数々との出会いと別れを繰り返した日本のミクスチャーロックの中心、Dragon Ashは今年遂にデビュー25周年を迎えた

そんなDragon Ashが25周年を記念して久々にワンマンを開催

ただそのワンマンの会場、まさかの豊洲PITということでチケットはFC以外はまず取れるわけがなく、久々に配信を通して見ることに


定刻を少し過ぎた頃にゆっくり暗転すると壮大なSEが流れ、ステージが明らかになると既にメンバーはスタンバイ

BOTSのスクラッチやHIROKIのギターソロ、T$UYO$HIのベースソロに桜井のドラムソロを経て、デビューアルバム「the day dragged on」のタイトルナンバー「the day dragged on」からスタート


今回のライブは事前にリクエストが募られており、「メンバーが出来ないのであれば練習して出来るようにしてもらいます」とある意味、メンバーへの脅迫文がホームページに載せられていた

そのリクエストを元にセットリストが作られているが、まだミクスチャーの面影もなく、ストレートなギターロックだった頃

それもデビューアルバムのタイトル曲が演奏されるなんて何年ぶりだろうか


初期のDragon Ashを代表する獰猛な「天使ノロック」はBOTSがスクラッチをしまくって、HIROKIもエモーショナルなギターを弾いたりと当時は在籍してなかったメンバーによって新たな命が吹き込まれている

無論、T$UYO$HIもゴリッゴリのベースを弾くことによって新たな「天使ノロック」を顕現させているが、いきなりの初期曲2連発

リクエストの影響もあるが、明らかにいつものDragon Ashと異なる


T$UYO$HIのベースがよりゴリッゴリに響き、BOTSは手拍子を煽った「Public Garden」となおも初期曲を続け、


「Dragon Ashです。楽しんでいってください!!」


とkjが挨拶したあとには、昔NHKで放送されたDragon Ash特集番組(デビュー10周年だから2007年くらい?)でも取り上げられた初期の名曲「Fever」がHIROKIとT$UYO$HIによって再構築されていく


初期のバンドの代表曲でありながらも「陽はまたのぼりくりかえす」とは対照的に演奏される機会はそう多くない「Under Age's Song(桜井はカメラに向かって口ずさんでいた)」までは「こんなことある!?」と思ってしまうくらいにスリーピース時代の曲を連発

「次はいつ聞けるのか?」と思いつつ、「Viva La Revolution」から「Just I'll say」のスカのリズムで踊らせると、時系列で進んでいたセットリストの流れに一区切りつくように


「陽はまた轍を繋いで」


から始まる「運命共同体」に飛び、ここからBOTSはパーカッションも演奏する

所謂ラテン時代を象徴する1曲

一時期は頻繁に演奏されていたようだけど、自分はようやくこれで聞けた

メンバーをモチーフにした人形が大航海するあのシュールなPVは色んな意味で忘れられないけど


ラテンミュージックに舵を取った最初のアルバム「Rio de Emocion」のリード曲、「Los Lobos」で内に秘めた熱さを呼び覚まし、ここからラテンの流れに

と思いきや、筋書き通りに行くことを避けるように続くのは、イントロでBOTSがカメラ目線を決めた「Let yourself go, Let myself go」

コロナ禍に入る直前のツアー(結果的に7人編成最後のツアー)で聞けていたので、そこまで珍しい気はしないが、アコギを奏でながら歌うkjの歌声はリリース当時とやっぱり遜色ない

一時期は声を潰してしまったけど、今の歌声はデビュー時とほぼ匹敵するもの

一度潰してしまった歌声を戻すのは簡単のことではないし、kjは見えないところで相当な努力をしているのだろう


ラテン時代屈指の名曲「Beautiful」で再びBOTSがパーカッションを叩き、T$UYO$HIもコーラスを行いつつ、


「さあ奏でよう ひとりひとりの音楽を」


の名フレーズを合唱すると、桜井がマイクを手にとって、今回のライブではHIROKIの加入以降、一度もやってなかった曲を行っていることを明かしつつ、


「こんなまだみんなが色々楽しめない時期にせめて、我々が皆さんに感謝を伝えられるのは、こういう特別な日を1日作ることしかできなかったので…」


とコロナ禍がまだまだ長引き、ライブも普通にできるようになったものの、以前ほどではないので今回こうして冬眠中(kjはモッシュダイブが出来ない今、「Dragon Ashは半冬眠状態」とインタビューで話している)でありながらもワンマンをした理由を話すが、


