昨年2022年は25周年ということで、10-FEETは2021年から行われてきたホールツアーを終えると、そのままアニバーサリーツアーを敢行
去年は音楽フェスが復活したこともあり、各地でライブを行い、京都大作戦が行われる京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージでも大型野外ワンマンを行った

その数ヶ月後、「SLAM DUNK」の新作映画に「第ゼロ感」が起用されると、映画が社会現象を巻き起こしたことに伴い、10-FEETの知名度も大きく上昇
昔なら、到底考えられなかったMステに出演するようになり、ここに来てピークを大きく更新している

そんな10-FEETが昨年リリース、シーケンスを大胆に取り入れたここ数年の音楽性の集大成である「コリンズ」の全国ツアーはいよいよファイナルシリーズ
神奈川はファイナルシリーズの2日目に当たる

去年のアニバーサリーツアーも自分は、このKT ZEPP Yokohamaで見ている
しかし周囲を見渡すと、子供の姿も多い
「SLAM DUNK」やテレビ露出の影響で、これまでライブを見に来なかった層まで届くようになったのだろう

定刻を少し過ぎた頃にゆっくり暗転し、「そして伝説へ」のSEが流れると、ワンマンではバンドのロゴがゆっくり浮上し、完全に浮かび上がったところで照明を当てられ、歓声が上がるのがお約束
それからKOUICHI(Dr.)を筆頭にメンバーが1人ずつ現れるが、TAKUMA(Vo. & Gt.)はどういうわけか、ヘアバンドをしている

NAOKI(Ba.)も含めた3人で軽く拳を合わせると、最初に投じられたのは「俺たちを止めることは出来ない」と言わんばかりの「Super Stomper」
始まって早々にダイバーが発生し、客席からは合いの手が次々と返ってきているが、過去1番にNAOKIのベースはバッキバキ
今年の1月からツアーが始まり、フェスどころかテレビ出演も増え、より多忙な日々を送っているだろう2023年
その多忙なスケジュールが10-FEETをよりバージョンアップさせたということか

早くもクライマックスと錯覚しそうな「goes on」では、

「2階席の方は、ちゃんと見えていますか?」

とTAKUMAが2階席に確認を取り、2階席の客は歓声や笑顔で返すが、規制の無い状況で10-FEETのワンマンに参加するのは、2018の豊洲PIT以来だろうか
その時以上に、ダイバーが飛んでいる印象を受けたのは気のせいか
関係者席にホラン千秋なる人物がいたのも気のせいか

10-FEETは基本的にアルバム曲をそこまでフェスはやらない
なのでこの日の参加者は、「コリンズ」収録曲を聞きに来ている側面もあり、変化が激しい曲調と共に和のメロを感じさせる「和」から「コリンズ」のモードへ入ると、デジタルミクスチャーのお手本というべき「SLAM」もようやく生で拝めることに
元々映画「SLAM DUNK」の劇伴候補だった所以として、「SLAM」がタイトルに残っているが、かつてのアルバムのオープニング、「JUNGLES」や「1 size FITS ALL」のように、フェスでやらないのが不思議でならない(なんなら、昨年のCDJ22/23から「コリンズ」モードに入ると思っていた)

プロレスのテーマソングとして制作され、TAKUMAがだみ声を駆使しまくる「aRIVAL」とラウドな曲が続き、10-FEETの今の音楽性の起源「ハローフィクサー」も比較的早めに演奏
歌に焦点を当てさせるようなドラムを心掛けているNAOKIは、ここでもTAKUMAの声を立てつつ、細かなビートを刻んでるが、「Fin.」以前の曲と比較するとダイバーが少ないのは意外である
シーケンスを取り入れた近年の曲たちは、過去の曲と受け取られ方が異なるのだろうか

その違いは定番にして、NAOKIがサビでメインボーカルを取る「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」でダイバーが続出する様を見ると、よりそう思う
音源で鍵盤などを入れても、ライブでは同期を入れず、スリーピースに徹したアレンジをした10-FEETの音楽性が「ハローフィクサー」を気に激変したのだから
なお、この日の「JUST A FALSE! 〜」はコールアンドレスポンス有り
合唱の有無で「JUST A FALSE!〜」は、曲の長さも大きく変わる

