アルバム「double circle」のリリースとほぼ同時に始まったORANGE RANGEのツアーはZepp公演を経てホール公演へ
途中ガイドラインの改訂もあって、マスク着用の上で発声出来るようになり、開始当初よりだいぶ元の状況に繋がった上でホール公演は終盤に
追加公演を除くとこの公演が千秋楽となる

会場となるよこすか芸術劇場周辺は時間を潰せるところがそう多くなく、ホール内は電波もそう良くない
なので客席に入らず、待つ参加者も多いが気になったのは今回の公演はガイドライン改訂でマスクは各々の意思を尊重するものとなっている
けれども客席を見渡すと大半がマスク着用
やっぱりこの緩和をよく思わない方が多いのだろう(会場では手指の消毒を呼び掛けているけど、飛沫感染が中心だから注意を呼び掛ける箇所がおかしい)
自分は両隣がしっかりマスク着用していることを確認できたので、そのまま参加へ
ちなみに上に上がれば上がるほど、マスク未着用が多かった傾向

定刻を少し過ぎた頃にあるBGMが流れると、客席は徐々に起立
手拍子が次々に起こり、会場の熱気が十分高まったところでゆっくり暗転するが、Zeppで見た際と異なり、ステージには幕が張られており、若干見えにくい
それでも姿が完全に見えないわけではないので、NAOTO(Gt.)やYOH(Ba.)、サポートドラムのSASSY(DracoVirgo、ex. HIGH and MIGHTY COLOR)が先に登場したのは分かる

これに続くようにHIROKI、YAMATO 、RYOからなる3MCが登場し、「恋はロックンロール」から始まるのはZeppで見たときと同じ
HIROKIがカウベル、RYOはタンバリンとこの日も最初から陽気だが、この日のご当地ネタとして聞き取れたのは、

「金曜日は海軍カレー」

という、米軍基地があるいかにも横須賀らしいものだが、同時に横須賀をテーマにしたアニメ「ハイスクール・フリート」のタマちゃんこと(立石志摩、口数が少ないものの、大のカレー好き)を連想していたりする

幕が取れて「キリサイテ 風」から始まるのも同じ流れ
かつてガンダムの主題歌で知られ、ポップとメタルを融合したハイカラのドラムだったSassyが叩くとポップな曲もラウドに早変わり
いつの間にウィキペディアに詳しい解説(キリサイテ風ダンスなるものがあるらしい)が出来たのもあって、客席を自分は凝視していたが、

「そうか ゴールはまたスタートなんだな」

の部分が全てを持っていく
このライブが終わった後の事も考えさせるから

RYOによって横須賀でライブするのが15年ぶりという衝撃の事実が報告された後、ステージと客席の距離を縮める「以心電信」はYOHのベースを冴え渡らせるが、Zeppと同じようで違う点
それは禁じられていた発声が可能になったことだ
これにより、

「いつも僕らは繋がっているんだ」

の合唱が復活し、合いの手も帰って来た
前日にみたキタニタツヤとASIAN KUNG-FU GENERATIONのツーマンでも「リライト」のコールアンドレスポンス、「悪魔の踊り方」や「プラネテス」の合唱が目立っていたが、コロナ禍前は当たり前で業務事例的に行っていた行為が1度奪われて、初めてその行為の素晴らしさに気づいた
だからこうして「以心電信」を合いの手を入れつつ合唱できることだけでチケット代の元を取っている
ORANGE RANGEは自分の青春だから(小学生の頃、昼の放送はORANGE RANGEとASIAN KUNG-FU GENERATION、レミオロメンが流れまくっていた)

YAMATOとHIROKIがこの公演はツアー33本目
この後追加公演が3箇所残っているものの、元々はファイナルだったこと、15年ぶりに横須賀でワンマンすることに言及した後、「男子ing session」でYAMATOがホイッスル、RYOが鍵盤ハーモニカを吹いたりと、楽器隊だけでなく3MCの2人も演奏するのでステージは情報量多め
その情報量の多さは祭りをやっているようにも取れ、沖縄バンド特有の陽気な雰囲気は客席にも伝わる

そんな祭に相応しい演出と言えばコラボ
ぴあアリーナでも行ったが、ホールツアーはこのコラボはお約束のようでまずは横須賀学院の吹奏楽部が登場
部長と思われる子がHIROKIによって呼び出されると、黄色いではなく野太い声援が飛び交うが、HIROKIが「日常」を「非難」と言い間違えたことに客席からは非難の嵐が
これにHIROKIは逆ギレし、

