8月の中旬頃、突然SHIBUYA CLUB QUATTROでandropとストレイテナーがツーマンライブを実施することが告知された
1週目はフロントマンの内澤崇仁とホリエアツシの弾き語り、2週目はバンド編成でツーマンというあまりに豪華すぎる内容は想像するまでもなく、チケットは争奪戦となり当然のようにソールドアウトした

秋にツアーが決まっているストレイテナーはともかく、andropは公演直前まで主催ライブが決まってなかった(開演直前にアニバーサリーライブが決定)のでとても幸運な機会となる

・Chef's
このツーマンにはオープニングアクトが設けられており、オープニングアクトとしてステージに立つのは自分も初見であるchef's

定刻を少し過ぎてゆっくり暗転したQUATTROには365日、どんな天候でも対応出来るようなナレーションが流れて現れたchef'sの4人は全員コック服を着用
シェフが料理を届けに来たような雰囲気であるが、アヤナ(Vo.)が

「1、2!!」

と叫ぶ「スピンオフヒロイン」から自分は思わず手を挙げてしまった

事前に聞いてきた音源が素晴らしかったのでかなり期待してたのだが、ギターのフルギヤは料理にスパイスをかけるようにキャッチーなメロで装飾する
そのギタースタイルはindigo la Endの要である長田カーティスを彷彿させるものが

物語を紡ぐかのように、ドラムの伊吹が丁寧にビートを刻む「Ci(n)der era」はシンデレラを彷彿させるかのように「0時」、「王子様」なんてファンタジックなフレーズが登場
でもシンデレラの魔法が溶けるかのように終盤一気に曲調は変わる
その展開は分かっていても「凄!」となる

駆け出しのバンド故、CLUB QUATTROのような若手の登竜門的会場に立つのも今回が初めて
緊張するのも当たり前ではあるが、かの著名人からタイトルを取ったであろう新曲「チャップリン」は真路が歌うようなベースをなぞるのは対象的に、曲調はストレート
ライブが進行すれば進行するほど、彼らへの興味が急上昇するが、どうやらステージに立つようになってまだ1年とのこと
これで1年なんて信じられない
とんでもない大型ルーキーの登場を我々は目撃しているのではないだろうか

持ち時間もそう多くないので、「ヒーローコンプレックス」を最後にあっという間にライブは終わったが、早くも次のライブを見たい
そんな衝撃のオープニングアクト
若手アーティストを多く取り上げるMUSICAに掲載されたり、サーキットフェスに呼ばれる日も近いだろう

ちなみにベースの真路はストレイテナーの「Evergreen」をコピーしたことがあるらしい
ストレイテナーファンからの好感度は間違いなく急上昇

セトリ
スピンオフヒロイン
Ci(n)der era
チャップリン※新曲
ヒーローコンプレックス

・androp
開演前から上手に鍵盤が見えたので分かってはいたものの、先行はandrop(ストレイテナーなら鍵盤は中央にセッティングされるため)から
年功序列で考えると自然な流れでもあるが

Chef'sが終わって30分近く経過した頃にゆっくり暗転すると、一時期ライブが始まる前は当たり前のように流れていたサンバ調のSEが復活
もはや欠かせない存在となったジュンジマン(Sax. & Per.)はもちろんのこと、鍵盤にこの日は森谷優里を迎えて、佐藤(Gt.)に伊藤(Dr.)、前田(Ba.)が一気にステージに現れ、内澤(Vo. & Gt.)もほとんど間を空けずにステージへ登場し、早くもミラーボールが回転しジュンジマンがシンバルを刻むことで期待を募らせる「Mirror Dance」を最初にやるのはandropらしいイベント仕様

しかしながらこの日の自分はとても疲れていた
仕事中に幾度も睡魔が襲ってきて「今日じゃなくていいだろ…」と自問自答してしまう程
そんなドバっと疲れが貯まっている状態でQUATROを訪れたわけだが、伊藤の16分ビートや間奏で刻まれる手拍子は我々の体力を回復させるエナジードリンクとなり、サビで自然と身体を跳ねさせる
食後のデザートは別腹のように、ライブの体力は別にある

