昨年のテナーといえばコロナ禍になってからツアーがやりにくい状況でベテランバンドの先陣を切り、秋にもツアーを敢行

長年ワンマンを始めとする多くのイベントでお世話になったスタジオコーストと別れを告げた


そんなテナー、今年初のツアーは東名阪での開催

着席指定になっていることもあって、昨年のスタジオコーストワンマンを彷彿とさせるくらいに倍率が高くなったようだが、なんとかチケットを入手してツアーに参加できないことは回避

豊洲は「Dry Flower」よろしく、「ガラスみたいな都会を 雨の匂いが包んでいる」


豊洲PITは先日見たandrop同様に座席指定

収容人数3000の豊洲PITが座席指定になると1300前後になると聞いたのでチケットが入手困難になるのも納得できるが、目の前にスピーカーが設置されており、色んな意味で音圧が心配になる


定刻を少し過ぎた頃にゆっくり暗転

お馴染み「STNR Rock and Roll」をSEにホリエ(Vo. & Gt. & Key.)達が一斉に姿を現すが、ツアーTシャツを着用しているシンペイ(Dr.)は半袖ゆえに腕に描かれた鳥の刺青、ひなっち(Ba.)も半袖なので刺青がくっきりと見える

OJ(Gt.)はこの時期でも長袖を着用


SEと入れ替わるように聞き慣れた同期が流れ始め、ひなっちのバッキバキなベースとシンペイの力強いドラム、OJが奏でる美メロは悪天候でも来てくれたファンに捧ぐ様に「Melodic Storm」を形成

近年は序盤に演奏されることも珍しくないが、悪天候の中、ライブハウスで鳴らされる「Melodic Storm」は格別

この上ないくらいの祝福の嵐


ひなっちの太いベースが踊らせつつ、


「すべての色に 光が宿り始め」


の如くカラフルな照明で彩られる「原色」、シンペイが一定のリズムでパワフルにドラムを叩きひなっちは耳によく残るシンセベースも用いる「Birthday」では、終盤にホリエが身を乗り出すようにステージ前方に出て


「NOW OR EVER!!」


と叫ぶが、ひなっちが流れ星を降り注がぜるようなベース、OJがキラキラと輝く星をイメージさせ、最後はホリエが美しき音色を鍵盤で鳴らす「宇宙の夜 二人の朝」と序盤はロックに寄った曲が中心


一昨年リリースした「Applause」が成熟した雰囲気を感じさせるAORが強いアルバムで、テナーが新しいフェイズに入ったことを匂わせていたが、「静と動」で例えるのであれば、「動」の曲を連発

そうなった要因は、昨年の秋にリリースされた「Crank Up」がギターロックテイストが濃い作品になっていることが大きく、EDMの流れを含み、アイリッシュなリズムをシンペイが刻む「倍で返せ!」が今のテナーのモードを象徴していると言える

タイトルは全然テナーらしくないし、漫画に出てきたそうな台詞だけど


ひなっちのスラップベースの上にOJがファンキーにギターをカッティングしていく「CRY」は久々


「Listen to my heart beat now Listen to my heart beat now」


の如くハートビートで踊らせながら、ファンが楽しみにしていたであろう最後のトライアングルも勿論鳴らし、


「東京!!踊ろう 今夜〜」


とホリエが煽る「Alternative Dancer」も久々


ひなっちは音数を増やして、16分のディスコビートを刻むシンペイがサビでいきなり性急なビートを叩くアレンジはコロナ禍前と変わっていない

ホリエが途中で鍵盤にスイッチする器用さも健在だが、一時期は毎回のように演奏されていたので久々に演奏されたことに驚く自分がいる


テナーはMCを始めると止まらなくなる傾向があるため、去年秋のツアーもそうだが、一気に曲を連打するようになった

こうすることでテンポを悪く感じにくくなるのが、ホリエが歪んだギターを鳴らしたものの次には行かないフェイクを見せるが、この序盤の曲連打にシンペイは相当疲れていたらしい


シンペイは一音一音の打力が強く、長距離砲のようにパワーが籠もったドラミングを行っている

それはロックテイストの曲ほど強く、これだけロックな曲をやれば疲弊するのも納得である

去年、ヘッドフォンマイクからマイクスタンドに戻して(以前と異なり、高い位置にマイクがセッティングされている)、THE BACK HORNのマツのようにマイクを手にとって話すスタイルになったため、更に疲労を与えてしまっているようだが


音響のあまり良くない豊洲PIT対策として、テナーチームがスピーカーを増設したことを明かしつつ、今回のツアーはスタッフに促されて開催されたことがホリエによって明かされるが、


「ラジオでツアーについて聞かれて、「今回のツアーは…」と話すのをよく聞くけど、何か引っ提げる必要あるの?何なら弁当引っ提げるよ(笑)」


と今日のツアーに付いて一言申しつつ、意味不明のことを言い始めるひなっち(笑)

しかもそこから何を引っ提げていくかという話になり、


シンペイ→鶏肉

OJ→ボンレスハム


と去年のLINE CUBEでも話したような食物トークに

しかも食べ物トークから後継者トークにも繋がり、テキトー男で知られる高田純次の後継者になりたがるひなっちやOJをエリック・クラプトンの後継者にしようと緩いトークで盛り上がる4人(笑)

