夕方。
一通りの準備を終え、部屋を見渡す。
配置。
導線。
清掃状態。
不足はない。
そのはずなのに、視線は何度も室内を巡った。
椅子の位置を整える。
棚の上を軽く拭く。
使う予定の食器を確認する。
必要以上に整えている自覚はあった。
だが、止めはしなかった。
やがて日が落ちる。
窓の外は静かだった。
セイはキッチンへ視線を向ける。
下ごしらえを終えた食材。
冷蔵庫に並んだ材料。
焼き上がったクッキー。
明日の準備は、もう十分だった。
(……問題ない)
そう判断する。
それでも、なぜかもう1度だけ確認した。
確認し終えても、まだ時間が残っている。
だから本を開く。
数ページ読む。
だが内容はほとんど頭に入らなかった。
気づけば、意識は別の場所へ向かっている。
明日。
セツナが来る。
ただ、それだけのこと。
それだけのはずだった。
けれど。
胸の奥が、わずかに落ち着かなかった。
(第243話に続く)