前田がシンセベースにシフトし、ジュンジマンのサックスがアーバンジャズに仕立てる「Lonely」で、

「手を上げて」

と内澤が歌った途端にニョキっと手が上がりだす光景はいつ見たってシュール
この日、渋谷でライブしているので

「渋谷は砂漠」

歌詞は変わらなかったが、渋谷はどちらかといえば「肉の海」がしっくりくる(THE BACK HORNの「孤独な戦場」より)

佐藤がアコギとサンプラーの二刀流をこなす「KnowHow」で前田はエレキベースに戻るが、こんな近距離でandropを見るのはかなり久々
fhánaとツーマンしたO-EAST以来だろうか
野音よりも、豊洲PITよりも距離は近いので低音はより身体に迫ってくる

このブラックミュージック路線はシーンの中心に立っていた頃のandropとは大きく異なる
久々に見る方は違和感を感じ得ないだろうけど、andropがロックバンドであることを思い出せるのは野音で初披露されていた新曲の「September」
数日前に見たBRADIOが野音でEarth, Wind & Fireの同名曲をカバーしたので、そっちも頭にちらついてしまうけど、間奏になるとどう考えてもそっちの「September」をイメージさせる箇所が
もしかしたらあの「September」にインスパイアされて、新曲は生まれたのだろうか

直前に出演したChef'sと関連性を持たせるように、

「Chef'sよりもシェフっぽい服着てますよ(笑)」

と笑わせる内澤(笑)
確かに昔ウエイトレスをしていたのでその名残は残っている(このバイトをしていた際、内澤は頭の中で2つの曲をぶつけさせながら作曲していたようで、インタビュアだった三宅正一を驚かせていた)ものの、

「俺たちもストレイテナーのコピーをしていた(笑)」

とChef'sのお株も奪ってしまう内澤(笑)
どの曲をコピーしていたかは不明だが、前身のpostman時代も含めたらOJ加入前後の作品だろうか

Chef'sのような若手がオープニングアクトとして出演するイベントはandropとしても久々
少しずつ戻ってきていることを内澤は喜びつつ、

「あなたの悲しみや苦しみにHikariを。明日も明後日以降もHikariを。」

と内澤が話して演奏されるのはもちろん「Hikari」
まあ、ワンマン以外で内澤がアコギを手にして演奏する曲は限られているので誰しも分かっただろうが、この日はワンマンと異なりスマホライトは無し
しかし、

「光に変えてゆくよ どんな暗闇も 夢見た未来が途切れないように」

とあのドラマチックな演出がなくともHikariを灯すことに変わりはない

この日は鍵盤がとても強く聞こえた
それは佐藤雄大では無く、森谷がサポートしていたからだろうか

佐藤も前田も弦楽器を降ろして、androp版EDMというべき「Beautiful Beautiful」に移動するのは野音を彷彿とさせる流れ
距離が非常に近く、重低音もこれまでより大きく、ジュンジマンと森谷が奏でるメロディーもどこか悲哀を感じるものの、サビ以外に内澤はストロボで全く見ることが出来ない
それは視界が閉じきってしまっているということ
その閉じた視界を佐藤のカッティングでこじ開けていくのが「Tokio Stranger」
伊藤のキックに合わせるように赤い照明が点滅し、最終的に爆発する場面は毎回andropのライブのハイライト
伊藤のパワフルなドラムは心をいとも容易く心を鷲掴み

視界が良好となって、内澤がエレキギターを再び背負った「Voice」では初っ端から手拍子が起こり、ワンマンに来る層以外にも馴染み深いサウンドへと回帰するが、活発にステージを動き回る佐藤は開放された世界を表現しているかのよう
発声も解禁されれば、より解放的になるだろう

