もともとこのライブは、昨年の6月に行われる予定だった「記憶の図書館」リリースに伴う東名阪ツアーのツアーファイナル(並びにガーデンシアター2日目)
昨年6月の大阪公演途中で真綾の声が不調になり、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組を欠席してまで、東京公演は開催を目指したが願い叶わず延期
なので当初の予定から公演日が大きく変更となり、まさかの正月開催
しかも公演までの間に新曲「抱きしめて」が1/15にリリースされることが発表され、「その新曲も聞けるのでは?」と期待してたりするが、正月からライブに行くのは史上初

というわけで正月、まさに箱根駅伝で青山学院大学の往路優勝を見届けてから東京ガーデンシアターへ
一昨年の横浜アリーナ2daysがキャパ半文(2021年の開催なので、ガイドラインがあまりにも厳しかった頃)とはいえソールドしてないため、「これキャパデカすぎない?」と思ったが、普通に客席はまんべんなく入っていると行っていい
ガラガラではないので一安心

定刻より少し時間が経過した頃に暗転
今回のバックバンドは、

Band master&Guitar:北川勝利
Guitar:奥田健介
Bass:千ヶ崎学
Drums:髭白健
Keyboards:扇谷研人
Percussion&Manipulation:毛利泰士
Chorus:高橋あず美
Chorus:Kayo

と北川がバンドマスターを務める北川バンド
真綾に先駆けてバックバンドが登場するも、よく見るとポジションが1つ空いており、そこに立つのこそバンマスの北川
登場してお辞儀するだけで歓声が起こり、なおかつ指揮者のように振る舞うことでバックバンドが演奏開始
「あまりない始まり方だな」と見とれていると、真綾もいよいよステージに
決して派手ではないラフそうなファッションでの登場であるが、ガーデンシアター内にモニターは無し
UNISON SQUARE GARDENのように、真綾はガーデンシアターでワンマンする際もモニターを設置しないドSスタイル

おまけに幕も上がってなく、ステージもはっきりと確認することができないまま「ないものねだり」が始まり、カーテンに投影されるのも今ステージにいる真綾ではなく、「ないものねだり」のPVの真綾
「焦らすな〜(笑)」なんて思ってもしまったが、髭白のリムショットを中心にしたアンサンブルも沸点に達しそうで達さない絶妙の位置をキープ
真綾が本格的に視界に入るのも、最後のサビになってから
あまりにマイページな序盤

真綾がようやく全方位から確認出来る位置に登場したことで、ステージのカーテンも上がるが、真綾のライブは先日まで参加していたCDJの客層とは大きく異なり、手拍子をしながらじっくり鑑賞するスタイル
着席義務は出てなくても、「あなた立ったりしたらどうなりますか分かりますよね?」といった感じで、一定のタイミングが来るまでは起立しにくい空間
だから立たないように、自分を殺しているのだが、あくまで聞くことに徹するようなライブ故、毛利のパーカッションを軸にした「言葉にできない」も生きてくるというか
なお髭白や毛利の名前を聞いて、「JUNNAのバンドメンバーじゃん!?」と反応する方もいそうだが、ここでの毛利はパーカッションがメイン
ライブでラテンでもなく、パーカッションがメインなこの「言葉に〜」を作詞作曲したのは坂本真綾本人である

真綾が作詞作曲した曲は続き、「こんな日が来るなんて」はまさにこの日のの自分、毎月平均でも8本はライブに参加している自分でも年明けしてわずか2日(それも当時はCDJ23/24のライブレポ執筆真っ只中)
それも正月からライブ会場にいる史上最速のライブ始めとなり、「こんな日が来るなんて…」状態になってしまっているが、アコギを奏でている北川は飛んで、髭白のドラムを合図に抑えていたアンサンブルが一気に解放される瞬間を見たら、「ライブに来て良かったなー」という感じになる
ちなみに自分はこの日、新橋からバスが出ていると聞いて会場に向かうも、肝心のバス停が汐留駅の下にあることに15分近く気づかない、二重の意味で「こんな日が来るなんて」状態となっている

最初のMCで真綾は、

「新年早々呼び出してしまい、申し訳ない(笑)」

と謝罪

声の不調で公演が延期となるのはキャリア初であることを明かし、

「本当は「記憶の図書館」リリース直後、あまり曲に慣れてない状態でツアーに来て頂こうとしたんだけど、この期間にアルバムを聴き込んだだろうから「これはこれでありかな」と」、

