2人は人の流れに合わせるように、ゆっくりとマーケットの中へ足を踏み入れた。
通路の両側には屋台が並び、温かな灯りが冬の空気をやわらかく照らしている。
甘い匂いや香ばしい匂いが混ざり合い、辺りには楽しげな声が広がっていた。
セツナは周囲を見回しながら、小さく目を輝かせる。
「わぁ……なんか思ったより賑やかだね」
「はい。でも、まだ歩きやすい方だと思います」
セイが周囲を確認するように視線を巡らせる。
そのすぐ横で、セツナがふと前方を指差した。
「あ、見て。湯気出てる」
セツナが前方の屋台を指差す。
セイもそちらへ視線を向ける。
「……温かい飲み物もあるみたいですね」
「じゃあ、それにしようかな」
セツナは紙カップを受け取り、両手で包む。
じんわりと指先が温まり、身体の芯まで伝わってくる。
そのまま少し歩き、今度は軽食の屋台の前で足を止める。
「これ、半分こしない?」
「いいですね」
2人で分け合いながら、ゆっくりと歩く。
人はそれなりに多いが、押し合うほどではない。
雑貨の屋台には、手作りの小物や飾りが並んでいる。
買うほどではなくても、眺めているだけで楽しい。
「こういうの、見てるだけで時間が過ぎるね」
「はい。不思議ですね」
立ち止まり、また歩き、時々笑う。
特別なことは何もないのに、どこか満たされた時間だった。
(第160話に続く)