外に出ると、冬の澄んだ空気が頬に触れる。
吐く息は白く、空は高く静かだった。
歩き出してしばらくすると、セツナが隣で言う。
「まずはマーケットだね」
「はい。ここから少し歩いたところです」
セイは端末をしまい、前を見据える。
土曜日とはいえ、まだ昼前だ。
人は多いだろうが、混雑のピークには少し早い。
そのことが、セイの中で小さな安心につながっていた。
並んで歩く足音が、静かな通りに重なる。
店先には、冬仕様の飾りつけが増えていた。
白い灯りや、小さなリース。
ガラス越しの暖かな色が、通りをやわらかく彩っている。
セツナはふと立ち止まり、ショーウィンドウを眺めた。
「なんか、この辺り歩いてるだけでも楽しいね」
「……そうですね」
セイも足を止め、同じ方向へ視線を向ける。
何をするわけでもない。
ただ並んで歩いているだけなのに、不思議と時間が穏やかに流れていく。
少し進むにつれて、人通りが増え始める。
遠くから、賑やかな話し声や、焼き物の音が微かに聞こえてきた。
「……そろそろですね」
セイが前方へ視線を向ける。
通りの先には、屋台の灯りが並び始めていた。
甘く香ばしい匂いが、風に乗って流れてくる。
「わ、いい匂い」
セツナが小さく笑う。
2人は自然と歩幅を少しだけ早めた。
(第159話に続く)