Dragon Ash5人体制初でもあり、コロナ禍になってから初のワンマンツアー
これだけ書くと何ら問題ないし、今年リリースされた「Tiny world」や「Entertain」も素晴らしい名曲である

しかし今年に入ってからボーカルのkjはあらゆるフェスで声出しを煽るようになっており、ONE OK ROCKのTaka程ではないが、悪い意味で話題になってしまった(ハルカミライの橋本はkjに誘われてもルールを守ることを尊重して評価を上げる一方、UVERworldのTAKUYA∞はFC限定ブログにて怒りを必死に押し殺して文章を書いていた)
そのため今回のツアーは良くも悪くも注目の的に
けれどもZepp側からの注意勧告によりモッシュダイブはもちろん、発声も完全禁止されることに
直前まで参加するか迷ったものの、リセールせずに参加を決断したのはこれが理由である

仕事を終え最寄り駅の天空橋に到着すると、普段の天空橋より明らかに治安が悪い
去年の8月にお台場でDragon Ashを見たとき、今年の4月に渋谷でスケボーキングの復活ワンマンを見た際もそうだけど、この両者の年齢層は40代が多い
現在世間的にマスクマナーを守っていない方はこの世代が多く、予想はしていたが会場周辺に来ると大きく↓の貼り紙が



コロナ禍になってから多少治安悪いライブに参加もしてきたが、こんなにもデカデカと注意勧告…というよりは警告の貼り紙を見るのは初めて
厳戒態勢でこのツアーが開催されていることを参加者は感じ取らざるを得なかっただろう
言い方を改めるなら江戸時代に実施された踏絵のようなもの

開演前にはモッシュダイブや発声が完全禁止であることをイベンターが改めて言及
こんなに念入りを入れられることは殆どない
結果、どんどん強まってしまう緊張感

多くの方が複雑な思いを抱えるのも必然であるが、定刻に突然暗転し先にステージに現れたBOTS(DJ)が「Entertain」のトラックを流し始めると、暗闇の中でkj(Vo. & Gt.)が合流

「さあ始めよう 踊れ揺れ続け さあ始めよう 今はただ音で埋め尽くせ」

のようにまずはフロアをじっくりと踊らせ、遅れて登場したT$UYO$HI(Ba.)やHIROKI(Gt.)もkjの声に合わせるように演奏開始
そして桜井(Dr.)が最後に登場しアンサンブルが全て出揃うと、緊張感はゆっくりと和らいで音に揺られるモードになり、

「仕舞い込んだ思い 曝け出していいよ 躊躇せず止まんな踊れ揺れ続け 背負い込んだ重荷 放り出していいよ 数小節の間音で埋め尽くせ」

と抑え込んでいた気持ちも次第に出せるようになり、警戒した心の壁はどんどん溶ける
誰もが気にしたであろう

「その声を僕に 聞かせて」

の部分も発声する方はほぼ無し(後方では。流石に前方は判断できない)
これでようやくリラックス出来るようになるが、kjがギターを背負い臨戦モードとなる「Mix it Up」は過去1番に音がデカい
近年のDragon Ashは音源とライブの音圧差が凄まじく、圧倒されるケースが多かったけど今回はそんなものじゃない
一歩間違えたら耳をやられてしまうレベルだ

桜井のビートが一音一音大きいのはワンマンが出来る喜び
ダンサーが不在になったことでHIROKIも以前より動き、派手な開会宣言を行ったあとに、今やD.A.サウンドの格となったT$UYO$HIのバッキバキなベースをフューチャーした「FLY OVER」、ダンサー不在の寂しさを少し覚える(光る棒をぶん回しながら踊っていたのが懐かしい…)もkjがかつて

「喜びの歌だぞ!」

と叫んでいたように、現代版歓喜の歌となった「Odd to Joy」で踊らずにはいられない
恐れた事態もそこまで起こらず「ツアー参加は間違いではなかった!」とここで確信できた
時折起こる歓声にはムッとなってしまうが

