新木場STUDIO COAST閉館に伴い、昨年開催地を東京ガーデンシアターに移したSpitz恒例の「サンセット」シリーズ
しかし昨年のMCで、毎年開催地を変更する可能性に言及しており、今年の開催地はガーデンシアターから1時間以内に足を運べる豊洲での開催となった

出演者は、

Spitz
秋山黄色
THE COLLECTORS
peanut butters
ヒックスヴィル

ベテランと若手が混在するラインナップとなった

・THE COLLECTORS[8823 STAGE]
そんなこの日のトップバッターは、このイベントでお馴染み、THE COLLECTORS
SpitzのFC会報で、田村が盟友フラワーカンパニーズのグレート前川と共に行っている連載にメンバー(確かギターの古市コータロー)が登場したこともある

定刻18時頃にゆっくり暗転し、メンバーが登場すると、大きな歓声
それはこのイベントに置いてCOLLECTORSが大いに受け入れられていることを意味し、古沢(Dr.)が力強くビートを刻む「TOUGH」から始まると、加藤(Vo.)の声は「マサムネより年上だよね?」と確認したくなる声のデカさ
実はCOLLECTORS、この日の出演者では最年長
すなわちマサムネはもちろん、昨年出演したエレファントカシマシの宮本浩次よりも年上
インタビューで名前が上がることはそう多くないが、「1度聞いたら目標にしたくなる」、まさにTOUGHな歌声である

80年代のシーンを想起させるモータウンビート共に、山森のベースが身体を弾ませる「空想科学ロケット飛行」、後のマサムネのMCにも繋がり、ボーカリストとしても活動する古市のギターが良メロな「太陽はひとりぼっち」と初期の曲を連発し、

「オープニングアクトで毎回出させてもらってます(笑)」

と自虐する加藤(笑)
そのオープニングアクトについて、

「永年制」
「1年契約」

やら、山森と古市は面白おかしく、話を広げていくが、実はCOLLECTORS、昔地震の影響で仙台から関西に移動が出来なくなることがあり、加藤達は移動を諦めた
しかし田村が移動手段を手配したお陰で、公演を中止せずに済んだのだ
そのため、Spitzには恩があるし、田村の人間性も素晴らしい

そんなCOLLECTORS、出演した際にはSpitzの曲をカバーするのがお約束
昨年はマサムネ達が、

「1度もやったことない(笑)」

と衝撃の事実が明らかになった「シャララ」をカバーしたが、今年は「醒めない」に収録された「ガラクタ」をカバー
あのカウベルも古沢がしっかり再現しているし、ギターが1本少ないにも関わらず表現してしまうのが凄い
これがベテランの貫禄
2度の武道館を成し遂げたバンドの

「お願い please お願い」

のフレーズがキャッチーな古市のギターと共に「夢見る君と僕」で刻むと、

「Spitzファンは金持ち(笑)」

と勝手な偏見をいだき始める加藤(笑)

「そんなことないわ!」と多くの参加者が心でツッコミを入れ、チケット争奪戦を静止したCOLLECTORSファンにも、

「COLLECTORSファンはあまりお金を持ってない(笑)」

と愛の口撃(笑)
「味方も攻撃するんかい」と初見の参加者は抱いただろうが、

「初めての人も最高だ!」

としっかり褒める
決して天の邪鬼ではない…と思う

「ロックンロールを!」

と最新作「ジューシーマーマレード」から

「もっともらえる もっともらえる」

のフレーズを今にも口ずさみたくなる「もっともらえる」でバンドの最新型を見せたあと、最後は対象的に初期の作品より、自分たちの人生を歌ったような「ロックンロールバンド人生」

フラワーカンパニーズのように、一世を風靡した訳ではない
しかし、この日出演した若いミュージシャンは「加藤さんのようになりたい」
そう志すボーカリストはきっといるはずだ

今朝、自分は「ジューシーマーマレード」を聞いていた
COLLECTORSは名前は知っていたけど、聞いたことはない
でもアルバムは素晴らしく、ライブも不変的なカッコよさを感じた
これぞレジェンド
まだ世界は欲しいものだらけ
そう思わせてくれるオープニングだった

セトリ
TOUGH
空想科学ロケット飛行
太陽はひとりぼっち
ガラクタ
夢見る君と僕
もっともらえる
ロックンロールバンド人生

・peanut butter[3372 STAGE]
このイベントには時折、「誰?」なアーティストが出演することもあり、過去にはウルフルズのベーシストジョンBのソロプロジェクト、何故か栗コーダーカルテットが出演したこともある
そんなハテナ枠、初日は2組いるが出演者が発表された際に「マジ?」となったのは、このpeanut butters
過去にSpotifyのプレイリストで見かけ、音源も聞いたことがあるが、まさかここで見ることになるなんて…