また変わったと言えば、コロナ禍初期にリリースされた「シエラのように」の前に、長いMCをやらなくなったこと
あまりの制限の多さに、TAKUMAがストレスを多く抱えていることをMCから、なんとなく察していたが10-FEETの曲の中でも特段シリアスな「シエラのように」の重さは変わらない

去年か今年、父親を亡くしたTAKUMAの

「家族を大切にな!!」

という叫びは、今年だけで2人も祖父母を亡くした自分は尚更共感する(それが原因で福岡に2回、帰福している)

すると最近のワンマンでは多い、参加者からリクエストを募るコーナーが始まるが、

「1人1人言わな分からへん!(笑)」

とTAKUMAが返答するほど、意見は千差万別
中には「SEE YOU」と書かれたタオルを掲げ、演奏させる参加者まで出たが、ドラマ主題歌になってる新曲については、

TAKUMA「音源は出来たけど、まだライブアレンジ出来てへん!」

とのことで、ライブアレンジが定まってないようだし、

「福岡のラーメンで例えるなら、粉落とし(バリカタよりも硬い)やぞ!!」

と断言してしまうほど、まだ解れてない様子だったが、PAや照明に確認を取り、半ばぶっつけ本番で演奏することに

そのためアレンジが変わる可能性は大いにあるが、新曲の「Re方程式」はキャッチーでありながら、ミクスチャーの要素が強い楽曲になっていた
これで10-FEETの名前は、更にお茶の間に届くのだろうか
遊び心もあったし、新規にもこれまでのファンにも届くと自分は考えてる

何の前置きもなく始まった「SHOES」はスカのリズムにじっとしてられないし、NAOKIのベースソロがより身体を動かすが、

「嘘をつくことも重要だと思います!」

とTAKUMAが主張するも、演奏されればされるほど、「なぜCDJの年越しでやらなかったのか」と思う「MONKEY」はTAKUMAが走るような仕草を見せながら、陽気に歌うのがお約束
次の申年、2028年には毎回演奏するべきである

インパクト大な

「一瞬で忘れろ」

が冒頭に登場し、跳ねたくなるようなKOUICHIのビートともにネガティブな記憶を楽しませながら「Freedom」で忘れさせたあとは、TAKUMAの内心が赤裸々に綴られた「アオ」へ繋がるが、意外だったのはここでダイバーが次々と現れたこと
シーケンスを除けば、10-FEETらしいギターロックだから?

理由は定かではないが、この日はやたらKOUICHIへの声援が大きい
TAKUMAやNAOKI以上に目立つし、観客から「歌って!」の要望も出たが、その結果、藤井フミヤの「TRUE LOVE」をKOUICHIはビートを刻みながら歌い、何故かTAKUMAとNAOKIは客席に背を向けて演奏する奇妙な景色が
しかもKOUICHIは突如、テンポを上げて歌うこれまた「?」な内容(笑)
ちなみに10-FEETはセットリストを公式が毎回Twitterに掲載しているが、この「TRUE LOVE」は掲載無し
現場にいたものしか、知りえない瞬間に

「TRUE LOVE」カバーを終えると、TAKUMAが「アンテナラスト」をマイクを通さずに中央にゆっくり向かいながら歌うが、だみ声も多用するし、スケジュールもタイト
でもTAKUMAは歌ってて、キツそうな場面は見当たらない
一時、声が出にくい時期もあったが、40代後半ながら安定した声量を見せるTAKUMAは本当に凄いと思う

そのうえでこの日、演出が特に印象的だったのは「ブラインドマン」
「ブラインドマン」とは、「盲目」や「目の見えない人」を示唆する言葉であり、サビの

「まだ僕には今よりも大切なこの先なんて
ぼんやりとしか見えないから」

になると、照明は点滅して本当にステージが見えないような感じに
サビでステージが見えないって、あまり無い演出に見えるが、曲の世界観を構築する上でこの演出は「考えられてるなあ」と思った
最初から見えにくくするのではなく、注目が集まるサビでこの演出を手掛けたのだから