今回のツアーは照明が派手で序盤からレーザーも活用
アニバーサリーツアーであるお祭りムードも漂っているがハンドマイクに持ち変えたkjが、

「繰り返す過程も 踏み出す果ての この夜の為に ただその為だけに」

と全てがライブに繋がっているように歌いつつも、

「他の何でもなく 嘘も紛れも無く 痛い程リアル 世界はここにある」

と「これは非現実ではない」と突き付ける「Tiny World」は雰囲気を大きく変える

まさかこのタイミングでDragon Ashの曲がドラマ主題歌になるとは…
ほとんどBGMしか流れないセブンイレブンでDragon Ashが流れるとは…
しかも音源と異なり、思い切りラウド
「バン!バン!バン!バン!」と音がぶつかり合う瞬間は魂と魂のぶつかり合いで想像以上にエモい

「どう描いてもいいんだよ この世界線の今を進め この世界線を行け」

と生き抜く覚悟を決めたkjやDragon Ash、並びに参加者を鼓舞するようにミラーボールは回転するが、どんよりとした空間を塗り替えるのは「Life goes on(携帯のCMで流れまくっていたからDragon Ashの存在を知らずとも耳にしていた)」からのヒット曲攻勢

「オーディエンスのみんな、ありがとう…」

といつかのワンマン(恐らく武道館?)で歌ったように、

「羽田のみんな、ありがとう…」

と歌で感謝を述べたあと、どう考えたって取れる気がしなかった豊洲PITで開催された2月のアニバーサリーワンマンで久々に演奏された「Under Age‘s Song」が目の前で
HIROKIのカッティングが加わっているのがスリーピース時代との大きな違い
これだけ同じリズムをキープするTSUYOSHIと桜井のリズム隊にも大きく拍手を送りたいし、

「Be stronger fly higher don't be afraid」

のフレーズを桜井は間違いなく、口ずさんでいた
今は亡き馬場育三も含めた3人で活動していたあの頃を思い出していたのだろうか

2019年のロッキンでバンドの歴史を映したハイライトと共に始まったのが今でも思い出深い、「陽はまたのぼりくりかえす」は当然イントロから大きな手拍子

「Friends clap your hands Friends put your hands in Air!」

も歌えなくて、コロナに対する憎しみが日に日に増してくるこの頃(発声解禁にむけて動いてくれることを知っていても、相談相手があの某議員では根底信用することができない)
このツアーも最初は発声ありきでやっていたものの、すぐに規制が厳しくなった
ある公演ではkjは笑いも泣きもせずに終わり、複雑な心境だったと思われるが、時間の流れがどうあがいても止めらない

「生き急ぐとしてもかまわない 飛べるのに飛ばないよりはいい」

は今のkjの信念そのもの
ひょっとしたらこの信念と共にこれまで歩んできたかもしれない

「厳しい時代だって分かっているけど、「こんな厳しい時代にバンドマンで居させてくれるのは皆さんのお陰です。」

とストレートに感謝するkj

kjはアンコールも含めて、ほぼこの一言のみ
コロナ禍前から桜井にMCを託するようになったし、驚くことではないが、これだけルール厳守が求められると、ライブに行く気が薄れる方も普通にいる
ただパラドックス的観点から見れば、ここにいる参加者は「それでも!!(ガンダムユニコーンに出てくるバナージ・リンクスに掛けた訳では無い)」と足を運んだ音楽を愛すべき人
中には一昨年9月に立川 STAGE GARDENで行われたワンマン公演のTシャツを着用した方もいる
こうやって足を運んでくれるだけでありがたい
kjはその思いで一杯なのだろう

BOTSが

「これ知ってるよね?」

と言わんばかりにスクラッチで煽ったのはここ数年定番に戻りつつある「Let yourself go, Let myself go」
HIROKIが鳴らす心地良いメロディーに抗うように何故かBOTSはスクラッチを入れまくっているが、「Aim High」からはまさかの「LILY OF DA VALLEY」楽曲3連投