今回の3372 STAGEはステージ両サイドにあり、「これ後方見えないだろ…」なセッティング 
ボーカルは穂ノ佳だが、peanut buttersはニシハラのソロプロジェクトであり、ニシハラは恐らく下手にいる方
しかもサポートメンバーは、

Gt. 浪越 康平(from Panorama Panama Town)
Ba.金井伸幸(from ヒスデリカヒストリア)
Dr. 大見勇人(Panorama Panama Townのサポート)

と非常に豪華な布陣であり、「グッドモーニングおにぎり」、「ツナマヨネーズ」と「なんだ、そのタイトルは」な曲達から始まるが、その中身はキュートなルックスな穂ノ佳がやるとは考えにくいドリーミーな爆音ロック
ラウド、パンクバンドがゲストにいるならもれなくダイバーが出てしまいそうな

ファンクテイストとかと思いきや、途中からシューゲイザーに切り替わり、

「落ち込んで帰る」

という生々しいフレーズが刺さる「ジャスコ、上野」、

「愛をくれよ、すぐ」

とダイレクトなフレーズが現代社会を生きる者の心の叫びとも取れる「愛を!!!!」と曲を連発するが、MCは一切無し
持ち時間全てを曲に注ぎ、爪痕を残すようなライブを展開している

曲名通り歪みに歪みまくったギターが炸裂し際どいフレーズも盛り込まれた「Girl is a Hard Rocker」、更にアンサンブルがノイジーとなる「パワーポップソーダ」と経て、あっという間のラストは穂ノ佳の歌声が聞こえづらく鳴る程、轟音シューゲイザーとなる「普通のロック」
「いや、普通じゃないだろ」なオルタナサウンドをやっているように、peanut buttersのやっているロックに甘さなんてない
ちょっと触れたら火傷してしまいそうな、とてつもないロックをやっていた
衝撃の30分

セトリ
グッドモーニングおにぎり
ツナマヨネーズ
メロンD
ジャスコ、上野
愛を!!!!
Girls is a Hard Rocker
パワーポップソーダ
普通のロック

・秋山黄色[8823 STAGE]
この日の面子で唯一、Spitzを除くと見たことがある秋山黄色
例の事件以来、見るのは初だが見るのはそもそもこれが2度目である

メンバー紹介はしてないが、恐らくサポートメンバーは、

Gt.∶井手上誠
Ba.∶藤本ひかり
Dr.∶片山タカズミ

といういつもの布陣で、周囲にいた人々も一気に若返ったが、「猿上がりシティーポップ」のイントロのキメが鳴るだけで、大歓声
Spitzを除くと最もタイアップを貰い、音楽メディアからもプッシュされるいきのいい若者 もしかしたら、Spitz以外でお目当てファンが多かったのはこの秋山黄色かもしれない

井手上が飛びまくったり、藤本がバッキバキなベースを鳴らす中、「やさぐれカイドー」のギターリフもまた強力
片山がサビで刻むビートに合わせて、条件反射のように拳を上げるのも普通であるが、

「若い衆です(笑)」

と若手枠をアピールした秋山(笑)
秋山も話していたが、秋山はこの日の出演者で最も若い可能性がある
peanut buttersのニシカワの年齢が分からないだけに

「マサムネさんから来たメールをスパムメールだと思っていた(笑)」

と告白し、爆笑を起こす一方でエレアコギターに持ち替えた秋山は、

「高校の頃、Spitzの「チェリー」をコピーしようとしていたんですよ。でも全然、うまく行かず3年を費やした(笑)」

と自身の青春にもSpitzがいた事を告げるが、機材トラブルが起こり、直アンプで「夕暮れに映して」を歌うことに
秋山も時に、ギターがデカくて聞こえにくくなることがあるが、郷愁を感じるメロディーを持つ「夕暮れに映して」をこの形態で聞けたことで、アコースティックでもライブをみたくなった
というか、今年の春にやったツアーが1人で各地を回るものだったが

そんな秋山のライブでこの日、

「忘れたくない 忘れたくない」

出来事だったのは、井手上だけでなく片山もコーラスする「とうこうのはて」で間奏、秋山はステージと客席の間でギターを弾くとんでもないプレイに出た
一瞬、「ステージから落ちた!?」と心配になったけれど、心配には至らず立ち上がると、

「愛してるの響きだけで〜」

と「チェリー」を本当にカバー
これで3年を費やしてしまったようだけど、Spitzへのリスペクトはこれで十二分に伝わったはず

アニメ主題歌でも知られる「アイデンティティ」で暗い闇に一石を投じて、進もうとする姿勢を見せたあと、

「いつかは僕もこんなイベントをやりたい。」

と伝えた秋山
今や色んなアーティストが自主企画を開催し、それが色んな音楽を伝える手段となっている
それをあのSpitzがやっているのだから毎回凄いと思うけど、

「歌うことは絶対辞めません」

と生涯現役を宣言した秋山

あの報道は今でも忘れないし、絵音の不祥事のように、これからも許さない人は入るだろう
でも秋山の歌で救われている人もいるし、歌こそが秋山の使命
彼の決意をここに集った人は、優しく受け入れる