「油断すると持っていかれるぞ」

と客席に反撃(笑)
しかもこのやり取りが1度で収まらないとは…

レンジサイドからコラボ前に、吹奏楽部単独のパフォーマンスをする機会が設けられ、客席はもちろんのこと、メンバーを代表してHIROKIが称賛すると、セッションされるのは予想通り「イカSUMMER」
レンジのワンマンに1度でも参加した事があれば、どの曲でコラボするかは流石に分かる
けれども前回コラボを聞いたぴあアリーナと打って変わって、今はまだ夏前

「123で夏が来る」

季節そのものである
その前に春フェスがあることを忘れてはならないが、合法的に野外で爆音を浴びることが出来る季節は今年ももうすぐ
かつて「あまりに早すぎる夏うた」と称された「イカSUMMER」は今や夏の先駆者

横須賀学院吹奏楽部の生徒がステージを去ると、入れ替わりで登場したのは横須賀大津高等学校 横須賀総合高等学校 ダンス部の生徒
ただ登場した4名のうち1人は大津高等学校の生徒で今回のコラボを通じて縁が生まれた模様
ここでRYOは噛んでしまい、HIROKIに続いてブーイングされてしまうが、やっぱりコラボゲストへの野太い声援が目立つ(笑)

ステージに登場した4人によるキレのあるダンスパフォーマンスを見せたあとは当然、「おしゃれ番長」
NAOTOが電子ドラムを叩きながらコーラスする中、YOHとSASSYは抜群なグルーヴを見せているが、3MC陣の中でHIROKIが合いの手を入れる瞬間が1番盛り上がっていた印象
Mステに出た際、勝俣州和が出たことも、他の地上波ではNAOTOが何故かアイロンをかけたり、科学者に扮したりしたことを覚えている方はどれくらいいるのだろう

こうして地元の高校生とコラボするパートは終了したものの、「身体を踊らせる」ことから「エクササイズする」流れにシフトするように、Zeppで演奏されなかった「HEALTH」はNAOTOが軽快にカッティングする中、3MC
はエクササイズ
既にライブで聞いた方は言われるまでもなく、エクササイズをしていたが、RYOの合図で間奏は半ば全員参加
打首獄門同好会の「筋肉マイフレンズ」と並んで、フェス、それも野外フェスでは体力を持っていかれる曲なのにホールだからエクササイズするスペースがほぼない(笑)
となると野外フェスが1番適しているんだろうけど、やっぱり演奏後に場内はザワついた
そもそも、なぜ我々はライブでエクササイズをしているのだろう

夏になると毎週のように台風が訪れる沖縄県民の心情を代弁した「Typhoon」でYOHがやりきれないようなベースラインをなぞると、

「さっきやった「HEALTH」って曲は、外出できない時に体を動かす機会が減ってしまうから、音楽聞いて体を動かそうという曲。「Typhoon」は台風の備え出来てるか?という注意喚起の曲です(笑)」

と細かい解説を加えるHIROKI(笑)
そもそもまだこの時期に台風は来ないし、そもそも発生して欲しくないのだが

コロナ禍にレコーディングした曲たちを全員で歌いながら楽しめることをHIROKIは喜び、NAOTOのギターが海を感じさせる「Love of Summer」では客席がゆらゆら揺れて波のように
やっぱりレンジの5人は夏が1番好きなのだろうか?
というより、沖縄県民全体が夏を好む傾向にあるのだろうか?

しかしそんな陽気な雰囲気を打ち消すのは、YOHがウッドベースに持ち替える「Illusion」
ここに綴られたのは世間が抱く陽性なレンジの世界観ではなく、沖縄県民だからこそ敏感になる政治への痛烈な社会風刺
情報操作に同調圧力は今の世間では決して目を避けてはならないもの
特にNHKどころか、ありとあらゆるメディアが今はただの政治広報に成り下がった
国会中継の映像とマスコミのメディア映像はあまりにかけ離れているから