ツアー会場によっては「Amploud」や「運命共同体」をやったりしているらしいが、「LILY OF DA VALLEY」期の曲を連発するとコロナ禍直前に行われていた「THE FIVES」、「THE SEVENS」のツアーを思い出す
ひょっとしたらコンセプトが継続しているのだろうか
「Revolver」で、

「生まれながらの革命児」

と歌うkjは常に見てたいし、あれだけハードロックしているのに一転サビでキャッチーになる「Bring It」と20年前の曲を生で聞けるなんて思いもしなかった

このラウドゾーンで照明は再び派手となり、会場は熱く燃え上がっているも同然
そんな懐かしき00年代前半のD.A.から「ダイアログ」で今日のDragon Ashサウンドに回帰していく訳だが、コロナ禍前に

「5人で回った日々のことを歌にした」

とCLUB CITTA'で見た際にkjが紹介した曲は、コロナ禍になってもがき続けるバンドマンを描く歌に変化した

「僕らは何かにしがみ付いていたいんだ」

を聞くと、演奏する場所を奪われて行き場を失くしたコロナ禍初期を思い出す
ミュージシャンも我々も今でもしがみついている
音楽があるから生きることが出来ている

この一瞬のブレイクダウンを経て曲名通り飛ばせる「Jump」ではT$UYO$HIがグルーヴィなベースで踊らせつつも煽りまくり
「Jump」以降の流れ、それは近年のDragon Ashを見ている方にははっきりと予想できる
次に「百合の咲く場所で」をやることも
よく言えばお決まりで悪く言えばマンネリ
この辺りから自制心を抑えられていない方が明らかに増え、どう考えても合唱している声が際立ち始めた
公演によってはBOTS自ら注意している公演があったにも関わらず発声が起こっているのが今のDragon Ashのライブ

この発声に関しては、桜井がアンコール後に言及するが、シンバルを叩きまくっている桜井の気持ちよさそうな表情が、「このツアーを中止にしないで」という思いを高まらせる
今や肩書きはミュージシャンにとどまらない桜井だけど彼の本職はやっぱりドラマー

そして我々が待ち望んだ「Fantasista」
kjが一昨年のワンマンで

「あれ?俺が歌えばいいんじゃない?」

とボソッと呟いたように合いの手を自作自演することは流石にしないし、普段より煽りも控え目だったが、大きく変わったのは間奏でkjがポイズパーカッションをするようになったことだろう
T$UYO$HIのベースソロを特段煽らず、自身のボイスパーカッションで盛り上げる
新しい戦い方を身につけた「Fantasista」はコロナ禍と変わらない盛り上がりを見せていた
意識的に声を出している輩はともかく

「今日はありがとうございました!!」

とkjが挨拶し、90分弱というあっという間な本編のラストはDragon Ashのミクスチャーロックの現在位置を示す「New Era」

「今日だって僕達は 生まれ変われるよ そう願って僕達は 歌い奏でるよ」

とコロナ禍の最中だってバンドは進化できるし、音楽は鳴り止ませない
スケール大きいスタジアムサウンドをライブハウスに君臨させたあと、kj達は肩を組んで客席にお辞儀した
終盤に回転したミラーボールもまた綺麗だった

すぐにアンコールから戻ってくると記念撮影を行うが、「難しいですね」と桜井は口にしてから、

「Zeppの人もライブハウスで働きたくてここにいるし、照明の人もロックバンドを照らしたいからここにいる。Zeppの人だって、本当はああいう貼り紙をしたくないんだよ。」

と会場内外にあった貼り紙に言及

ああいう貼り紙が生まれてしまうのは、ツアーを中止にさせたくないからだろうけど、厳しい言い方をすればそれだけルールが守られていないということ
ルールは安心安全に楽しんでもらうために生まれるもので、秩序が守られなかったり、傷付く人々が現れたらより増えてしまうのだ(Dragon Ashがかつて常連だったロッキンも昔はダイブ禁止ではなかった)

