タイトル︰「FANFARE
アーティスト︰SIX LOUNGE
FANFARE (初回生産限定盤) (特典なし)

 SIX LOUNGE、実に2年半ぶりのフルアルバム

前作まではユニバーサルに移動していたので、今作はSonyに移籍してからは初のアルバムとなります

ただ自分が6月にライブを見てから状況はより公転したようで、「リカ」や「エバーグリーン」がバイラルヒット
ヒロアカタイアップたった「キタカゼ」以上にヒットしたようです

とはいえ、SIX LOUNGEの本筋はロックンロールバンド
reGretGirlやThis is LASTのように、最初から失恋ソングやラブソングに重きを置いているバンドではありません
ですがレーベルがSonyに移ったこともあり、お題を与えられて制作されたのが2022年にリリースされた「ジェネス」でした
なのでこの2曲のヒットで、ソニー側がバンドに口出ししないか、心配する方もいたでしょう

ご安心ください
ストリングスが入った曲もありますが、SIX LOUNGEはロックンロールのままです

その理由は最初の「アナーキー・イン・ザ・人生」
再生時間は90秒もないショートチューンですが、リクのバッキバキなベースにシンタロウのパンキッシュなビートといかにもSIX LOUNGEらしい曲ですし、ユウモリはインタビューでこの「アナーキー・イン・ザ・人生」を

「俺たちなりのロックンロール」

と称してました

「オリジナルのアナーキーで
叫ぶ歌よ届け
君の声よ届け」

と歌詞でも触れているように

つまりこれこそが今のSIX LOUNGE
ロックンロールが基本軸のままなのです

続く「俺たちのファンファーレ」、こちらは歌謡曲っぽい要素もあり、心臓の鼓動を感じるようなリズムもありますが、ベースにあるのはブルース
主に作詞を担うシンタロウが、「お客さんへのメッセージも込めた」とインタビューで話したように、

「迷いながら進め
すげえ夢だろ、掴めよ」、
「絶望が嫉妬してしまうくらいさ、
希望へ手を伸ばして」

とポジティブなメッセージも並べられてますが、セルアウトなんて一切してない

先行シングルだった「キタカゼ」だって、ヒロアカのEDだったからか、

「立ち上がって走り出せ 前にしか進めないんだ
傷つけない傷つかない その手はもう離さない
いつでも奇跡は起こせると信じていたい」
「この先いつまでも僕たち一緒にさ
笑えたら 幸せじゃないかな
ほら怖くはない孤独じゃないよ僕たちは
北風が吹いて切り拓いた未来へ今
突き抜けろ」

と前向きなフレーズは多いですけど、昔から存在してもおかしくないようなロック
「僕を撃て」や「カナリア」などの方向に近いですからね

ロックンロールの正統後継者のまま
むしろ進化していると、肯定的に捉えるべきでしょう

むしろソニーに移動して生まれた曲は何かというと、「エバーグリーン」

このようにストリングスが絡んでくるJ-POPあるあるな曲は、ユニバーサル時代はなく、外部から編曲を招くようになってから出来たような代物
でもストリングスにアンサンブルが飲み込まれることはなく、上手く共存しているので、セルアウトはしてませんし、しかもそのままアウトロとして繋がる「merry bad end」の壮大さと激しさ…
「エバーグリーン」の歌詞だって、

「ありのまま生きていたい
恥をかいたって構わない
笑われたっていいんじゃない
特別じゃない日を特別に
きっと想いを伝えたら」

と多方面に当てはめられるもの

売れ線に走るなら、常套句や安っぽい言葉になるでしょう
でもSIX LOUNGEはそうはなってません
これが全く変わってないことの決定的証拠です

シンタロウのタムを中心としたビートに、リクが築く重心低めなベースライン、ユウモリのハイトーンボイスが印象的な正攻法なロックンロール「モモコ」、リクのグルーヴィなベースラインを中心にアルコール中毒をテーマにしたであろう歌詞を明るく描いた「宿酔」とまさにらしいロックが続いているのは変わってない証拠
ただ「エバーグリーン」のような曲があったことが物語るように、全てが今まで通りでらない

前作の「ドレミ・ゴー」で参加したSCOOBIE DOのマツキタイジロウが今回も参加し、マツキもセッションで参加した「エニグマ」はシティポップの雰囲気を漂わせるバラードで、「アジアの王様」は軽快なカッティングにグルーヴィなベースラインや細かいビートで踊らせる…
そうしたロックンロール以外の作風もいれつつ、Ai Fujimotoが編曲で参加した「僕と心臓」はなんとピアノ弾き語り
元々ユウモリはこういう曲をやりたかったというのが意外ですが、

「ただ傷つきたくないから仮面をつけていた
それすらも下手くそな、
嘘すらまともにつけない君をそっと抱きしめて
胸のほぼ真ん中で
動けなくなる日まで
君の味方でいるよ」

という寄り添うバラードは必然的に琴線に触れることに
これをライブではどうするのか、それが気になりつつもありますが

バラードといえば、「キタカゼ」のカップリングで収録され「これカップリングはもったいない」と思った「骨」も収録
ミドルテンポながら全てにおいてバンドらしさがあり、

「あなたがもし白い骨になっても
大好きだよあたしはあなたの事
何千年後だって越えたっていい
あなたをこの手で抱きしめるよ」

と全てを愛するバラードは美しいですし、「これこそバズるべきでは?」な曲なんですが、

「もう僕は何もかもいらないのさ
君が居てくれりゃいいのさ
この日々が嘘になって消えゆくとしても
大丈夫すべてを忘れないから」

と歌詞がピュアながらカウベルを用いた軽快なロックンロールこと「恋人よ」も名曲
ちなみに作詞はシンタロウではなく、ユウモリ
基本的にユウモリが作曲し、シンタロウが作詞するスタイルなので、ストレートなユウモリの歌詞は直球でわかりやすく斬新に思えます

その一方、このアルバムで特に重要だと思っているのは「HAYABUSA」
パンクの流れを意識させるようなロックンロールで、歌詞すべてが完璧
リスナーの背中を強く押してくれるようなアンセムで、これが現時点でのSIX LOUNGE最高傑作
自分はそう思っています
最後においてもいいのでは?と思うほどです

でも最後ではない
なぜなら最後にはSIX LOUNGEらしいロックンロール、「Paper Plane」が収録されているからです
実はこのアルバム、テーマが2つあります
1つは「生きる」
「Fanfare」の収録曲の大半は、「生きること」に言及している曲
「HAYABUSA」もそのような曲であるのですが、「Paper Plane」にあるのは、

「僕らはずっと勝手をしたい王様で
また期待して、約束をしてね、
このまま
わがままで生きてよーね!」

と「Fanfare」を総括するフレーズがあります

「自分らしく生きよう」
それがこのアルバムが発するメッセージなのです
音楽的には成長しつつも、ライブは青いまま
いかにも彼ららしいと思っています

そして気になるアルバムのもう1つのテーマは、「自分たちがやっている音楽を「どうですか?」と誇示するようなもの」
「俺達のロックンロールはどうですか?」と問いかけているいるのです
その回答はもちろん「最&高」
これ以外にありえないです

なんか世間では「リカ」や「エバーグリーン」のイメージになっているようですが、そもそも彼らはロックンロールバンドです
ライブではダイバーがバンバン飛ぶような
愚直なまでに、カッコいいロックンロールを鳴らすバンドです

「リカ」や「エバーグリーン」のイメージが強い方こそ、聞いて欲しい
そんなSIX LOUNGEの最新アルバムでした

追記
代表曲といえばこれだよな〜