内澤がハンドマイクに戻り、コロナ禍仕様の歌詞となっている「SOS!」では、前田を先頭にジュンジマン、森谷、伊藤と続いたソロ回しは若干ジャズ寄りではあるが、

「楽しいね!」

と声にする内澤
やはりバンド内でのセッションはいつだって楽しい

そして最後はコロナ禍を逆手に取って、心の中で発声を内澤が促す「Supercar」
伊藤がノッていたのか、かなり手数が多くなっていたけど、andropはいつも大事なものはすぐ側にあることを思い出させくれる
もう1回Hikariの中へ、笑い飛ばせ

セトリ
Mirror Dance
Lonely
KnowHow
September
Hikari
Beautiful Beautiful
Tokio Stranger
Voice
SOS!
Supercar

・ストレイテナー
出演者がやや多く、転換に時間を要したとはいえ、SEの「STNR Rock and Roll」が流れ始めたのは21時10分頃
平日のど真ん中、水曜日のこの時間にストレイテナーを見るなんて想像した方はそう多くないだろう(翌日仕事の方はほぼ顔面真っ青)

ロッキンで見た際にはホリエ(Vo. & Gt. & Key.)以外の3人が柄の悪いヤクザのようなファッションをしており、色んな意味でネットで話題となっていたがホリエとひなっち(Ba.)の服装はいたって普通
その分、髭が増えてダンディになったOJ(Gt.)や刺青を秋になったにも関わらず隠さないシンペイ(Dr.)が目立っているが

「俺たちストレイテナーと言います!」

とホリエが挨拶し、夜の蘇我で演奏されたのも記憶に新しい「宇宙の夜 二人の朝」をバッキバキなひなっちのベースから始めるが、シンペイのドラムは一打一打がやはり大きい
andropの伊藤もパワフルなドラムを叩くタイプだけど、シンペイはそれ以上
砲弾の発射音のように凄まじい音を鳴らしている

ホリエが鍵盤を通して美しいメロディーを奏でたあと、「叫ぶ星」でシンペイがスティックを落とす場面がありつつも、ライブハウスで再会したことを喜び、轟音のロックバラード「CLONE」は久々の演奏
少し音が物足りなく聞こえるのは、豊洲公演で持ち込まれたスピーカーの威力が絶大だったからだろう(あまりに音が悪い豊洲PITの対策として高性能スピーカを持込。とてつもない轟音を放っていた)

とはいえ、時刻は21時30分近く
翌日休みならともかく、社会人大半は木曜出勤日である
翌日健康診断にしていたので「休みにしてよかった」と何度も心で自問自答していたし、

「こんな遅くまでライブやるの久々でしょ(笑)」

とホリエが話すも何も、普段からこの時間は終演時刻である(笑)
恐らく参加者の多くは色んな意味で覚悟を決め、その覚悟を感じ取ったホリエは、

「あなたから貰った大切な時間を使ってライブします」

と約束し、鍵盤に移動した上でひなっちのベースがうねりまくるヒップホップテイストな「さよならだけがおしえてくれた」で、

「儚い希みを守りたいから 未来を背負いたいから」

と結束を強めるとすぐにホリエはギターを背負い直して、ここのところやたらと演奏されている「群像劇」で再び大轟音
OJが鳴らすブルージーなギターはとても気持ちいいけど、去年の東阪ツアーでこれをやらなかったのはやっぱり不思議

リリースして2年経過していた今でも「「Graffiti」ではなく、こちらを表題曲にするべきだった」と思ってしまう「Parody」で再びホリエは鍵盤へ
オルタナからジャズ、オルタナからジャズと行った曲調だけでなくホリエの移動も慌ただしく、シンペイも曲調に合わせてビートを変えているが、16分ビートからサビで一点パンキッシュなビートに切り替える「Alternative Dancer」の様相は何かが弾けたような感じ
制御装置が外れてより自由に楽しく踊りたくなるように
ひなっちが歌うようにベースラインを、OJはエモーショナルなギターを弾く中、ホリエはギターを奏でたり、鍵盤を弾いたりとホリエの仕事量だけが膨大になっている気もするが(笑)

