「DEATH TAKES A HOLIDAY」(スカステ鑑賞) | 世界史オタク・水原杏樹のブログ

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世界の史跡めぐりの旅行記中心のブログです。…のはずですが、最近は観劇、展覧会などいろいろ。時々語学ネタも…?
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2015年3月 旅順・大連
2015年8月 台北(宝塚観劇)
を書いています。

DEATH TAKES A HOLIDAY
パッと見て読めない。フリガナ振って…。それか「死神の休日」じゃダメなの?

スカステで見ました。公演はもう終わっていますし、ラストまでネタバレ満開で行きます。
もしこれからスカステ見る、ブルーレイ見る、という方はご注意ください。

1922年。
ランベルティ公爵一家は、娘のグラツィア(海乃美月)とコラード(蓮つかさ)の婚約パーティーの帰りの夜遅くに車を飛ばしていた。運転手がいるのにコラードが運転をしていて、突然ハンドルを取られてグラツィアは車から投げ出される。
倒れているグラツィアに死神(月城かなと)が忍び寄る。しかし死神はグラツィアに何か惹かれるものを感じ、見逃してしまう…。最初は「エリザベート」をちょっと思い出します。
皆は心配するが、グラツィアは傷一つなく無事だった。

その夜遅く、グラツィアの父・ヴィットリオ・ランベルティ公爵(風間柚乃)の前に死神が現れます。4年も続いた世界大戦、そしてさらに疫病の蔓延…大量の死人を導く役目にすっかり疲れた死神は休暇を取りたいという。そしてモンテカルロで命を落とすはずのロシアのプリンスの姿を借りて、この屋敷に現れるので、2日間だけの休暇の間、自分をもてなしてほしいという。
しかし自分の正体は絶対誰にも話すな、と。その間に人間の感情と言うものを味わってみたい、さらに人間がなぜ死を恐れるのかも知りたいと言う。

そうして夜中に「ロシアのプリンス」ニコライ・サーキが屋敷を訪問します。白い軍服がとても美しく気品のあるプリンスぶり。屋敷の女性陣は色めきます。
朝が来て、寝室に朝食が持ち込まれ、初めて朝の光の中で朝食を食べるという経験、花を触っても枯れない、と驚きながらも休暇を楽しむサーキ。時々とんちんかんな反応をしながらも、周りに好意的に迎えられていきます。

そのうちグラツィアはサーキに前に会ったことがあるような不思議な感情を抱き、またサーキもグラツィアへの感情が胸に湧いてくるのを不思議に思う。

「悲劇の恋人たち」の言い伝えを話し、その悲劇が起こった洞窟で二人が話し合い、見つめ合い、二人が引かれていく様子がていねいに描かれていきます。

でも死神にはタイムリミットがあります。休暇が終わると去らなくてはいけません。もちろん、グラツィアを連れて行くわけにはいきません。特にランベルティ公爵家では、グラツィアの兄が戦争で飛行機で戦って死んでいました。息子を失った悲しみを公爵夫人ステファニー(白雪さち花)から聞かされるサーキ。そしてヴィットリオは二人が愛し合っているらしいことを察して、サーキにグラツィアを連れて行かないでくれと懇願します。

その気持ちを受け止めて、サーキは休暇が終わるとグラツィアを置いて一人で去ることを決心します。

れいこさん、ひたすらカッコいいです。最初の登場の軍服姿も、お屋敷の中でのスーツ姿もステキ。ガウン姿も愛嬌があります。
うみちゃんも20年代ファッションが似合って魅力的。二人は本当にお似合いに見えます。だからこそ別れなくてはいけない運命が待っているのが切ないです。
海外ミュージカルなので、ナンバーが多く、しかもいろいろな登場人物にナンバーがあります。それらのナンバーがいずれもいい曲ばかり。

れいこさんは器用な方ではありませんし、演技派というほどでもないのですが、舞台に対して誠実で、ていねいに役に取り組んで、役の感情を表現しようとしているのが好感が持てます。たまきち時代はそれほど良くもなく悪くもなく、ぐらいの印象しかありませんでしたが、いつのまにか素敵なトップさんになったな~と思います。

作品もめぐりあわせが良かったですね。大劇場しか見てませんでしたが、どれも好感が持てました。ギャツビーもカリンチョさんと比べたら物足りなくはありますが、それを考えなければカッコいいし充分素敵でした。「応天の門」はポスターの写真が本当にカッコいいな~と見とれていました。
それで、このサーキを見てしまったら、れいこさんってこんなに素敵だったっけ?と思うぐらい素敵。見た目と中身のバランスがとてもいい。カッコいいだけでなく、演技だけでなく、カッコよさと心情表現がうまく合わさって魅力的な役になっていました。

ということで、切ないお話だなーと思って見ていました。

しかし。

そのラスト、ちょっと不可解です。

それほど離れたくない、愛している…。
グラツィアを振りほどいて去ろうとするサーキをひたすら追い掛け、最後に死神に戻った姿を見てしまっても、それでもグラツィアは「行かないで」と言う。
まるで「天使の微笑 悪魔の涙」で老人に戻ったファウスト博士をやさしく抱きしめるマルガレーテ。
そうしたら何か奇跡が…起こったのかなんだか。
白い衣装に変わって…?それはどういう意味?考えちゃいけないの?
で、白い衣装の二人が階段を登って行ったら、やっぱり「エリザベート」??

なので原作はどうなっているのか調べてみました。

まず、このお話は1924年にイタリアで書かれたお芝居。
それをイタリア語のタイトルをそのまま英語にして1929年にブロードウェイで上演されたのちアメリカで映画化されました。日本語タイトルは「明日なき抱擁」。
そしてその英語のタイトルで、モーリー・ウェストン作曲でオフ・ブロードウェイで上演されたのが2011年。今回の舞台はこちら。
オフ・ブロードウェイ版の詳しいプロットが書いてあったのを見つけたので読んでみますと、グラツィアは死神の正体を知っても愛している、一緒に居たいと言って、そして死神は彼女の手を取り…そしてはっきりと彼女は「死んだ」と書いてありました。しかし「愛は死よりも強い」という信念を持って二人で彼方へ去っていくのです。
でも、やっぱり公爵夫妻が気の毒すぎる…息子に次いで娘も死んでしまうなんて。

でもそれだけ二人が強く愛し合っている、というのはヒシヒシと伝わりました。いいコンビだ~。

この話をベースに新しい内容で作られた映画がブラッド・ピット主演の「ジョー・ブラックによろしく(Meet Joe Black)」。
1998年の映画で、物語もその年代に移されています。死神が人間の姿を借りて休暇を取って大企業の社長の前に現れ、人間として過ごします。そして社長の娘を好きになる…。でもこちらは別の設定がしてあって、最後はちゃんとハッピーエンドになるかと思わせる終わり方でした。

この映画、とにかくブラピが男前でカッコよくて、ひたすらブラピに見とれるためのような映画でした。

こっちの話でも良かったんじゃないかと思いますが、モーリー・イェストンがミュージカル化したのが「DETH TAKES A HOLIDAY」の方だったのでどうしようもありません。れいこさんがひたすらカッコいいのでそれでよしとしますか。