部屋に入ると、外の空気とはまた違う、甘い香りの混じった温かい空間が2人を包んだ。
セイはセツナがテーブルにつく前に、自然な動作で声をかけた。
「セツナさん、お茶はいかがですか?」
「うん、いただこうかな」
「実は先ほどプリンも作っておきました。よろしければ一緒にどうぞ」
「え、セイが作ってくれたの?」
「はい、セツナさんが今日いらっしゃると思って、少し前に用意しておきました」
「わぁ、嬉しい。じゃあプリンと一緒にいただこうかな」
「お茶は何にされますか?」
「そうだな、プリンに合うものってなんだろう?」
「でしたらカモミールティーはいかがですか?」
「うん、じゃあそれをお願いしよっかな?」
「はい、ではさっそく入れてきますね」
テーブルにお茶とプリンを並べると、ルカがトコトコと近づいてきた。
「ルカも食べる?」
セツナが笑いながら冗談交じりに言うと、ルカは小さく鼻を鳴らした。
「プリンはダメだよ、ルカ。代わりにリンゴにしようか」
「リンゴ?たべるたべる!」
ルカは嬉しそうに体を揺らした。
セツナはルカを抱き上げ、ふわふわの毛に顔をうずめてギューっと抱きしめる。
「ルカ、かわいいねー。あったかくて気持ちいい」
その光景をセイは少し離れた位置から眺め、心の中で思った。
(ルカ、いいな、セツナさんに抱きしめてもらえて……)
そこでふと我に返る。
(……なんで僕、こんなこと考えてるんだ?)
少しルカにやきもちを焼いていることに気づきながらも、セイは自分に言い聞かせる。
(まあいい、先に用意しよう)
テーブルの前に戻り、セイが一声かける。
「どうぞ、セツナさん、召し上がってください」
「わー、いただきます。セイ、これとってもおいしいね」
「ありがとうございます」
セイは少し照れながらも、作った甲斐があったなと思った。
(第123話に続く)