」こと。

なぜ私たちが得意とし、大切にしているかについて深く考えるきっかけになりました。



違いを認識する事、日本人として生きる事を意識して理解する事で、次のステップが見えてきます。

ただ、言葉や例えが難解、しかも自由に書き連ねているためか、

一回読んだだけではすんなり内容が入ってきません。

それでも、惹きつける魅力のある本です。しかも、本もそんなに分厚くないです。

数回読む覚悟であれば、この本の良さを存分に味わえるのではないでしょうか。




なお、ユダヤ人との共通性がたびたび出てくるので、

同じ著者による「私家版・ユダヤ文化論」も読みたくなりました。

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)/辛 淑玉

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野中氏の半生を描いた「差別と権力」(魚住昭 著)を読んでいたため、

部落や在日を取り巻く環境や偏見に関しては少しは知識があったものの、

日本国家に対して、傷つきながらも正面から問いかける事をやめない、

辛さんというひとりの在日の視点が加わった事は、

部落に対する偏見と共に、包括的に深い共感と理解へと導くものでした。



対談という形で進められているため、二人の「声」が生き生きと伝わってきたのが一番良かったです。

第四章の最後では、二人の対談だからこそ実現した、吐露する機会がなかった本当の心の声が、

短いながらも心を打ちます。

そこに、辛さんの解説が補完的に見事に挿入されていたため、

発言に対する理解を深める効果がありました。



差別に対する偏見が、根強く残されている事を知る事は、解決する上のファーストステップです。

問題を助長させるのは、国民性や歴史に深く根差しています。

日本人としてこの国で生活している事は、それらの伝統を知らない間に受け継いでいる事です。

まず問題について認識するために、ぜひ手に取ってほしい一冊です。