そうして近年の曲を連発している中、久々に演奏されたのは「DISCOGRAPHY」を大きくアレンジした「DSCGRPHY [DECADE DISCO MIX]」
ひなっちとOJは間奏で原曲のアレンジを復活させ、OJも「上がるぞ!」と言わんばかり、手を上に突き上げていたがやっぱり自分は昔の「DISCOGRAPHY」を聞きたい
終始16分で進行するポストパンク時代のほうが好きだったから
もうこの2曲を融合させて新しい化学反応が見たいけど、無理なお願いだろうか

ホリエ「やっぱりライブハウスはいい!昔のクアトロみたい!」

と久々のライブハウス公演、それもQUATTROでライブ出来たことを喜びつつ、ホリエは今週末に福島で行われるフェス(LIVE AZUMA)に出演すること、フロアに上がる前の階段付近にチラシが置かれていたKANA-BOON(の発音が独特で笑ってしまった)の対バンツアーに出演することを告知
ただ、各所で話題となっている633のツアーにAge Factory、w.o.d. 、cinema staffと共に同行することを明かした際、

「音楽性が近いとのことで誘ってくれました!」
「懐かしい感じがします(笑)」

ととぼけるように話すので、多くを悟っている観客の大半は爆笑していた

何かにはこちらもあえて触れないが、「Drink  Up」を聞けばどういう意味かきっと分かる(ちなみにテナーの出演が発表された際、ほぼ一斉にテナーファンはボケ始めた(笑))

「もう少しだけやりますね」

とすっかり寒くなってきたことで、この曲に相応しい季節が訪れた「冬の太陽」でOJの轟音ギターやシンペイのパワフルなドラムが心の氷結を溶かし、

「過去を書き換えても 未来を操っても 手に入れられないもの」

があることをリフレインさせ、OJが奏でるメロディが鮮やかな海の景色を引き寄せる「シーグラス」はやはり最後に大きな手拍子
もう夏は終わってしまったが、この曲はいつだって求められる
夏が恋しくなるから

そして

「最終の列車が静かに動き出す」

ように、最後はノスタルジックな余韻に浸らせる「彩雲」
シンペイはライブの成功を喜ぶように時折万歳して、演奏を終えるとお馴染み肩を組んでステージを去った

「あれ、あの曲は?」となってしまうものの、これこそが伏線張り
ホリエの鍵盤が撤去される代わりにマイクスタンドがセッティングされ、ホリエ達が戻ってくると、ホリエの呼びかけによりandropから内澤がステージに
やたらと内澤は客席にお辞儀して笑いが怒っていたが、プライベートでサウンドシューターの橋本塁が来ていることをホリエが報告し、

内澤「昔塁さんの写真展に行ったら細美(武士)さんに掴まれて、「お前、弾き語りしろよ」と言われて弾き語りするようになったんです。」
ホリエ「うちの知り合いがすいません(笑)」

と内澤が弾き語りを始めた意外な経緯が明らかになりつつ、ホリエは「September」がバンドだととてもノリノリになることに驚いていた

そして先週は内澤とホリエが「Hikari」をコラボしたようだが、今回はその真逆でストレイテナーと内澤で「Melodic Storm」をコラボ
シンペイがコーラスせずにドラムを叩くのはとても新鮮だし、何度でも聞きたいコラボ

「冥土の土産になる(笑)」

といって内澤は会場を笑わせたけど、1度きりのみならず、何度もREMINDERさせて欲しいコラボでライブは終了
最後の肩組みは内澤も一緒にやっていた
これからもテナーとの大切な時間を守りたい

セトリ
宇宙の夜  二人の朝
叫ぶ星
CLONE
さよならだけがおしえてくれた
群像劇
Parody
Alternative Dancer
DSCGRPHY [DECADE DISCO MIX]
冬の太陽
シーグラス
彩雲
(encore)
Melodic Storm w/ 内澤崇仁(androp)




※前回見たストレイテナーのワンマン↓


※前回見たandropのワンマン↓