3日間、特別なことは起こらなかった。
だが、いつも通りの生活はある。
朝、いつもの時間に目が覚める。
着替えて顔を洗い、簡単な朝食を用意する。
湯気の立つカップを手に取り、窓の外を1度だけ眺めてから席についた。
その一連の流れは、これまでと何も変わらないはずだった。
食事を終え、カップを流しに置いたところで、ふと、『幸せの種』のことを思い出す。
昨日、彼女と2人で土に埋めたばかりのものだ。
芽が出るには、まだ早い。
それは分かっている。
それでも、1度見ておこうと思った。
庭へ出る。
そこには、目に見える変化は何もない。
土があり、そして「何もないのに、確かに在る」という感覚だけが残っている場所。
セイはしゃがみ込み、少しだけ土の様子を確かめる。
乾きすぎているわけでもなく、湿りすぎてもいない。
それを確認すると、それ以上は何もしなかった。
部屋に戻り、身なりを整える。
そして、拠点の中で静かに過ごす。
誰かを迎える前提がない生活は、無駄がなく、取り立てて不便もない。
服は脱いだ場所に置き、使った物は、その辺に戻す。
1人なら、それで十分だった。
けれど、時々ふと、意識の端をかすめるものがある。
(次は……3日後か)
彼女が来る時間を、「予定」としてではなく、「前提」として思い出している自分に気づく。
だからといって、何かを準備するわけでもない。
それが自分らしい、とも思っていた。
そうして思いつくままに1日を過ごし、夜、ベッドに入り、セイはそっと目を閉じた。
(第56話に続く)