去年の冬頃、1期の主題歌がヨルシカだったことに関連してか、「僕の心のヤバイやつ」第2期のOPにはあたらよが抜擢
去年ライブを見たあと、「この大型タイアップ次第であたらよの運命が決まる」と思っていたのだが、「「僕は…」」はアニメを通して幅広い方に受け入れられる結果に
見事、新しい代表曲となりあたらよの知名度はさらに高まった

そんなあたらよが今年2月に初のアジアツアー開催を発表
台北や上海などを回った後、いよいよ東京公演がVeats Shibuyaで行われるがアニメ効果もあってチケットはソールド
開演時間は遅めの1930になっているが、前回のワンマンに参加しているものとしては察する部分がある

会場であるveast shibuyaはTOKYO CALLINGで訪れたことはあるものの、ワンマンでは初
なのでフロアにゆっくり滞在するのもこれが初だが2020年頃に誕生したライブハウスだからか、段差があることで低いフロアと高いフロアに別れており、ラウド・パンクバンドがライブするには特に適している印象だ
ちなみにTHE BACK HORNが2020年に配信ライブを行ったのもこの会場
なお電波はそこまで期待できるレベルではない(ホークスVSヤクルトの途中経過が途中で見にくくなったことで察してください)

チケットソールドアウト故、去年の下北沢Shangri-Laが裁けなかったのが嘘のように埋まる中、平日ながら少し遅い定刻19時30分頃にゆっくり暗転
サポートドラムの坂本暁良を筆頭にメンバーが1人ずつ登場し、ひとみ(Vo. & Ag.)が最後に登場するとやっぱり大歓声
なお喪失をテーマにした曲が多いバンドであるが、男性ファンが占める割合の方が多いのは謎

ひとみは最初からアコギを背負わず、ハンドマイクで「祥月」を歌い始めるがまーしー(Gt.)のギターはとてもエッジが効いてるし、坂本のビートもとても力強い
ヨルシカと比べられるのは今に始まったことじゃないし、代表曲に聞かせる曲がとても多いのでゆったりしたライブをイメージする方も多い
しかしELLEGARDENの影響を公言しているまーしーのギターは1本で2本分の厚みを出すような爆音を炸裂させているし、坂本のパンクバンドのドラムを見ているようなもの
前々から足を運んでいる方には当たり前だけど、あたらよはれっきとしたロックバンド
聞かせるタイプのバンドにはとどまらない

次いで「悲しいラブソング」ではひとみがアコギを背負い、たけお(Ba.)がゴリッゴリのベースを鳴らす中で、

「誰にだって優しい君のことだから
きっと今も私の知らないところで
優しさの無料配布しているんでしょ」

というひとみが作詞した毒づいた歌詞はなかなかに重いが、まーしーは客席を煽りまくり「悲しい」感情を抱かせるようなことは無い
むしろ「楽しい」ラブソングとして、この曲を昇華している印象が強い

一方であらたよの代表曲であり、「悲しいラブソング」と共に学生時代に制作された「10月無口な君を忘れる」は冒頭の台詞をカット
いきなり曲が始まるのでサビに入るまで気が付かなかったのだが、元々「10月〜」はあたらよの活動が始まるまで、台詞に該当するAメロは存在していない
つまりはあたらよが生まれる前の形に戻ったようなものだが、それは初心に帰るような行為ととても似ている
この日のセットリストを見たあとだと特に


前述通り、この日は初のアジアツアーのファイナル
同時にワンマンは昨年の下北沢Shangri-La以来なのでこれが何気に年内初のワンマンライブとなるのだが、

「満を持してのJAPAN‼と言いつつ、日本でちょくちょくライブしていた(笑)」

の通り、ツーマンやフェスには出ていたのが今年のあたらよ
JAPAN JAMはUNISON SQUARE GARDENの裏というあまりに地獄のようなポジションで見ることがなってしまい、自分は見ることが出来ず
ただその前にワンマンのチケットを確保していたので、ようやく今年初めて見ることが出来たという感じ
案外そういう方は多いかもしれない

まーしーが奏でるラテンテイストな
ギターリフが爽やかな風を起こす「晴るる」でアッパーに踊らせた後は、今年のはじめに連続リリースされたうちの1曲である「恋するもののあはれなり」
平安時代をテーマにしたイベントのテーマソングになっていることから、全体的に和の雰囲気を漂わせているが、個人的には昔自分がアニメで見た「RPG」の主題歌になっていた「スモールワールドドロップ」を思い出した
あちらも和をテーマにしているし、ひとみの歌声は感情や情景をその場で呼び起こすような声
景色や風景を映像をなくてもこちらに声で届けてくれる

それは

「今更思い出すなよ」

を丁寧に歌い上げ、たけおがスラップベースをイントロのセッションで入れまくった「夏霞」もそうだ
鍵盤が同期で入る最中、まーしーはここでも煽りまくるのたが懐かしい子供の頃を思い出させてくれる曲だなあとしみじみ感じる
もう戻ってこないあの時間をフラッシュバックさせてくれるような
「夏霞」が鳴らされるのに似合いそうなシチュエーションは夏の野外だ
フェスじゃなくても、野外の弾き語りステージでもいい
夏の終わり際に聞いてみたい、そんな令和の夏歌

