「ジャズ大名」 | 世界史オタク・水原杏樹のブログ

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世界の史跡めぐりの旅行記中心のブログです。…のはずですが、最近は観劇、展覧会などいろいろ。時々語学ネタも…?
現在の所海外旅行記は
2014年9月 フランス・ロワールの古城
2015年3月 旅順・大連
2015年8月 台北(宝塚観劇)
を書いています。

「ジャズ大名」は筒井康隆の小説で、本格的なジャズ好きの筒井康隆らしい珍作。
映画にもなっていて見たことがあります。
それが舞台になる!生演奏で聞ける。



時は幕末、開国だ、攘夷だと揺れている日本の小さな藩に、嵐で漂流してきた黒人3人が流れ着く。外国人を入らせたとなるとどんなお咎めが来るかわからない。仕方なく地下牢に入れて誰にも知られないように閉じ込めて…。

舞台の後方に高い台のセットがあって、そこにバンドが並んでいます。バンドの人たちも着物。さらにお琴もあり、お城の場面はお琴や日本風のピーヒャララと鳴る笛や太鼓でBGM。

そして語り役で登場するお女中の迫力あるしゃべり方が面白い…なんか、「ブギウギ」の小夜に似てるなあ…と、思ったら、本人つまり富田望生だった!!

しかしお殿様(千葉雄大)は家老(藤井隆)の止めるのも聞かず、好奇心に勝てずこっそり地下牢を見にいく。すると黒人たちは足を踏み鳴らして楽しそうに歌い踊っている。
お殿様はその踊りや歌が心に焼き付いて離れず。
やがて黒人たちは自分たちと一緒に流れ着いたはずの荷物の中に楽器があるはずだ、それを返してくれと必死で身振り手振りで訴える。頓珍漢なやり取りの末ようやくその荷物を持ってくると、彼らは嬉しそうに演奏を始める。一人はトロンボーン、一人はトランペット、もう一人はドラム。
お殿様に続いて臣下が一人、また一人とやってきて、楽しそうな演奏に合わせて体が動き出す…。

黒人3人のうち一人はソフトバンクの白戸家のおにいさん。あとの二人はハーフ。みんな日本語は普通にしゃべれます。仲間内でしゃべっている、という風に日本語でしゃべり、お城に人に話しかけられたら「わからない」という設定。

やがてカタコトながら言葉が通じるようになっていき、3人は身の上話を始めます。アメリカでは南北戦争が起きました。3人は奴隷でしたが、南部が負けて奴隷は解放されました。主人から好きな所へ行け、と放り出されても行くところはありません。そこで「アフリカに帰ろう!」と思い立ちます。
クラリネットを吹くおじさんを加えて4人で楽器を演奏しつつ、港を目指し、途中でメキシコ人に会って演奏が変化するとか、いろいろな要素を取り入れていきます。そしてメキシコ人に案内されて港にやってきて、船長が登場して「香港へ行くぞー」と言って船に乗り込む。4人はスペイン語がわからなかった…。

揺れる船の上で演奏しながら「スイング」を身に着ける。
しかし、途中でどうも行き先が違うようだと気が付いてくる、船は嵐で大揺れで、その中でおじさんが命を落とします。残った3人は救命ボートを出して船から脱出してアフリカを目指そうとしますが、これまた嵐に遭って流されてしまったのでした。

世の中の動きも織り込まれていて、慶喜が大政奉還をした、しかし朝廷には政治を動かす力はない…そこへ薩摩・長州がつけこんで政権を奪おうとしている?
薩摩の間者が暗躍している様子も出てきます。

そうして幕府から藩に出動の命令が届きます。悩みながらも応じない訳にはいかない…と、お殿様は相変わらず地下牢へ出向きます。
もうこのころになるとお城中の人が集まって楽器を鳴らし、踊っています。家老は陣太鼓の名手で、ジャズのリズムを教えられてその通り太鼓を叩き出す。お殿様は篳篥の心得があり、クラリネットの吹き方に似ているので一生懸命練習。楽器職人が教えられた通りに楽器を作って来る…バンジョーとか、チューバとか、ホンマに作れるんかーい!
三味線やら鐘太鼓やら木魚やら次々、わらわらと人が増えて大騒ぎ。狂乱の度は増していき、奥方様も着物姿で足を上げて踊り狂う。

さらに、バンドのメンバーも舞台に降りてきて一緒に狂乱。それで着物…すっかりみんなに溶け込んで、もう誰が本当に吹いているのやら、芝居をしているのやら。

いやもう、見ているほうも唖然とするような、まさに「狂乱のジャムセッション」がえんえんと繰り広げられていきます。こんなに踊り狂って疲れて倒れないんだろうかと思うほど。ミラーボールが回り、ライトも七色変幻、明るくなったり暗くなったり。

しかし最後はちゃんとお芝居として物語が一段落します。

あー、おもしろかった!!