実際にセツナを目にすると、待っている間に感じていた落ち着かなさが、いつの間にか消えうせ、どこかほっとしている自分にセイは気が付いた。
その時だった。
セツナが肩からコートを外す。
そして自然な動作でクローゼットへ向かった。
扉を開き、自分のスペースへコートを掛ける。
以前は置き場所に困っていた。
だからクローゼットを拡張した。
ただ、それだけのことだったはずだ。
だが彼女は迷いなくコートを掛ける。
まるで最初からそこにある場所のように。
視線が、ほんの一瞬だけその光景に留まる。
この家は、自分ひとりのためのものではない。
運営から与えられた共有拠点。
自分と彼女のための空間。
そう考えた瞬間、胸の奥がわずかに熱を帯びた。
「どうしたの?」
不意に声を掛けられ、セイは自然に視線を逸らす。
「いえ、何でもありません」
「?」
セツナは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに気にするのをやめた。
(第253話に続く)