セイは湯呑みを置いて、ふと時計に目をやった。
思ったより時間が経っていた。
(……こんなふうに、時間を忘れたことがあっただろうか)
そう考えると、この世界に来る前のことや、閉じ込められてからの日々が自然と浮かぶ。
いつもどこかで息を詰めていた気がする。
だが今は、その感覚が薄い。
肩の力が抜けている。
理由を考えかけて、ひとりの顔が浮かんだ。
セツナ。
なぜそこで彼女の顔が浮かんだのか分からない。
その理由を考えようとしたときだった。
「セイくん、あそぼ」
不意に聞こえたルカの声で、考えはそこで霧のように散る。
セイは視線をそちらへ向け、小さくうなずいて立ち上がった。
(第188話に続く)