それからしばらく、他愛のない会話を交わしていたが、やがてセツナがふと時計に目をやった。
「……あ、もうこんな時間か。そろそろ帰るね」
「……そうですか」
セイは一瞬だけ言葉を止めたあと、すぐにいつもの調子に戻る。
「本日は、ありがとうございました」
「ううん、こっちこそ。すごく楽しかった」
少しだけ間が空いてから、セツナは続けた。
「次はね、金曜日に来るつもりなんだ」
「……金曜日、ですか?」
予想していなかった言葉に、セイはわずかに目を見開く。
「うん。次の日休みだし、ゆっくりできそうだから」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に、静かな灯がともる。
「……はい。では、金曜日に。またお待ちしています」
「うん。またね、セイ」
「はい。また金曜日に」
玄関の扉が閉まる音が、やけに柔らかく響いた。
(第127話に続く)