「本当はぐちゃぐちゃになっていつものライブしたかったけど」


はバンドもファンも同じだ

特にDragon Ashのライブ、ライブハウスでモッシュダイブが見られない時期が2年も続くなんて昔では考えられなかったから


だとしても、生きていればいつかは出来ると希望を捨てず、


「25周年という1つのきっかけで皆さんに今日はこういう椅子があっても割と楽しめるような曲順、構成になってます。もちろん後半楽しめる曲もあります。」


と指定席であっても楽しめることを意識した内容にしていると解説し、


「やる前まではDragon Ashは常に進化してきて、新しい曲をやりたいというのがあるんですけど、こういう特別な日に特別なことをやるのもいいことだなと思います。」


と最新のものをやっていくスタイルのDragon Ashがリクエストを元に曲をやるのも良いと前向きに捉え、「静かな日々の階段を」のように強さよりも優しさが際立たつ「花言葉」にステージ中央が輝くような演出がなされた「HOT CAKE」、イントロから興奮を抑えられないスピーディーな「Iceman」とアルバムのシークレットトラックを3連発

BUMP OF CHICKENが毎回隠しトラックをCDに忍ばせているように、Dragon Ashもシークレットトラックを入れていた時期がある

その隠しトラックを3曲連続で演奏するなんて日本どころか、世界でもなかなかいないかもしれない

しかもこのうち2曲はベストアルバムにも収録された

Dragon Ashが隠しトラックだろうが、手を抜いてないことが分かる瞬間だろう


携帯電話のCMソングとしてお茶の間で聞く機会も多かった「Life goes on」は自分がDragon Ashと初めて出会った曲だ

この曲をリリースした同年にはあの「Fantasista(モッシュダイブが出来るようになるまでは封印中の予定)」も生まれ、Dragon Ashの勢いがいかに凄まじかったを物語るものの、まさか「Life goes on」のカップリングだった「Snowscape」まで演奏するとは…

この頃のDragon Ashはハードロックとヒップポップの中間を行くような音楽性

中でも「LILLY OF DA VALLEY」は00年代のDragon Ashで最も激しいアルバムだった

だからこの「Snowscape」はその頃の面影があるし、これにPVも制作されたBOTSのスクラッチが随所に響く「Revolater」が続くのは当時のDragon Ashのカラーを説明するには分かりやすい流れ


「生まれながらの革命児」


なんて自画自賛するくらいkj、Dragon Ashはシーンの中心にいた

Steady&Co.をはじめ、次々とkjが携わるグループは成功したのだから

にも関わらず、「Harvest」がDragon Ashの音楽性を変える作品となったのはあの騒動であることは言うまでもない(「Viva La Revolution」のサブスクver.にはあの曲が収録されてないし)


その「Harvest」を代表して演奏される「Episode4」では、スケボーキングからSHUNとSHIGEOが登場

Episodeシリーズで何度もタッグを組んできた盟友スケボーキングは2020年に蘇り、先日新作をリリースしたばかり

そんなスケボーキングのアカウントはライブの前にDragon Ashのライブをリツイートしていた 

盟友とはいえ、他のアーティストのライブをリツイートするのはあまり見ない光景

「もしや…」と思ったけど、そのもしやは現実となった

スケボーキングが解散を発表したタイトルの名前は「Episodes」

kjは彼らの解散を惜しむようにロッキンでは、「Back to the basic」を「Amploud」のフレーズを載せて演奏したし、「TIME OF YOUR LIFE」もスケボーキングのために作った曲だった

それから数年が経過

スケボーキングの復活を聞いて、自分は歓喜した(この情報を聞いて急いで記事にしたときは、あまりに反応が薄くてショックを受けたけど(笑))

再びEpisodeは動き出した

スケボーキングは4月に復活後初ワンマンを行う

そこには桜井もサポートドラムとして参加するがもしかすると…


SHUNとSHIGEOの2人がスケボーキングの帰還を高々に宣言しステージを去ると、時空を飛ぶかのように「New Era」のカップリングである「ダイアログ」が始まる

2019年のツアーから演奏はされていたものの、今ではこの曲はDragon Ashの今を語る1曲となった

2020年に世界が大きく変わるなんて思いもしなかったから

今日のDragon Ashで最も重要なこの曲

リクエストで上位にランクインしたか、メンバーの意向によるものか

それは不明だけど、この曲が演奏されるのは必然だ


近年のライブの定番「Jump」からは終盤のブロック

「Majestic」の収録曲は音源だと少し音圧が抑えれているので、これこそ現場で聞いてJumpしたいものだが、「Harvest」の中で特に知名度が高くHIROKIの緩急あるギターが、


「響き溢れ出る時間 歩は四季に抱かれ 開く心眼の軸 時期に渡れ そこに一端の葉 Supernova おこす 瞬間の波動」


と爆発を起こす「Canvas」がここで聞けるとは…

これはリクエストによる選曲だろうけど、最初のベストアルバムを繰り返し聞いていた自分からすると思い出深い1曲だし、またこうしてやってくれたのが嬉しい

と同時に早くからワンマンに行って見たかったとも

「Velvet Touch」からはCDを購入していたし


「Fantasista」が封印されている今、ライブで最も盛り上がる「百合の咲く場所で」がHIROKIのギターノイズを合図に爆音に切り替わり、モッシュやダイブだらけだったかつての景色を思い出していると、聞き覚えのある不穏なイントロが流れ、今度はラッパ我リヤが登場

