マーケットを抜けると、周囲の喧騒は少しずつ遠のいていった。
屋台の明かりや人の声が背後に溶け、通りは次第に落ち着いた雰囲気へと変わっていく。
石畳の道を進むにつれ、空気が一段と澄んで感じられた。
夕方から夜へと移り変わる境目の時間帯。
街灯がひとつ、またひとつと灯り始め、道の輪郭をやわらかく照らす。
「この辺り、昼とは全然違うね」
セツナが周囲を見回しながら言う。
「そうですね。夜になると、雰囲気が変わります」
セイはそう答えながら、歩幅を自然とセツナに合わせていた。
特別な会話をしているわけでもないのに、不思議と沈黙が心地いい。
(第162話に続く)