やはり曲間でKOUICHIを呼ぶ声が多く、

「お前ら、ええ加減にせえよ(笑)」

とTAKUMAが注意喚起するレベル
同時に、

「注意したらもっとデカくなるやつやこれ(笑)」

と教室の光景と共に例えていたが、

「みんな元気でいてくれたら良いけど、元気ない人もおる。元気な人はもっと元気に。そうじゃない人は元気になったら良いなあと思います。」

とTAKUMAは告げ、掲げたのは

「笑顔で帰りましょう」

というこの日のテーマ

人間はそんな万能な生き物じゃないし、凹んでいる時はネガティブな事象がどんどんこみ上げる
だからライブの後は、笑顔で帰ってほしいのだろう
憂鬱な夜は過ごして欲しくないから

このMCの際、TAKUMAはフライングVからギターをストラトキャスターに持ち変えていたのだが、琉球民謡が同期で使用される「深海魚」は身体も心も暖かく包み込む
前述の通りこの日は家族連れも多くいたが、それも考慮したのか、TAKUMAは、母親や父親を労うような言葉を掛けていた
このようなちょっとした一言でも人間は救われるものである

すぐにフライングVにTAKUMAが持ち替え、「RIVER」の歌詞にこの日当てられた川は「多摩川」と「相模川」
「随分遠い川持ってきたなー」と心で呟いたが、ラスサビ前に客席にマイクを委ねると、

「僕の存在を否定するもの」

の合唱が始まるが、

「もっとだみ声で(笑)」

と無茶ぶりするTAKUMA(笑)

「出来るか!」と心で思ったように、合唱はだみ声よりにはなっていなかったが、中には本当にだみ声に変えた人もいたのだろう
そうして試行錯誤する風景に、TAKUMAは満足そうだったし、以前豊洲PITで見た際、

「まだやぞ(笑)」

とリフトしていたキッズがダイブするのを阻止するような悪戯はやらなかった

「生きる意味なんて難しく考えんでいい。ビールのように飲み干せばええんや。」

と個性的すぎるたとえと共に、演奏された「quiet」は「いつ以来!?」と問いかけるくらい、久々に聞いた気がするが、

「普段弱いやつ、飛んでこい!」

をはじめ、TAKUMAが煽りまくった「その向こうへ」は、本当に「その向こうへ」といかんとするばかりに、ダイバーの嵐
周囲にいた方もその量に驚いていたし、セキュリティも裁ききれてなかった
今年3月からガイドラインが改訂され、ダイバーを見ることが次第に増えていったが、ガイドライン改訂後に10-FEETが神奈川でワンマンをやるのは初
抑えていた鬱憤が一気に爆発した模様だ
フェスでありがちな、しゃがませたのに、何もさせない放置プレイは無し

そのうえでフェスで演奏されると、たちまち大声援で迎えられる「第ゼロ感」は、大歓声が起こることは無かったが、NAOKIが指を立てたり、声で煽るなどする上に、開脚奏法をここでも行ったりとNAOKIが目立ちまくり
まさかここでも開脚奏法するなんて、思いもしなかったし、映画館によく足を運んでいる人間ほど、予告編で流れたあの曲が「第ゼロ感」と知った際の驚きは大きかっただろう

何より、テレビにほとんど露出することなく、積極的なライブで知名度を上げてきた10-FEETがここでこんな特大打ち上げ花火を上げるなんて、誰が予想しただろう
ここまでライブハウスを10-FEETは主戦場としていたが、ホールどころか、アリーナでライブする可能性も出て来た
それくらいの驚天動地

ここ数年、10-FEETはアンコールをほぼ行わなずにそのまま本編と連結するので、「後4曲」と告げた際には悲鳴が上がったが、

「8400曲くらいを凝縮してやる(笑)」

と謎のボリューム感を出すことを宣言し、客席から次々に合唱が起こる「蜃気楼」からラストスパート

Mステでも披露された「ヒトリセカイ」でNAOKIはまたも開脚奏法
それもステージ中央でやるので、笑いをこらえきれないが、1日2回も開脚奏法を出来るくらいNAOKIの身体は柔らかいのだろう
NAOKIの身体能力を測る機会があれば、是非やっていただきたい