そんな中でイントロのギターから雰囲気を大きく一変させる「嘘つき」は、「10月〜」の男性目線
そこに美しい景色も楽しい雰囲気もなく、漂うのは喪失
ひとみが

「嘘つき」

と吐き捨てて歌うようだけにとどまらず、ギターもベースも全てが悲鳴を誘発するようなファクターとなっている
Tik TolkをはじめとするSNSの普及により、やたら喪失をテーマにするバンドが飛躍しやすくなったものの、そこからシーンに入っている行けるかは話は別
でもあたらよは、ひとみの声が景色や感情を具現化するように見せてくれるし、エモの極みと言えるようなまーしーの爆音ギターへUNISON SQUARE GARDENの田淵のようにうねりまくるたけおのベースがある
歌声もアンサンブルも「喪失」系の括りで片付けてはいけないもの
シーンに間違いなく食い込んでいけるようなバンドである

この日まで行われたアジアツアーについて、ひとみによればファン同士でライブの様子を共有していたようで、ひとみはそのことにとても感動していたようだが、

「あたらよは悲しみを食べて育つバンド。みんな辛い悲しみを乗り越えて来たんだよね?」

と客席に語りかけるひとみ

人生はポジティブなことよりもネガティブな出来事の方が多い
要は間違いなく、辛い悲しみと対面しているわけであり、ひとみの話していることはあながち間違いではなかったりするが、

「みんなの側にいれるバンドでありたいと思っている。時間の流れは速くておいていかれそうになる。でも来てくれたみんなの力をもらって曲を作って、それがみんなの力になれたら」

と話している時のひとみは、涙をこらえながら話していた

色んな人に求められるようになったことは幸せだし、国内を飛び越えて海外のリスナーからも求められるなんて僥倖そのもの
しかし今のシーンはすぐに次のアーティストが出てくる
昔からシーンにいたアーティストが勢いを取り戻したり、ここに来て最高時速になったりすることもある
あらたよは次から出てくる若手にどんどん追い抜かれている
そう思うと苦しいし、この日来てくれた方が次も来てくれる保障はない
少しでも近くに入れるように、そばに寄り添える曲を作りたいのだろう
色んな方々の悲しみを食べて曲にして届けるために

そうしてひとみの想いが爆発したあと、切実な叫びが爆発するような「「知りたくなかった、失うのなら」」はライブハウスでは収まりきらないようなスケール
他のアーティストの曲で例えるならAimerの「StarRingChild」
あちらは三井や佐々木の轟音ギターで構築されているが、こちらはスリーピースにアコースティックギター
そこからホールで鳴らされるべき強大なサウンドスケープを鳴らしてる
着実にステップアップしていければ、サポートメンバーにギターや鍵盤をreGretGirlのように加えることになるだろうが、まーしーが鳴らすギターの爆音ぶりはもっと評価されていいし、機材の交換もスタッフに頼らず自身で行う
とてつもないこだわりようである

更に音を止めずに突入する「52」は、たけおの太いベースを中心に凄まじい爆音
積み重なるアンサンブルだけでも圧倒されるし、ひとみの吐き捨てるような

「くだらないな」

は更に持っていかれる

何よりここまで聞いて思うのはバンドのアンサンブルが前回とあまりに大きく変わっていること
半年もの間に別物のようなバンドになっているのだ

あたらよと検索すると、大体予測変換でヨルシカが出てくる
ひとみ達も影響を受けていることは公言しているし、どんなアーティストにもバックボーンが存在する
故にルーツと比較されるのは今に始まったことではないが、あたらよはそれが特に強いと偏見ながら思う

ヨルシカだって思い切りやってることはロック
それは学生時代から様々なジャンルを聞き込み、今なお色んなジャンルの音楽を吸収しているn-bunaの引き出しの多さが根源にあるだろうが、僕ヤバの主題歌に抜擢されたことでよりあたらよとヨルシカを比較する方は更に増えただろう
だからこそ徹底的に練習したり、ライブしたりのかもしれない
去年の下北沢シャングリラとは別の方々がライブしているように見えてくる

そのうえでひとみがハンドマイクスイッチした「Outcry」
ストリングスが同期で挿入される中、天井に設置されていた2つのミラーボールも回り始めたが、そのミラーボールは紫に照らされており、とても美しいとは言えないもの
そんな不穏な気配の中でアンサンブルがぶつかり合い、ひとみに至っては絶叫
その気迫は1度目にしたら忘れられないような痛烈な咆哮だし、坂本のドラムもどんどん激しくなる
ただ呆然と見つめるしかなかったが、