OJがツッコミを入れなければ、もうツッコミ不在である


そんなOJがエリック・クラプトンのようなギターを弾き、シンペイがじっくりとドラムを刻む「A LONG WAY TO NOWHERE」を経て、昨年のツアーでは演奏されてなかったらしい「群像劇」を初演奏

リリースタイミングがコロナ禍直後となった「Graffiti」のように歌謡成分が濃く入っているが、OJの奏でる美メロやシンペイとひなっちが力強く形成するリズム隊から生まれるアンサンブルはホールやアリーナの方が似合いそうだ

去年のツアーはライブハウスとホールを並行するツアーとなっていたけれども、ホールでこの曲が聞ける日を心から待ちたい


ホリエが同期を起動させて、鍵盤に移動するのはひなっちとシンプルがヒップホップのように一定のリズムを刻む「さよならだけがおしえてくれた」

かつてフェスで「シンクロ」が担っていた枠は今この曲が受け継いでいる

一時はフェスで鍵盤が「DISCOGRAPHY」や既に演奏された「Alternative Dancer」の間奏でしか使用されなかったり、鍵盤そのものが置かれなかったこともある

だからホリエが1曲まるまる鍵盤を弾く曲はフェスの持ち時間が短くとも聞きたいし、「ボーカルがギターも鍵盤も弾けるなんて凄い!!」とフェスで初めて見る方に思ってほしい


「儚い希みを守りたいから」

「未来を背負いたいから」


と誓ってくれるバンドはそう多くないだろうから


ひなっち以外の3人が美しいハーモニーを奏でる「Lighting」は少しテンポが遅く感じたが、これはシンペイがリズムをキープするための措置であろう

ホリエとOJ、シンペイが終始合唱しながら演奏されるこの曲は繊細で難易度も高い

走ることはなるべく避けなければならないが故に、シンペイは優しくドラムを叩いていた

ホリエが鍵盤を引いている関係でギターはOJのみ

なのでOJが奏でるギターも一層響く


「NO〜命の後に咲いた花〜」のカップリング、後にアルバムにも収録されシンペイの力強いビートを土台にホリエがピアノポップな鍵盤も、陽気なホーンも鍵盤で鳴らす「Curtain Falls」も相当久しぶり

近年演奏されていない曲が次々に演奏されるのは何も縛りがないツアーだから出来ることだが、ホリエが再びギターを背負って「Blank Map」収録の「青写真」、去年のツアーでアルバムに先駆けて演奏されていた「流星群」はこの日1番の轟音

中でもシンペイはひなっちがバッキバキなベース、OJがオルタナルーツの轟音ギターを鳴らす中で凄まじいフォームでドラムを叩く

ドラムセットが壊れてもおかしくないほどのフォームで感情をむき出しに叩く姿は圧巻だし、ひなっちとOJはリハの時にその姿に驚いていたとのこと

シンペイがドラムを叩く姿はただただ圧倒させられる


そのシンペイが決めのドラムを連発する再会の歌「叫ぶ星」、テナーの原点にしてホリエとシンペイによるベースレスの2ピースで活動していた頃を呼び起こす「ROCKSTEADY」を終えると、トークが長くなることを予期してから客を座らせるホリエ

これは大阪で見たアーティストのライブを参考に取り入れたものらしいが、関係者席にいった途中帰宅したいかつい人物が打ち上げ店舗の責任者だったり、


「(Nothing's Caverd In Stoneの村松)拓にも言われたけど俺繊細なんだよね…。怖そうに見えるけど」


と一時期話題になっていたひなっちのメンヘラぶりを自虐、テレビ出演した際にホリエが所ジョージのことをトコジョーと称したことを明かしたりするが、


ひなっち「うちのリーダーは天才だからね」

OJ「待って、急にリーダーって呼ばれているけどそれでいいの?」

ホリエ「特に気にしてはないよ」


とホリエは突然、ひなっちからリーダー呼ばわりされ、この日会場に流れているテナーの曲を中心としたプレイリスト名は「天才」で、客を笑わせていた


するとホリエの口から「今回のツアーの選曲はこれまでで特に手応えがある曲が選曲されている」という解説が

「CRY」や「Curtain Calls」、「青写真」は今からベストアルバムを自作するなら是非ともピックアップしたいし、テナーのアレンジは偽りなく天才

かつて時代の最先端を行ったポストパンクの「DISCOGRAPHY」なんて、一時はツアーごとにアレンジが変わりまくっていたくらいだから(ひなっちがシンセベースを入れまくったり、速弾きしたり、シンペイが飛ばしまくっていた)


