セツナは、どこか気遣うようにセイの様子を見ていた。
そして、安心させるように軽く笑う。
「人も多かったし、歩きっぱなしだったしね」
「……そうかもしれません」
そう答えながらも、セイの胸には、まだ小さな違和感が残っていた。
けれど、ふと視線が窓の外へ向いた瞬間、通りの向こうに、先ほどのイルミネーションの光がちらりと見えた。
その途端。
胸の奥が、また小さくざわつく。
(……あ)
さっきほどではない。
でも、確かに同じ感覚。
セイは、カップを持つ手に少し力を入れた。
(……もしかして)
原因らしきものが、ぼんやりと輪郭を持ち始める。
確信はない。
ただ、光を見るたびに、身体が何かを思い出そうとしているような――そんな感覚。
「セイ?」
セツナの声に、はっとして視線を戻す。
「……いえ、大丈夫です」
言いながら、セイは窓際から少しだけ体をずらした。
視界から、光を外す。
すると、胸のざわつきは、すっと引いていった。
(……やっぱり)
心の中で、小さく呟く。
――原因は、あの光なのかもしれない。
セツナは、その様子を不思議そうに見ながらも、深く追及はしなかった。
(第170話に続く)