もちろんそれは「Deep Impact」をやるためだが、曲中に出てくる


「いよいよ壁はなくなるぞ」


とは当時のシーンより今のシーンの方が相応しい


昔だったらアニソンシーンとロックシーンは交わってなかったし、声優がラップをやるなんて信じられなかったから

ラウドロックを行うアイドルだって出てきたし、今の方がシーンの交流は活発

それはコロナ禍前がフェスで盛り上がっていたのもあるけど、そのフェスをきっかけに普段は見ないアーティストのライブを見たり、ロックバンドがアイドルや声優に楽曲を提供することも普通になった

これこそが国境がなくなった瞬間

壁はあの時よりもなくなっている


本編では最後にやることも多い「Lilly」が演奏されたのはライブの終わりが迫っているということ

Dragon Ashのライブは「Viva La Revolution」や「Curtain Call」で締めるのがほとんど

それ以外ならほとんどこの曲

無論、過去のように多くの人々がリフトされた状態で合唱してダイブする瞬間は見れない

あの光景が見れるようになるのはいつだ

メンバーもファンもあの光景を望んでいる


そしてクライマックスを彩るかのように山嵐からSATOSHI、KO-JI ZERO THREEも登場して「ROCK BAND」まで演奏されるが、このコラボ祭りにチャット欄は湧いていた

「楽屋はどうなっているんだ」と

10-FEETのTAKUMAなども来ていたら更にすごいことになっていただろう

Dragon Ashはフューチャリング楽曲はコラボ相手がいないと演奏しない

だからコラボ曲をやるのはただでさえ貴重

その貴重な曲を3曲も

しかもその相手はDragon Ashと道を歩んできた盟友たち

特に山嵐はDragon AshやRIZEと共にミクスチャーシーンを切り開いた先駆者

同じ時代を歩んできたからこそ、絆は簡単に消えない


幾度も悲しい出来事はあった

馬場育三との別れやKenKenの裏切り(桜井やBOTSがSNSで激怒し、kjもステージで泣いたと聞いただけに触れるべきではないけど無視するほうが困難だ)、DRI-VとATSUSHIの旅立ち…

Dragon Ashの歩みは決して順風満帆ではない

それも2010年以降は特に

それでも歩みを止めなかったのは「THE SHOW MUST GO ON」精神と


「俺たちはこの曲があったからやってこれてました!!」


とkjが叫んだように、この曲が精神的支柱となっていたから

歩みを止めなかったことで多くの仲間と出会い、多くの曲が生まれた

それらが全てDragon Ashを支えている


「25年間、俺達の青春に付き合ってくれてありがとう。」


とkjが簡潔に感謝を伝え、最後に演奏されたのはここからが新時代と言わんばかりの「New Era」

最後を最新曲で終えるのは「最新作が最高の姿」であることを印象づけつつ、「まだ終わりじゃない」と物語っている


「今日だって僕達を 奮い立たせるよ」


を最後に歌い上げて、記念撮影を終えると去り際にBOTSは、


「まだやり足りないから続けていくよ、俺らは」

「25年、30年、40年続けていきたいのでよろしくお願いします」


とバンドの継続を宣言してステージを去った

最後に馬場さんの人形をカメラに映して


セットリストは25曲

それも事前に告知されていたリクエストを元にほぼ全てのアルバムから演奏されていたようだ


盟友が次々登場したり、隠しトラックを連打したりと聞けば聞くほど「会場に行ければ…」と思える曲だらけ 

現場で聞ける方々が羨ましくてならなかった


Dragon Ashはまだ終わらない

今なお彼らの音楽は第一線で通用するし、彼らのフォロワーバンドも続々と出てくる

ロックバンドにDJを入れるなんて発想、Dragon Ashがいなければあり得なかったかもしれない


彼らの音楽性は進化を続けた結果、到底模倣できない位置にたどり着いた

しかしまだまだ革命は終わらない

未だ革命前夜


セトリ

the day dargged on

天使ノロック

Public Garden

Fever

Under Age’s Song

Just I'll say

運命共同体

Los Lobos

Let myself go, Let yourself go

Beautiful

花言葉

HOTCAKE

Iceman

Life goes on

Snowscape

Revolater

Episode 4 feat. SHUN, SHIGEO

ダイアログ

Jump

Canvas

百合の咲く場所で

Deep Impact feat. Rappagariya

Lilly

ROCK BAND feat. SATOSHI, KO-JI ZERO THREE

New Era