タイトル︰「夜明け前
アーティスト︰あたらよ


夜明け前

 

自分は昨年、「季節の箱」についてのアルバムレビューを掲載しました
あたらよは大半の人が「ヨルシカ?」を連想するバンド
自分は当時、乏しい知識ながらアルバムレビューを執筆
それから半年近く経過しましたが、やっぱりあたらよとヨルシカは違うと思ってます

ヨルシカってn-bunaの引き出しがあまりに大きすぎるんです
キタニタツヤとの対談でYou Tubeを通して、色んな音楽やギタリストと触れたみたいですら
対してあたらよはエモでしょう
ギターのまーしーがELLEGARDENの影響かなり受けてますし

ただ自分はあたらよについて、そんなに多くを知っているわけではありません
「季憶の箱」があまりにも良くて、ライブに足を運んでみようと考えましたから
なので今回はあたらよをもっと知るために、あたらよ初のEPについてレビューすることに
まだドラムも所属していた4人編成の頃に出た作品です

まず大前提としてあたらよのバンド名は「明けるのが惜しいほど美しい夜」を意味する可惜夜から取られたもの
それ故あたらよが始まることとかけて、タイトルは「夜明け前」になったとのことです

さてこのアルバム、一際輝くのは代表曲の「10月無口な君を忘れる」「夏霞」でしょう
台詞で構成されたAメロに始まり、入りを終えるとエモーショナルなギターや太いベースが牽引する
この構成に衝撃を受けた方は多いと思われますが、そもそもこれはあたらよのメンバー達が所属していた専門学校の学内コンテスト用に制作されたもの
まーしーと当時のドラムが居酒屋で見ていたTik Tolkで見つけられたことで、ひとみにアプローチが行き渡ったという訳です

「ごめんねが痛いから
さよならが辛いから
涙が染みるから
下を向いて歩いていたのに
君が笑いかけるから
こんなに痛いなら
知りたくなかったよ

優しさなんて」

「知りたくなんてなかったこと
沢山くれた幸せも
忘れない 忘れない 忘れられないよ」

というフレーズに共感が集まり、大ヒットしたわけですが、「10月〜」が無ければあたらよは始まってないですし、あの印象的な台詞はバンドが始まってから生まれたもの
こうなるとあたらよが始動しなければ、多くの方に聞かれることも無かったでしょう
代表曲の裏にはとてつもない運命があったという訳です

ついて「夏霞」
鍵盤に夏の風景をフィードバックさせるようなギターソロが印象深いと思われますが、あたらよの楽曲で多いまーしーとのツインボーカルとの原点はここにあるかもしれません
ファンの要望やひとみの考えから生まれたようですし
そう考えると、あたらよの礎のような曲でもあるかもしれません

この2曲はあたらよの代表曲

新たな代表曲となった「「僕は…」」がリリースされるまでは、あたらよ=アッパーのイメージはそこまでなかったのです


ですが「悲しみに終止符を打って、次に向かう」をコンセプトにした「晴るる」は


「そうだ花ってやつは
散り際こそが美しい
僕らもきっとそうなんだ
終わりこそが美しいんだ」


は終わりの美しさを描きながらも、ラテン風味なアコギやゴリッゴリのベース、勢いのあるサビのギターなどもろにロック

故人を思って作ったエピソードがある「祥月」も、エッジの効いたギターリフやバッキバキのベースが目立つロックな曲
まーしーはELLEGARDENの影響、たけおはUNISON SQUARE GARDENの影響を公言済み
どう見てもロックな曲が生まれるわけです

そうした影響があるから後半、

「贅沢は言わない
何気ない会話
笑いあっていた
あの日に戻りたい」


と傷を抱えた喪失を伺わせる「8.8」はロックバラードですし、

「ぬるい優しさなんて要らないから
あなたも泣けばいいのよ」

とあまりに棘が刺さったリリックが目立つ「ピアス」はうねりの強いゴリッゴリなベースが象徴的
reGretGirlの「ピアス」とは方向性が異なるので、より耳に残りやすいのでは?

そして最後の「嘘つき」
爆音ギターや存在感抜群のベース、あまりに具体的なフレーズに心を抉られそうになりますが、実はこれ「「10月無口な君を忘れる」の男性目線
コンセプトは無い作品とのことですが、「10月無口な君を忘れる」で始まり、その対となる「嘘つき」で終わるのは実質「10月〜」の世界線で始まって「10月〜」の世界で終わっているよう
最初と最後はじっくりリンクしているという訳です

この作品に明確なコンセプトはありませんが、垣間見えるものもあります
それはあたらよというバンドが構築されていく過程です
最初はひとみバンドから始まったバンドがあたらよに変化する
そのドキュメントを見ているような作品です

この作品のリリースは2021年10月

その半年後にフルアルバムがリリースされますが、その話はまた後ほど


※画像はAWAより


 

 

※「季憶の箱」のレビュー