そろそろ年末ということで、大掃除やら年間ベストの準備を始めている方々が多くなっているであろうこの頃
このブログも年末ということで、年間ベストに向けての準備を少しずつですが進行しています
年内に掲載するアルバムレビューの下準備もだいぶできましたし、なんやかんや余裕は出てきました

タイトル∶「季億の箱
アーティスト:あたらよ
季億の箱(AL+Blu-ray)

 ただ今回、アルバムレビューするアーティストに関しては驚く方が大多数を占めていると思われます

それもそのはず、このブログであたらよを取り上げた事はほとんど無かったと思われるからです

しかもあたらよといえば、真っ先に浮かび上がるのはヨルシカの存在でしょう
ボーカルのひとみ、ギターのまーしー、ベースのたけおの3人に行ったインタビューでも影響を公言していたので、関連がないと否定は出来ません
むしろおおありです(笑)

なお来年リリースが発表されている新曲「僕は…」は、「僕の心のヤバイやつ」という春アニメで旋風をもたらした作品の続編主題歌に内定しましたが、1期のOP「斜陽」はヨルシカ

完全に意図された流れです、はい(笑)
シーン関係者にまであたらよ=ヨルシカのイメージが定着しています汗
ヨルシカにそんな詳しくない自分は多くを語れませんが汗

そんなあたらよが今年リリースしたアルバム「季億の箱」
普通ならタイトルは「記憶の箱」でしょう
ですがこのようにタイトルになったのは、季節への思い入れは人それぞれ
だからタイトルは「季億の箱」なんです
KERENMIとコラボしたギターロックテイストの「ただ好きと言えたなら」は、おそらく季節関係ないでしょうが汗

「気づいてしまえばもう
始まっちゃうのにね」

があるから最初に置いたような気がしますし

なので実質的な本編は「今夜2人だけのダンスを」「夏が来るたび」と季節でカテゴライズするなら、夏に該当する2曲から
ジャンルで当てはめるとロックに括られると思うので、ギターメロが武器と言えますが、リズム基盤が整っており

「今夜2人だけのダンスを
乾かないように愛情をくれよ
もっともっともっとって
満たされない心でないてるの
求め合ってしまえば最後
孤独が夜を深くしていく
このまま明けない夜に2人」

と幸福な雰囲気も垣間見える「今夜2人だけのダンスを」はギターが繊細なのに、逆にギターがエモでメロが爽やか、ビートが細やかな「夏が来るたび」は、喪失を匂わせるフレーズが多々綴られ、

「記憶はいつだって美化される
無意識のうちに何度も塗り直した
それは偽物だと君は笑うかな
抱えられる記憶の数には
限りがあるなんて言うならせめて
半分は君が抱えてくれよ」

と記憶の共有を懇願するくらいネガティブ
同じ夏をテーマにした歌謡的で叙情的な「また夏を追う」も、

「泣くのはもうやめにするんだ
ここからは一人歩くんだ
君以外の誰かをまた愛せるように」

と引きずる後悔から立ち直ろうとする姿を見せたりと、喪失をイメージする言葉が多め
外観からや曲調からしたら、ヨルシカに似る部分もあるかもしれません
でも「悲しみを食べて育つバンド」というキャッチコピーをあたらよは持っています
だから自分の中では、ヨルシカよりもindigo la Endに似ている感じがするんです
「濡れゆく私小説」をリリースした頃のインディゴのようなテイストです

そのインディゴはどんどんオルタナロックに向かっていき、シューゲイザーが日に日に強まっていますが、あたらよのギターまーしーがELLEGARDEN好きを公言していたように、こちらにはエモやパンクの側面が
秋が題材となっているだろう「僕らはそれを愛と呼んだ」はエモにパンクの影響を受けたような曲作り
叶えられそうにない未来が描写されたかのような「アカネチル」は、後半落ち葉が舞うようなギターが鳴りまくったりとエモやハードロックに影響を承る場面が
アルバムレビューとは、1つの作品を解剖して良さを伝えたり、自分の作品への理解を強めるものである
このレビューを読んでくださる方は「あたらよってそんな面があるんだ!!」と思って下さっていると自分は嬉しいです

そんな中冬、人々にとってはより孤立をつけられるあまりに残酷な季節
「クリスマスなんてリア充の楽しみ」と悲観してしまいそうな方もいそうですが、

「甘い甘い甘い甘いケーキなんて要らないからさ
ぬるい珈琲を「冷めてしまったね」なんて
笑いながら一緒に味わうそんな日々を
大事にしたかった
愛という名の孤独を持って
今年も眠りにつくから」
「美しくなくていい
美しくなくていいから
せめてこの夜を愛せるほどの器量を
僕にくれたらいいと思うんだ」

とそんな方々にドンピシャと思うのが「クリスマスのよる」
これがケンタッキーのCMに使われるような時代が来れば、色んな意味で変わりそうな気がしますし、置いていかれてしまうもどかしさをアンサンブルや言葉で表現した「雪冴ゆる」はキレッキレ
冬の寒さも溶かしてくれそうな轟音です

そのうえで春は真逆
「出会いと別れ」の季節でもあるので、ノスタルジー成分がどうも強くなり「憂い桜」は一青窈を連想させる歌謡チックな1曲
サビはエモーショナルで、

「さよならが青いのは
目に映らないからだ
空の青に溶けて
残った余韻を掬うんだ」

なんて学生時代を彷彿させるフレーズも含みながら、「青を掬う」もやっぱりノスタルジー強め
春はそういう季節なんでしょう
明るい桜ソングってそう見かけるものではありませんし(季節は把握しにくいですが、「眠れない夜を君に」もこのタイプ)

でも時は金なり
あっという間に進むのだから、前に進んでいくような曲も欲しいのであって、

「たとえ道が険しくとも
僕は進む」

とバンドのこれからを展望させる「届く、未来へ」は明るい未来を連想させるギターもふくめ歌詞もアンサンブルも全てが素晴らしく、「空蒼いまま」はオルタナロックのようにアンサンブルがぶつかり合う箇所もありますが、

「誰にももう分からなくていいよ
僕ららしさは僕らが創るの
あいつに何を言われたって
僕らは僕らだ」

なんて若くて青い
まさに春らしいですし、これからを生きるもののアンセムになるでしょう

しかし最後の「13月」だけは別
まあそもそも13月なんて季節は存在しないんですが、ここだけ明らかに雰囲気が異なり、黒く怒りに満ちたようなアンセムがここに内蔵

「うざったい世界に蔓延る有象無象が
当たり前のように刃向けても生きてやる
明日なんて来なくたって
悔いのないように
生きてやる生きてやる生きてやるさ
だれも僕になれやしないんだ
僕の生き様は
僕が作る僕だけの
証だ」

とあたらよが抱える負のエナジーはここに放出されているといっても過言ではないでしょう
ここだけ聞いたら、ビビる方多そうです

あたらよは確かにヨルシカに似ているでしょう
でも蓋を開けたらインディゴのように喪失をテーマにした曲が多かったり、エモやパンクの影響を受けていたりと、ヨルシカと違う点もしっかりあります

興味を持ったら、このアルバムを聞きましょう
来年、一気に飛躍するその前に