開きおった上に、

「アルバムの説明はもう良いよね!!」

と説明放棄までする真綾(笑)
もはや清々しい開き直りである(笑)(ちなみにアルバムインタビューは、「MUSICA」は鹿野淳相手に猫を被ったのに対し、「音楽と人」は金光裕史にいつもの上から目線、「ロッキンオン」はずっとインタビューを担当している同年齢の小柳大輔に気がついたら幕の内弁当から、唐揚げ弁当のようなアルバムになったことを吐露してしまい、「最後最後詐欺はこれで終わりかもしれない(笑)」と白状していた)

とはいえこれで公演延期を引きづられたら、本来のパフォーマンスも発揮できない
なので「まあいいか」と受け入れた後、竹内アンナが制作に携わり、奥田が軽快にカッティングギターを鳴らす「discord(扇谷による鍵盤ソロや奥田のギターソロもあった気がする)」で都会のような雰囲気を見せつつ踊らせると、「タイムトラベラー」は作曲した北川自身が歪んだギターでイントロを思い切り鳴らす
その後北川はギターを持ち替えたりもするのだが、このスケールは真綾が普段ツアーで回るホールよりもガーデンシアターのような広大なホールの方が特に似合う
今回のツアーで東京がガーデンシアターだったのは、「タイムトラベラー」のスケールの大きさを活かすためだったのかもしれない

そこに不穏な空気を連れ込むのは、「甘い要素なんてどこにもないんですけど」とツッコミを入れたくなる「bitter sweet(これが収録された「イージーリスニング」がコンセプトアルバムの原点)」
扇谷が奏でる鍵盤や千ヶ崎のなぞるベースラインがもともと不気味なのに、奥田のギターソロは曲に更なる不穏を引きこむ
このどこに「sweet」があるのだろうか
ただの「bitter」状態

「さて…、有馬記念とFGOの話、どっちがいい?」

と唐突に「有馬記念」なる単語が出現し、場内に爆笑が起こる中、真綾は年末にFGOことFate Grand Orderの特番に出演していたようで、そこでミステリーハンターもやっていたらしい
それどころか2月に刊行されるエッセイ集「満腹論」の撮影も並行していたようだが、なんと本来予定されていたガーデンシアター公演の直後にこのロケが入っていたらしい
ライブは延期となっても、ロケは延期できないからか、声が枯れた状態で撮影していたようだが

そんな真綾は旅をすると、1曲出来るようで、

「むしろ海外行けとスタッフに言われていた(笑)」

とのことだが、「ニコラ」は気球で知られるタイのチェンマイへ旅行したことで生まれた曲らしい

千ヶ崎はウッドベースで北川はアコギと真綾が全編セルフプロデュースした「シンガーソングライター」収録曲故、音そのものもスリムになっているが、髭白に至ってはほぼシェイカーを振っているのみ
音源よりも更にスリムになっていたような…

すると、「音楽と人」のインタビューで、

「あなたが「神」と拝める堂島孝平さんが手掛けた曲」

と金光に言われていた「空中庭園」は北川だけでなく奥田もアコギ
千ヶ崎もウッドベースのままで半分アコースティックセット状態のようなもの
並びに2曲続けてアイリッシュな曲が続いたことに
なお真綾はここでステージに普通に座っていた
リラックスしながら歌う様子をこちらは見させられることに(笑)

そのような行動を取ったのは、ユアネスの古閑翔平が手掛け、髭白が手数の多いビートを刻んだり千ヶ崎がスラップベースしたりとユアネスの曲を北川バンドでやっているようにしか思えない「体温」、ジェニーハイでも活躍する中嶋イッキュウ率いるtricotが作曲するんだから当然変拍子になる「1度きりでいい」とアッパーな曲の連続に備えていたのだろうか
しかしながら真綾はロッキンオンの小柳に絶賛されたように、どんな曲だろうが無難に対応できる
ロックだろうがバラードだろうが関係無く
だからこそ「透明な歌声」と評されるわけで、何色にもなれる
こんな素晴らしいボーカリストはそういない