そして秋山のこれからを示す「モノローグ」を丁寧に歌ったあと、

「時間が5分余ってしまいました(笑)」

と急遽追加された「クソフラペチーノ」は、だみ声のようにヤケクソ気味に歌い、片山が怒涛の勢いでビートを刻む中、手上までもがステージから見えなくなるようなの姿勢でギターを弾き出し、まともなのはほぼ藤本のみ(笑)
初期衝動が至るところに出たライブは、Spitzを除くと文句無しのベストアクトだった

セトリ
猿上がりシティーポップ
やさぐれカイドー
夕暮れに映して
とうこうのはて
アイデンティティ
モノローグ
クソフラペチーノ

・ヒックスヴィル[3372STAGE]
この日2組の「誰?」枠
来年で結成30周年を迎えるも、音源をリリースしてない時期が長く、知る人ぞ知る存在であるヒックスヴィルがSpitz前に登場である

ファンタジー感ある壮大なSEで登場するが、メンバー構成は

真城めぐみ(Vo.)
中森泰弘(Gt. & Vo.)
木暮晋也(Gt. & Vo.)

つまりアコースティック編成のユニットとなるが、「あたしのスウィート・ベイビー」で始まると、真城のソウルフルな歌声に驚く
「こんな素晴らしい歌声を持つボーカリストがいたのか」

しかも3人によるコーラス枠が上手いということは、中森や木暮の歌唱力も高いということ
「ラジオ」では中森か木暮がボーカルを取ることで方向性が広いユニットと伺わせるし、「I Need Love」ではブルージーなギターソロを担当させてくれたりと、大半が初見だからインパクト抜群
まさしく、ダークホースの出現となるが、

「低空飛行」
「音がスカスカ」
「廃盤になっているアルバムに入ってる曲をやってます」

と自虐ネタを投下しまくる3人(笑)

真城「Spitzと活動歴はほぼ同じんですけどね。マサムネさんからメールが来たときは、スパムかと(笑)」

と秋山黄色の話にも便乗してくれるが、春に誘いが来た際はワクワクしていたとのこと
こんな大勢の前でやるのも初らしい

「CDを作って売っている人達です(笑)」

とあまりに謎すぎる真城の自虐も飛び出したが、そのCDに収録されている「皆既月食」をやったように、ヒックスヴィルは今もマイペースで動いている
それはまだまだ音楽を続けるということ

「秋にツアーやりますが、人多すぎると大変なので10人くらいで(笑)」

と謙虚姿勢は最後まで止まらず、ラストはタイトル通りお別れの「バイバイ・ブルース」

peanut buttersはSpotifyを始めとするサブスクリプションのプレイリストに起用されることで、存在を知った方もいるだろう
でもヒックスヴィルは、こうしたイベントに出演しないと、存在そのものを認知しなかった方が大多数
まさに「出会ってしまった」
豊洲サンセット初日終了後、レスポンスが最も大きかったのはヒックスヴィルだと思うが、Twitterを見たら1ヶ月前に自分の地元でライブしていた
マジか

セトリ
あたしのスウィート・ベイビー
ラジオ
I Need Love
皆既月食
バイバイ・ブルース

・Spitz[8823 STAGE]
普段ならSpitzが最年長となるが、この日はTHE COLLECTORSがいるのでそうはならないのが面白いところ
関東圏のライブハウスでSpitzを見るのは2018の新木場サンセット以来だろうか

「醒めない」以降、お馴染みとなっているSEが流れると、崎ちゃん(Dr.)のシンバルの多さが際立つが、マサムネ(Vo. & Gt.)はまさかの帽子無し
自然体なマサムネを久々に見たが、それ以上にテツヤ(Gt.)がおばあちゃんのような容姿になっており、某YouTuberのことを連想する

サポートにお馴染みのクージー(Key.)を迎え、崎ちゃんが獰猛にビートを刻む「エスカルゴ」を始めると、マサムネはキメに合わせてギターを振り、それに合わせて客席からは「オイ!」の合いの手も
この日のベーシストはほぼ大人しかったので、田村(Ba.)の動きが普段より目立つが、コロナに感染してしまったマサムネの歌声が以前と変わりなくて安心した
後遺症でライブを断念しているシンガーを知っているから

すると前触れもなく、いきなり「海とピンク」
2019年のロッキンは「海とピンク」がオープニング
「初見殺しやん(笑)」とあの時、心の中で呟いたがその時よりもテツヤのギターは勢いを増しているように見える
アコギをかき鳴らしながら、ステージ両サイドに行くマサムネは全然年を取っているように見えない