「井の中の蛙大海を知らず 大海を知れば胃の中の蛙
さあ どうする? 知らない恐怖 知ることの恐怖」

は世間への痛烈な皮肉
知らない恐怖と知ることの恐怖、自分は前者になりたくない
無関心ほど無責任極まりないことはないから

こうした曲をやると、どうしても雰囲気は重くなる
政治と音楽を結びつけたくない人は俄然いるだろうから
そんなドヨンとした会場に

「放て光 負けずにしっかり今
時を越え 誰かに届くまで」

と言わんばかり、力強く優しい光を注ぎ込む「※〜アスタリスク〜」は、ライブだとNAOTOのギターがハードロックのようだし、SASSYもよりパワフルにドラミング
アンサンブルと3MCがこの世界を光で包み込もうとしているようだ
前日見たASIAN KUNG-FU GENERATIONはかつて「アフターダーク」で、キタニタツヤは「スカー」でBLEACHの主題歌を担当したりと、BLEACH関連の曲をやたら聞いているが、

「僕らの想いもいつか誰かの胸に
光り続けよう あの星のように」

は今となっては違った意味合いを持つ
自らの想いがファンを支えようとする光になろうとする想いが

そうして世界を光で照らした後、再びRYOが鍵盤ハーモニカを吹いて楽器隊と合流する「Theme of Rainbow」で美しいサウンドスケープを形成し、YAMATOが三味線を奏でる「Family」と続くのは世界の美しさを描いてくような流れ
暗闇もあるけど、美しいものもあることを示すように

「「ありがとう」「ごめんね」「また明日」 そんな言葉を伝えられる幸せ
当たり前だと思ってたけど 当たり前じゃないよね」

と、コロナ禍によって、当たり前は当たり前でないことに我々は気づいた
だから当たり前を尊重していきたい
「愛しき日々は 幸せ日和」だから

冒頭でRYOが告げたように、前回横須賀でライブをしたのは15年前
「PANIC FANCY」のツアー以来で当時生まれたばかりの赤ちゃんが高校生になっているほど大きな歳月が経っているが、RYO 達は流石に当時のことを覚えていない模様
ホークスファンからすれば最下位になってしまった年で絶対に思い出したくない年だけど(故障者続出でスタメンが恐ろしいことになっていた。近年の暗黒期でも特に暗黒な年)

その上でホールツアーだとYAMATOは普段行かない土地に足を運ぶことで、新しいものを吸収する機会にしているようだが、ここでYAMATOも噛んでしまいとうとう餌食になってしまう(笑)
元気がいいのか、治安が悪いのか
それは一概に言えないものの、横須賀学院吹奏楽部と共演したことで、

「地に足をつけていかないと」

と決意を新たにしたようだ

また楽屋は差し入れがすごく、パーティ会場のようになっていたようだが、

RYO「海軍カレーを食べに行ったら、近くにファンがいたんだけど気づいてもらえなかった(笑)」

と海軍カレーを食べに行ったRYOはファンから話しかけられなかった模様
HIROKIは「配慮したんじゃない?」とフォローしたが、悔しかったのかRYOは今度はハンバーガーショップに
そこではいくらかのファンと交流できたとのこと

HIROKI「ここはどこ?」
客席「横須賀!!」

というよくわからないやり取りに、HIROKIは
急に羞恥心を見せ、

「King Gnuはやらないよこれ(笑)」

なんてKing Gnuが巻き込まれるが、結局開き直って続行し、

RYO「沖縄から夏を連れてきました!!」

と宣言する「イケナイ太陽」はかつて、YAMATOが自分のパートをサボって水分補給することもあったが、

「もう少し来たら夏ですよ!!」

という呼びかけに盛り上がる場内 参加者の大半もLove of Summerなのだろうか
個人的には熱さも寒さも苦手なので、春秋くらいが丁度いい自分は完全に浮いている(笑)

スカを連想させるようなカッティングをNAOTOがかき鳴らす「トカトカ」は琉球音楽の要素が入っている
故にこれも夏の匂いを持ってくる曲だが、HIROKIは上手ギリギリまで移動し、ほぼファンの目の前へ
当然前方はFC会員が相当数を占めているだろうけど、自分が小学校生活を折り返した頃にレンジは社会現象となっていた
おはスタでもレンジが特集されていたし、当時の小学生でもHIROKIたちの名前は知っていただろう
けれども小学生をライブに連れて行ってくれる家系はそんなにない
しかも世代直撃だった他の学生も行けるかと聞かれたら、レンジのホールツアーは「なんでここ?」のような日程が組まれたこともある(今回のツアー、序盤に自分が大学に通っていた平塚が入っていて驚いたほど)
なので今になって、ようやくレンジのワンマンに足を運べるようになった方も少なからずいる
目の前にシーンをかき回した大スターが現れたら、正気でいるのは困難すぎる