一方でそうないと思われるのは、真綾のライブはこれだけロックな曲を連発しても頃合いが来るまで一切手が上がることがないし、歓声も起こらない
以前、indigo la Endのパシフィコ横浜公演で絵音が

「一応今日声出し出来るんだけど、インディゴのライブってコロナ禍になる前も後も変わらない。誰が声出すんだよ(笑)」

と歓声が起こらないことを自虐していたが、真綾のライブはそれ以上

扇谷が奏でる美しい音色と共に、千ヶ崎と髭白のリズム隊が更に躍動する「鏡の中で」まで一切歓声は無し
異様する光景の中で真綾はステージを後にした(発声禁止のライブではない、ただマスク着用推奨公演で着用者はやや多め)

真綾の衣装チェンジの間は、「宇宙の記憶」をインストでセッション
まさかこれをインストで聞くことになるとは思わなかったが、相当原曲と変わっていた気がするし、コーラスの高橋とKayoが

「クラップユアハンズ〜」

と促すのに合わせて、ようやく客席は起立
各々の技巧派テクニックに会場は歓声が起こりまくっていた
これを見て「あ、これ発声○なのね」とようやく気付いた方もいそうだけど、この公演に収録カメラのアナウンスは無い
せめて音源にはして欲しいが…

より動きやすい衣装にチェンジした真綾が戻ってくると、新進気鋭のバンドことチルズポットの比喩根が提供したエレクトロベースな「Anything you wanna be」へ
起立状態で真綾を迎えたので、立ちながら聞くことになったがYMOっぽくもあるエレクトロテイストは最後、奥田のギターソロによっておおいに変化
最後だけ原曲とは別の世界線に連れて行かれてしまった気がする

真綾の指示によって再び着席することになると、「記憶」にちなんでだろうか、自身が提供した楽曲をセルフカバーするコーナーへ
会場毎にカバー曲は異なり、「今日だけの音楽」を堪能できる訳だが、この日は横アリ2daysにも参加し、真綾がKinKi Kidsに作詞する橋渡し的役割を果たした堂島孝平に提供した「Latest Train」をカバー

真綾が堂島をリスペクトしているのは有名な話だが、

「堂島さんはいつも明るいイメージなんだけど、中2ワードOKな感じ(笑)」

とのイメージのようで、横アリ2daysでやりたい放題やったのも今思えば納得(突然ヒーローのポーズしたり、転倒する茶番をしたり、勝手に真綾の服装を「ルンバ」扱いした(笑))

「Latest Train」のセルフカバーを終えると、再び起立するが、ほぼ手を振らずに手拍子の多い真綾のライブ(だからサイリウムは当然禁止)で1人手を上げてしまったのは、「トロイメライ」がASPARAGUSの渡邊忍が提供した曲だから
昔からASPARAGUSを聞いていたが故、忍が真綾に楽曲提供すると聞いたらもう正気でいられないのだ
曲の感じ的には「Silly Thing」な感じ
これがきっかけで真綾と忍、というかASPARAGUSと共演する機会が生まれたら昇天する予感さえする

そこから定番の「private sky」と続き、真綾が合唱を煽りまくるのもあって、

「You'll be my boyfriend, I'll be your girlfriend」

の大合唱となるが、奥田はギターソロで一気に前へ
それどころか真綾や毛利に扇谷といった面々も一斉に跳ねていた
久々に合唱出来たのが嬉しすぎて、思わず跳ねてしまったのか

ならびに北川バンドだから絶対やると思った「マジックナンバー」は、キメでお馴染みの手拍子を決めながら、サビは客席に合唱を委ねまくり
照明もとても綺麗だったし、終わった直後に真綾が

「久々に完全版を届けられて嬉しい。「明日は大丈夫だよ」に支えられてきた」

と最後の合唱に言及
今回のセットリストで1番やれて嬉しかったのは「マジックナンバー」だったのかも

そんなライブもいよいよ終盤

「三が日に何処に行くの?って気まずかった人もいるでしょう。」

と真綾が話すのはごもっともだが、2024年の日本は早くもとんでもないことになってる
地震もそうだし、飛行機の件もそう
更にこの公演の後には通り魔事件も発生…
こんな波乱な新年は経験したことがない
しかも政府はあの○○メガネという地獄絵図
支援よりも新年会を優先するアホンダラなんか信用に値しないし、ましてやそんな政党が自費で支援もせずに、義援金を募る…(完全な偽善、色んな駅にいる可能性あるから注意していただきたい)
信じたくないがこれが今の日本である
でも、

