その夜。
セイは部屋に戻り、静かに息を吐いた。
昼間の雪の気配が、まだほんの少し残っているように感じる。
瞼を閉じると、あの雪だるまの丸い形や、すぐ隣にいたセツナの笑い声が、ふと耳の奥に蘇る。
(……今日は、よく動いたな)
自分としては珍しいくらい、外に出て、作業をして、話した。
それでも疲れは悪くなく、むしろ静かに落ち着いている。
報酬のスノーフレーク・チャームを手に取る。
小さいけれど、しっかりとした重みがある。
クエストの報酬というだけなのに、なぜか宝物のように丁寧に扱いたくなる。
セイはそっと操作端末を開き、今日撮ったばかりの保存データを確認した。
画面に映し出されたのは、真っ白な雪だるまと、その隣に並ぶ2人。
(……近すぎた、だろうか)
自撮りした際、肩が触れそうなほど近くにいた彼女の熱を思い出し、胸の奥がまた小さく跳ねる。
固まった表情の自分と、眩しいほどに笑うセツナ。
客観的に見れば、ただの2ショット写真だ。
けれど、セイにとっては、この世界に自分が「誰かと一緒に在る」ということを証明する、何よりも確かな記録のように思えた。
(また3日後……か)
その言葉を思い出すだけで、胸の内側がほんのり温かくなる。
期待とも、安心とも言い切れない。
ただ、次の約束があるという事実が、今の自分を静かに支えていた。
布団に入り、照明を落とす。
暗くなると、雪の白さと、画面越しに見つめた彼女の笑顔が、まぶたの裏でぼんやりと浮かぶ。
(……いい1日だったな)
言葉にすると、それだけのこと。
でも、その「それだけ」が、今の自分には十分すぎるほど幸せだった。
胸に残る温かさを感じながら、セイはゆっくりと目を閉じ、静かに眠りへ落ちていった。
(第83話に続く)