「夜が明ける」

に合わせるように、ミラーボールは普段見慣れたような色へ
この日のハイライトと言えるような壮大な演出だった

その直後の「極夜」、たけおのうねりまくるベースが躍動して濃い夜を作り上げていくが、この日のライブが久々な曲ばかりだとひとみは告げるのだが、客席に対してまーしーは、

「声大きくなってね?」

と客席の声が大きくなっていることに言及

ここからは大体煽る流れになるのでさらなる発声を求めると思いきや、

まーしー「俺はそんなキャラじゃない(笑)」
ひとみ「どっちかというとドMだよね(笑)」

とむしろ煽らない方へ
ステージでは煽るものの、私生活はそんなに活発なキャラではないのかもしれない
たけおは来場してくれた事への感謝を述べただけで終わったけど(笑)


すると早くも次の曲が最後と宣告
1時間経過しているとはいえ、そんなに曲を多くやっている訳ではないので、早すぎる気もするし、

「ボーカルは変な人だらけです。(笑)」

と急な自虐を始めるひとみに、「全てのボーカリストに謝れ(笑)」と心で思ってしまったが、最後は広大な空に捧ぐ様な爆音を鳴らしながら、客席からは

「泣いている!!」

の合唱も起こった「空蒼いまま」

テンポが良いのも影響したのだろうか
あまりにも早い本編終了だった

アンコールを求めているのか、たけおを求めているのか、パジェロを求めているのか
よく分からない発声が起こっている中、ここで次なるアルバム「」を9月にリリースされることが発表
それに伴いリリースツアーも開催されるようだが、今回は全国8箇所、東京はLIQUIDROOMでの開催が発表
いよいよ全国ツアーの規模も拡大
より飛躍するときを迎えつつあるようだが、このまま新曲として「少年、風薫る」を披露
ステージ後方にはイメージ映像もあり、鍵盤も同期で使われたりと「n-bunaに外部協力求めた?」と訪ねたくくらい、ヨルシカに近い
意図的に似せたのだろうか?
途中で巻き戻る場面もあったしクレジットにも注目である

曲を終えるとひとみがカンペを読みながら改めて告知するが、この公演の終演後にはLIQUIDROOM公演のチケットをすぐに入手できるQRコードが展示されていることも告知
クジラ夜の街も似たような試みをやっていたし、今後の主流になるかもしれない

一連の告知を終えると、「恋するもののあはれなり」の前週にリリースされていた「光れ」へ
青空の下で演奏されたJAPAN JAMに勝るシチュエーションは流石に無い
けれどもひとみの指南の元で行われた合唱のみならず、手拍子も普通に起こっていた
この一体感、参加している全ての人々が輝いている
まさしく「光れ」な状況

そして最後はここまで取っておいたであろう「「僕は…」」
恐らく最後まで取っていたんだろうが、その途端に前の方で急にサイリウムが出てきた
「今までどこにしまっていた」とツッコミを入れたくなったし、「僕ヤバ」の原作も読んでいる自分としては「そんな場面あった?」な感じだが、ラスサビ前に行われるソングポトリーティング
恐らく市川京太郎が山田杏奈に向けた内心を言語化したんだろうけど、ステージではひとみが客席に向けて歌っているようにも
それくらい迫真だったし、君が僕に見せてくれた世界は綺麗だった

去年のワンマンと比較すると変わってないのは5曲くらい
前回が「季憶の箱」のリリースツアーだったのもあるけど、かなりの曲数が入れ代わり、むしろ「季憶の箱の前」の曲が優先された印象である
「10月〜」が初期の形に戻ったように原点に戻ったようなセットリストだった

19時30分開演の時点で「そう長くないだろう」と思っていたので、90分は想定内だ
曲数が少ないのは分かるが、普段から自分がワンマンに足を運ぶ10-FEETは2時間で30曲近く今でもやる
年齢的に近いKALMAもショートチューンが多いとはいえ、ワンマンで30近くやっていた
更に言えば今年大ブレイクしているサバシスターは1ワンマンでないのに、あたらよより曲数多め

ジャンルが違うのは分かる
でも色んなライブを見ている自分からすれば、やっぱり物足りなくなってしまう
フジファブリックみたいにアレンジを伸ばすタイプならともかく、同じ90分でXIIXは20曲やってる
曲数を増やさないと「これしかやらないの?」と思われかねない
言い換えるならば掴みかけた新規客わ取り逃してしまう

そういう意味では次のツアーは勝負だ
「「僕は…」」の強いバックアップがあるから
ここで20曲近くはやらないと、肩透かしを食らったような気分になってしまう
前回のレポに続いて厳しいことを書いてしまっているが、あたらよが嫌いならこうは書かない
好きだからぜひ改善してほしい
極夜な一夜だったんだから

セトリ
祥月
悲しいラブソング
10月無口な君を忘れる
晴るる
恋するもののあはれなり
夏霞
嘘つき
「知りたくなかった、失うのなら」
52
Outcry
極夜
空蒼いまま
(Encore)
少年、風薫る※新曲
光れ
「僕は…」






※前回見たワンマンのレポ