真綾「新年早々大変なことになっているけど、前に進んでいくしかない」

の通り、我々は歩みを止めてはならない
進むしかないのだ

そのうえで、最後にやる「菫」の歌詞を書く際、

「運転している時にバックミラーから外の人が見えて「良いなあ」と思ったけど余裕が無いとき程、外を見渡す用意が無い。横断歩道を歩いている人も本当は何か考えて歩いているかもしれない。」

と真綾が話したエピソードは全く持ってその通り
余裕が無い時程、人は周囲を見渡す余裕が無いのだから

加えて、

「こうしてライブに来てくれている人たちも人生の途中で、わざわざよって来てくれている」

と限り無い人生の中で会場に足を運んでくれたファンに敬意を払い、実質本編ラストのような「菫」は、

「僕たちは寂しい生き物だから増えすぎてしまったのかな」

のように、人々がうちに閉まっていた本音を代弁したかのよう
寂しいから仲間を求める
1人では生きていけないから
でもそんなネガティブな視点だけではない

「僕たちは繋ぐ生き物だから誰かの夢の続きを
あきらめきれず紡いでいく」

のように、繋ぐ役割も担っている
誰かが果たせなかった夢を繋ぐといった役目も

くるりの岸田が作曲しただけにアンサンブルはとても優しい
会場にいた人々の心を浄化していった

けれども、

「名残惜しいんで、もう少し歌わせてください!!」

とライブは続き、問答無用で明るくなれる「Get No Satisfaction!」が
これは急遽追加したものではなく、元々予定されていたものだろう
ここは実質的なアンコールという名目である

そしてラストは、

真綾「みんな歌詞忘れてないよね?」

と客席に問いかけつつ、真綾が鍵盤ハーモニカを手に持って

「ポケットを空にして さあ旅に出ようよ」

の合唱となる「ポケットを空にして」

この数年間、発声禁止ルールがあったから「ポケット〜」も珍しくなかった
横アリ2daysではエンディング扱いだったし、東京国際フォーラム2daysも「千里の道」がラスト
発声が解禁される瞬間をずっと待っていたのだろう
だから久々に聞けた「ポケット〜」の合唱は感慨深いものがあった

「ポケット〜」を終えると、メンバー一同が前に出てお辞儀
これで終わるかと思ったが、ここまでが本来の公演日である6/25にやることを予定していたセットリスト
つまりツアーファイナルのセトリは半年遅れながら完遂したということになるが、

「人生は良いことばかりではないから」

と「お年玉」として急遽1曲追加

真綾以外は扇谷と毛利という最小編成で演奏されたのは、あらゆる物事が音楽に直結することを歌った「シンガーソングライター」
毛利が袖に向かって来ることを促し、途中から他のバンドメンバーも集まったが1人跳ねていた北川は真綾によって強引に歌わされた(笑)
ドS真綾炸裂の瞬間だった(笑)

公演延期は致し方無い
無理してライブされる方があまりにキツイから
しかし延期日は正月
「流石にそれは…」となってしまった

でも真綾を確実に見れるのは今ワンマンくらい
またロッキンに出ることがあっても、今のステージ割では30分しか持ち時間を貰えない

だから正月だろうが、足を運んだ
未だに「今日だけの音楽」のツアーに参加しなかったことを後悔しているし

恐らく今年は自分が生きてきた中で、1番日本は荒れる
天災だけではない
不景気は犯罪を巻き起こすトリガーとなるから
平穏な日々はほんの少しかもしれない

でも音楽があれば、それでもなんとか踏ん張れる
明日がある以上、前に進むしかないのだ

あまりに激動すぎる2024年の始まり
最終的にどうなるかなんて、想像もつかないけど、あきれるくらい 明日を信じてる


セトリ
ないものねだり
言葉にできない
こんな日が来るなんて
discord
タイムトラベラー
bitter sweet
ニコラ
空中庭園
体温
1度きりでいい
鏡の中で
宇宙の記憶(インスト)
Anything you wanna be
Latest Train(堂島孝平のカバー)
トロイメライ
private sky
マジックナンバー
Get No Satisfaction!
ポケットを空にして
シンガーソングライター