「ジェットコースターを乗ると降下するときに声出しちゃうじゃん?自分たちから出さないようにすれば分かってくれる。上手い具合にバランスを探っていきたいと思います」

と桜井が呼びかけたのは、「意識的に出すな」ということ

スポーツ観戦のように咄嗟に起こる歓声はともかく、自発的に出す声はNG
自分から声を出さないように意識し、咄嗟に出てしまったならライブハウス関係者も分かってくれると桜井は自分の考えを伝えた
どうにかして、上手いバランスでツアーが続いてほしいものだ

そんなシリアスな桜井トークを終えると、「VIVA LA REVOLUTION」の隠しトラックとして収録され、オールタイムベストにも収録された「HOT CAKE」をじっくり聞かせ、携帯電話のCMソングとしてもお茶の間にオンエアされた「La Bamba」のカバーではサンバのリズムで踊らせまくり
途中からはkjがタオル回しを煽り、その様相はもはやカーニバル

最後はkjが

「未だ革命前夜!!」

と叫んだ「Viva La Revolution」

この発言、大トリを務めた2019年のロッキンでも叫んだもの
あのときkjは

「長い間、お世話になりました」

と告げており、今思えばあれはロッキンの卒業宣言だったのだろう
今更渋谷陽一との関係が悪化するとは思えない
もしかしたら自分たちの出演枠を他のミュージシャンに託したのかもしれない

だとすれば翌年以降出演しないのも悲しいけど納得だ(すなわち、ロッキン連続出演最多記録組はPOLYSICSが塗り替えるだろう。最多出演記録も宮本浩次が更新することになる)

そして、

「そう一人暗い部屋でうずくまったまま 何もせずにそれじゃ臆病なまま 時間が解決するって言ってそのまま 見て見ぬふりしてるならこのまま」

は未来永劫語り継がれる名フレーズ
立ち止まったら何も起こせない
だからDragon Ashは動く
Dragon Ashだけではない
全てのミュージシャンやクリエイターが

ここはまだまだ通過点

「僕らは動き出してまた何か始めるでしょう」

と歩みを止めないことを曲に託して、本編は終了した

コロナ禍になってから参加したライブで正直1番身構えた
夏フェスでkjは声出しを煽りまくって、ネットでは賛否両論
ミュージシャン側が煽れば、「全く問題ない」と解釈する人も出てしまう
「赤信号みんなで渡れば怖くない」じゃないけど、便乗してドミノ倒し式にマナー違反が出てしまうことを警戒していたから

でも蓋を開けてみると、ほとんどの客はマナーを守っていた
きっとこの公演を見た方々はライブハウスで育った人たち
他のアーティスト以上にワンマンを避けてきたD.A.がようやく始めてくれたワンマン
止めるわけには行かなかったのだろう

まもなく始まるSiMの声出し解禁ツアーも数か所のみZeppでの声出し解禁はまだまだ遠くなるかもしれない
でもホールならどうだ
コロナ禍前なら考えにくかったホール公演だけど、もしかしたらホールなら発声も許されるかもしれない
封じらていたからこそ、きっと威力も凄いことになるだろう

それにしても凄いセトリ
正直武道館や横浜アリーナ公演よりも凄い
最新楽曲で攻めることが多いD.A.がこれだけヒット曲を並べた
セールス的に特に輝いていた時代の曲をこんなにも聞けるなんて次は何年後だろう
Dragon Ashと過ごしたいくつもの日々が蘇った人は多いはず
このライブは何度だって僕たちを奮い立たせるよ
そんな一夜だった


セトリ
Entertain
Mix it Up
FLY OVER
Odd to Joy
Tiny World
Life Goes On
Under Age‘s Song
陽はまたのぼりくりかえす
Let yourself go, Let myself go
Aim High
Revolver
Bring it
ダイアログ
Jump
百合の咲く場所で
Fantasista
New Era
(encore)
HOT CAKE
La Bamba
Viva La Revolution





※2月の豊洲公演のレポ↓


※去年行われたストレイテナーとの対バンライブのレポ↓