かつてワールドカップのテーマソングとしてNHKで大量OAされ、

「サビだけに盛り上がろう」

がヤバイTシャツ屋さんの「 鬼pop激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック (「最高のサビまで 5.4.3.2.1 go」が特に)」の元ネタになっただろう「チャンピオーネ」が呼び起こすのはサッカースタジアムを連想させる合唱
King Gnuの「Stardum」も合唱パートが印象に残ったのでSuchmosの「VOLT-AGE」がいかに異色だったか
今更ながら気づいたが、ひと足早く夏歌をやりまくって良い意味で馬鹿になったところで投じられる「Pantyna」はこの日もレンタルパンティーが客席中に
しかもこのレンタルパンティー、事前予約制だがなんとこの日は予約で一杯となっていた
ステージにミラーボールが回転するので、否応なくEDMを連想するけど、最後にはNAOTOがバズーカを持ってきて、客席へ発射(笑)

「ぴあアリーナもやらせてもらったのに、最後はパンティーを振り回して、後ろから突然(NAOTOが)パンティーを発射する。それがORANGE RANGEです(笑)」

とHIROKIが的確に総括しているのがあまりに面白い(笑)

その上で次が最後の曲になることを告げ、「えー!!」のお返しが戻ってくるのをHIROKIは嬉しそうに聞いていたが、

「アンコール戻ってくるので!!」

と事前申告するHIROKI
そりゃあ、最後はあの曲で華々しく去っている
だからアンコールがあるのは予想通り

そしてセトリはZeppで見た際とかなり変化したが、本編ラストは変わらずに「ビバ★ロック」
でもやっぱり合唱が出来るようになったから、ポジティブなパワーもとても強くなった

「世界中ほら 笑ってる空 見上げて
さあ立ち上がって Oh Yeah
世界中ほら 変わってく 皆頑張って
So立ち上がって Oh Yeah」

というメッセージもとても強くなり、会場中は皆笑顔になって本編は終了

アンコールを求める声が大きく響く中、真っ暗闇の状態でHIROKI達は再びステージに
今回もラウドな曲をアンコールでやるものだと思ったが、蓋を開けてみると

「花びらのように散りゆく中で…」

とHIROKIは「花」を歌い出した
まさかここでバラードをやるとは…
数回見たワンマンのアンコールは、ミクスチャーロックバンドとしてのレンジの生き様を示す曲だった
ホールになったことでその構成も変化したということか

しかもRYO達も普通に話すので驚きはより増しているが、

「コロナ禍になってから伝えたいことを詰めた曲」

とRYOが紹介した「KONOHOSHI」はコロナ禍突入直後にリリースされ、最初から最後まで歌詞が素晴らしい曲
なんなら音楽の教科書に掲載されていいほどで、近年のレンジの曲ではこれが1番
フェスだと演奏される気配をあまり感じないので、こうして聞くことが出来て良かった

そして最後はレンジがシーンへ進出するきっかけとなった「上海ハニー」
昔はフェスでもよく演奏されたので聞くのは久々だったが、カチャーシーを楽しく踊るのは昔と何も変わっちゃいない
こうして最後もハッピーな気分にさせると、去り際にはRYOは客席に向けて敬礼

まさか「キリキリマイ」をやらず桜前線とともに去らないのは意外だった
ライブハウスだとバンドの側面が濃く
ホールだとエンタメ性が強い
どちらのライブも総括すれば最高だし、往年の名曲をまた歌えるのがとても嬉しかった
明日以降も光り続けよう あの星のように


セトリ
恋はRock'n'Roll
キリサイテ風
以心電信
男子ing session
イカSUMMER w/ 横須賀学院吹奏楽部
おしゃれ番長 feat. ソイソース w/ 横須賀大津高等学校 横須賀総合高等学校 ダンス部
HEALTH
Typhoon
Love of Summer
Illusion feat. ペチュニアロックス
※〜アスタリスク〜
Theme of Rainbow
Family
イケナイ太陽
トカトカ
チャンピオーネ
Pantyna feat. ソイソース
ビバ★ロック
(encore)
KONOHOSHI
上海ハニー




※前回見たワンマン↓