テツヤのヘビーなギターが会場に広がり、マサムネの太い歌声が今なお発展途上を伺わせる「ハチの針」を終えると、

マサムネ「STUDIO COASTが閉館した時、どうしようかと思った」

とサンセットシリーズの存続を危ぶんでいたことを明かしつつ、サンセットシリーズ恒例の感想では、

「COLLECTORSは「太陽は一人ぼっち」を聞けて涙出た(テツヤに「泣いてたよね」と指摘されて誤魔化す)。昔と全く変わってないのが凄い」
「peanut buttersはカワイイ系かと思いきや、カワイイ+ラウドでした(笑)。)
「秋山黄色くんは、初めて生で見たけど、かっこいいよね。「チェリー」託して良いかも(笑)(テツヤに「営業的に駄目」と言われる)」
「ヒックスヴィルは昔よくお世話になりました、テレビで「群青」やった際、コーラスは真城さんに手伝ってもらいました」

と簡潔ながら丁寧
「群青」で真城がコーラスに参加したことをここで知った人も多いだろう

「普通にやって良いよね?(笑)」

とマサムネが客席にたずね、クージーが鍵盤の音色からストリングスまで1人で補う大車輪の活躍を「魔法のコトバ」で成し遂げると、毎年恒例のカバーコーナー
今年選ばれたのは藤井風の「きらり」
割と新しめの曲だから、ほぼ全員ついて行けたし、テツヤのカッティングや田村のグルーヴィなベースラインも見事だった
何よりただカバーするだけではなく、Spitzはストレイテナーの「DISCOGRAPHY」のようにディスコの色を用いて、Spitzなりの「きらり」が完成していた
これを聞けるのは、チケット争奪戦を制したもののみ

なお本来はVaundyの「東京フラッシュ」もカバーする予定だったが、マサムネのコロナ感染、「ひみつスタジオ」のツアー真っ只中なので、残念ながら断念
一瞬、「おばけのロックバンド」を期待したが

「ガラクタ」のオリジナルがSpitzであることを忘れかけていた、マサムネとテツヤの天然ぶりに笑せたあと、いよいよ「名探偵コナン」の映画主題歌として大きく話題になった「美しい鰭」が登場
変拍子を自然に聞かせる崎ちゃんのビートに心で敬礼したが、音源で聞こえていたホーンはクージーが鍵盤で対応
「醒めない」以降、Spitzは特に完全生演奏にこだわっているが、それは今も変わってない

田村がゴリッゴリなベースと共にプレイでも躍動し、崎ちゃんはあまりに難度の高いビート(クラッシュシンバルの上の、スプラッシュシンバルを普通に交互に叩いていたを「三日月ロック その3」にて何食わぬ顔でこなすが、「8823」の入りをミスする珍しい場面があった
どうやら曲順を間違えかけて、こうなってしまったようだ

それでも曲は進み、テツヤがギターソロを弾く中でマサムネはノイズを出したりしていたが、「どうにもとまらない」ようにテツヤのピックを投げたり弾いたり、崎ちゃんのシンバルを素手で叩きさえした田村はラスサビで3372 STAGEへ突入
途中でベースを放棄し、他のベースにスイッチするクレイジーな場面を見せていた
やっぱりSpitzのライブは、田村が全てを持っていく

そして最後はほぼノンストップでライブを見続けた客席を労うように、「ありがとさん」
オルタナよりだけど、そのアンサンブルには温かみが混じっていた

アンコールで戻ってくると、「美しい鰭」のカップリングになっていた「アケホノ」をこのタイミングで
どうやらツアーで演奏れてないらしく、レアな機会をいただけたが、

「生きていて良かったそんな夜を」

は、盟友フラワーカンパニーズの「深夜高速」から拝借したのだろうか
フラワーカンパニーズが「アケホノ」をカバーする日が来たら、きっとそういうこと

マサムネは最後の曲の前、クージーを含め1人1人にMCを促すと、田村はこの日の面子を

「見たいから集めた」

と話した

こんなに多種多様な面子が集まるのはこのイベントくらい
秋山黄色やTHE COLLECTORSはまだ共演する可能性があるが、ヒックスヴィルとの共演は今後あるかないか
このイベントがいかに凄いか分かっただろう

そしてラストはサビで客席の至るところでワイパーが見られる「スパイダー」
現実に抗って逃げるためにも、翌日も参加します

セトリ
エスカルゴ
海とピンク
ハチの針
魔法のコトバ
きらり(藤井風のカバー)
美しい鰭
三日月ロック その3
8823
ありがとさん
(Encore)
アケホノ
スパイダー




※昨年の有明サンセットについてのレポ