スタンディングでも指定席でも、忙しすぎて腕が疲れる「VIBES BY VIBES」で腕を上げ下げさせまくった後、TAKUMAがNAOKIやKOUICHIに耳打ちし、事実上本編ラストはタオルが舞う様子が桜が舞う様子そのものな「CHERRY BLOSSOM」
ここ最近はあまり無かった「隣の人とハイタッチ」も久々に行われ、自分も思わずやってしまった
それくらい満たされていた

ここからは、実質的なアンコールタイム
NAOKIとKOUICHIに先程やりたい曲を募っていたのだが、KOUICHIによるドラムコールから「ここで!?」な「BE NOTHING」を放出
まだまだ頭を空っぽにして楽しませる姿勢を示したあと、「1sec.」は

「さあ放て more moreのspirit」

の如く、1階客席はカオス状態に
客席中央付近からもダイバーが発生する事態となり、2階席にいた自分は「何処にその体力残ってるねん」と笑うしかなかった

そしてTAKUMAも1曲やりたくなり、2時間で28曲行う凄まじいワンマンのラストを飾ったのは、

「リフトする奴多すぎやろ!(笑)」

とTAKUMAがツッコミを入れるくらいリフトする人だらけだった「back to the sunset」
前日武道館で見たストレイテナーのフロントマン、ホリエアツシは

「これくらい(30曲)出来るのは、これが最後かも」

と話していたが、平均年齢47の10-FEETがこれだけやってるのを見て、「この年になってもこれくらいやってくれ!」と色んなバンドへのハードルが大いに上がった

ライブを終えると、TAKUMAは2階に到達しそうなほどのコントロールをピック投げで見せていたが、NAOKIが担当した久々のセトリ紙飛行機は、そんなに上手くない様子(笑)
挙げ句の果てには、TAKUMAがステージ袖から謎のテープを持って来て、前の方にいた参加者に配っていた

今年に入ってフェスで10-FEETを見る際、「第ゼロ感」が終わった途端に移動する現象が大いに増え、

「今の曲(「第ゼロ感」)終えて移動する人は、爆発するシステムになっています(笑)」

と弄る場面が目立つ

King Gnuも出始めの頃、「白日」を終えたら移動する客が多かったし、ASIAN KUNG-FU GENERATIONに至っては、「リライト警察」をゴッチがネタにしている
かつてロッキンオンのフェスはもちろん、色んなフェスでもトリをしたし、それ以前に00年代のシーンを代表する曲、「RIVER」を持つ10-FEETが26年目であのような場面が増えるなんて、長年音楽フェスに足を通っている方ほど、首を傾げるだろう

物見遊山でも10-FEETを見てくれる方が増えるのは嬉しい
でも10-FEETの真骨頂はやっぱりワンマン
フェスの何十倍も良いライブをやってくれるし、ワンマンでしか聞けない曲が圧倒的に多い
「コリンズ」収録曲の大半がそうだ
「ライオン」や「4REST」のような初期曲を聞きたければ、ワンマンに来るのが1番だ

2014辺りからワンマンはコンスタントに足を運んでいるけど、ダイバーの数は過去最多
でも終わって、KT ZEPPから横浜駅に向かう参加者はみんなウキウキとこの日のライブを振り返っていた
「みんな笑顔で帰るためのライブ」は、見事達成され、笑顔のその向こうへ誘われたKT ZEPPワンマンだった

セトリ
Super Stomper
goes on
SLAM
aRIVAL
ハローフィクサー
JUST A FALSE! JUST A HOLE!
シエラのように
Re方程式※新曲
SHOES
MONKEY
Freedom
アオ
TRUE LOVE(KOUICHIボーカル、藤井フミヤのカバー)
アンテナラスト
ブラインドマン
深海魚
RIVER
quiet
その向こうへ
第ゼロ感
蜃気楼
ヒトリセカイ
VIBES BY VIBES
CHERRY BLOSSOM
BE NOTHING
1sec.
back to the sunset

※前回見たワンマンのレポ↓
※ロッキンで見た際のレポ↓