セツナが帰る支度を整えるわずかな物音さえ、今のセイには酷く遠く感じられた。
玄関へと向かう足取りを止めて、セツナは名残惜しそうに振り返る。
「でも……しばらくセイとは会えなくなると思うと、ちょっと寂しいな」
「……僕もです」
セイは視線を落としながら、消え入りそうな声でそう答えた。
そんなセイの様子に、セツナは安心させるようにそっと微笑み、言葉を添えた。
「その代わり、次の土日はこっちでゆっくりするつもりだから」
その言葉を聞いた瞬間、セイは弾かれたようにパッと顔を上げた。
「えっ、そうなんですか。それは……嬉しいです」
驚きと共にこぼれたその返事には、先ほどまでの沈んだ気配はどこにもなかった。
「ふふっ。じゃあ、今日はこれで。またね、セイ」
「はい。セツナさん、しばらくお会いできませんが……お元気で」
その言葉を最後に、セツナは名残惜しそうに、けれど足取り軽くゆっくりと帰っていった。
(第99話に続く)