ちなみにホリエアツシの後継者をひなっちから質問されたホリエは、マカロニえんぴつのはっとりをリストアップ

対バンしたことは無さそうなので、是非とも対バンして欲しい所存


「この時期に相応しい曲を」


とホリエが話したので、「テナーの夏うたってあったかな?」と思っていると演奏されたのは、「Crank Ug」に収録されていた「七夕の街」

7月にツアーを毎年やるとは限らないので、この時期にこのロックバラードを聞けるのは幸運

OJはここでもグッドメロディを奏でまくって、グッドメロディに心は癒やされていくが、


「また会いたい 失くした日々 何気のない冗談でも 終わらぬ旅 帰る場所に 僕らがそうなれますように」


に出てくる帰る場所にテナーのライブは間違いなくなっている

でなければ、チケットをギリギリまで探すことはない(去年のコーストには参加できず非常にショックだった)


シンペイもどんどんドラムをエモーショナルに叩きまくって、テナーの原点であるあの街を呼び起こす「吉祥寺」がノスタルジックに広がったところで、丁寧に丁寧に音を奏でていくのは「Applause」がリリースされた際、「これは今後のテナーに欠かせない曲になる」と予感した「No Cut」

流石にフェスでは時間の関係で演奏できないだろうけど、こうしてここに普段は接点がない人々が同じ目的で1箇所に集まるのは、


「ありもしないようなこと でもそれは現実で

紛れもなく 訪れた奇跡」


「Melodic Storm」がセトリから外れないようにこの曲はいつまでも演奏され続けるだろう

ここは、


「小さな灯り達が 集まって描き出す 星より眩しく 輝く世界」


そしてクライマックスを彩るのはやっぱり「シーグラス」

かつてこの曲をSUMMER SONIC、BEACH STAGEの舞台でもあり、JAPAN JAM BEACHの開催場所であった幕張海浜公園で聞けたのは奇跡だし、あのロケーションを超える場所で聞くことはもう難しい

けれどもこの曲を聞いた光景は、真珠のように輝いて残る

笑顔を見せながらターンを決めたひなっち

終盤で畳み掛けるようにドラムを叩くシンペイ

キラキラとしたメロディーを奏でるOJ

そしてホリエのボーカル

夏が始まると終わりを急ぐようにあっという間に時間は過ぎていくけど、まだまだ終わりには早い

むしろこれからだ


そしてラストは数あるテナーのファストチューンの中でも最も速い「Last Stargazer」

去年のイベントでこの曲を聞けた際は、完全に理性が吹っ飛んでいた

「Future Soundtracks」のツアー以来、なかなか聞けなかったこの曲を聞けたから


テナーのライブは元々ダイブ禁止(「CREATURES」のツアーで怪我人が発生したためダイブはコロナ禍前から禁止)

ダイブする方はいないだろうけど、モッシュ出来たなら間違いなく凄い圧縮が起こっていた

性急なパンクナンバーにじっとしていられないから

演奏を終えると、シンペイはドラムセットを乗り越えてホリエ達は4人で肩を組んでお辞儀

興奮状態のまま、本編は終了


一度ステージから去るが、暗転した状態で帰還

その状態で始めたのはまさかにして、1度も聞いたことがなかった「SILLY PARADE」

既に汗びっしょりだったが、やっぱり静止状態で見るのは無理

「○○円やるから動くな」と言われても無視して動くだろう


テナーのツアーにはもう何年も行ってるけど、聞きたくても聞けない曲が多い(「GUNSHIPRIDER」など、去年のコーストに参加できれば…)

収容人数が着席の場合、1500人未満のこの会場で聞けるなんて…


そのうえでツアーが久々ということから、


「初日だからMC長いのは勘弁して(笑)」


とホリエが話していたものの、去年1月にKT Zeppでワンマンをした際、20時にはライブを終えないと行けないルールだったので、スタッフがライトで合図していたのを思い出した

もうこれ、毎回用意したほうが良いのではないか(笑)

Dragon Ashのkjが去年の対バンツアーで「MCが参考になった」と話していたけど、どこが参考になったのか解読不能


「今年は夏フェスも出来そうだし、色んなところで会えそうだね。またどこかでお会いしましょう!!」


と別れの挨拶をホリエが告げ、最後はこれまたノスタルジックな「彩雲」で終了


シンペイはやっぱりドラムセットを乗り越えて、ホリエ達と肩を組んだが、シンペイのスティックは自分の隣席に飛んできて驚いた(誰が受け取ったからはTwitterを見れば分かります)


テナーは何もコンセプトを持たないツアーは過去にもやったことがある(2015年のFREE ROAD Tour)

しかしながら、自由度は今回の方が遥かに上だった

まさかこれほど近年、演奏されていないレア曲を聞けるなんて思いもしなかったから


ひなっちがリーダーを「天才」と絶賛していたが、天才はホリエだけではなく、ひなっちやOJ、シンペイも天才である

テナーが素晴らしい天才集団であるとより認識した一夜だった

Listen to my heart beat now!!


セトリ

Melodic Storm

原色

Birthday

宇宙の夜 二人の朝

倍で返せ!

CRY

Alternative Dancer

A LONG WAY TO NOWHERE

群像劇

さよならだけがおしえてくれた

Lightning

Curtain Calls

青写真

流星群

叫ぶ星

ROCKSTEADY

七夕の街

吉祥寺

No Cut

シーグラス

Last Stargazer

(Encore)

SILLY PARADE

彩雲