「セイ!来たよ!」
聞き慣れた声と同時に、セツナの姿が視界に現れた。
「あっ、セツナさん。今日も、来てくれて嬉しいです」
セイは一瞬だけ間を置いて、続ける。
「……ところで、今日はどうしましょうか?」
「そうだね。じゃあ、今日も広場に行ってみようか」
「はい。そうしましょう」
2人は並んで歩き、いつもの広場へ向かった。
人の往来は相変わらず多く、談笑するプレイヤーとNPCの声が、穏やかに混じり合っている。
その一角で、セツナがふと足を止めた。
「ねえ、セイ」
「はい?」
「この前やったクエストボード、また見てみない?」
セツナが指差した先には、日常系クエスト用の簡易ボードが設置されている。
「短時間で終わるやつ、結構増えてるんじゃないかなって」
「……確認してみます」
セイは表示を読み取り、数秒ほど視線を走らせた。
「……これは、少し変わっていますね」
「え、どれ?」
セイが一つの表示を示す。
《簡易クエスト:消えた〇〇を探せ》
《形式:連想型》
《報酬:マネー+特殊アイテム〈幸せの種〉》
「……消えた、〇〇?なにそれ〇〇って伏字?」
「どうやら、そのようです」
セツナは首を傾げながら画面を覗き込む。
「探すものが書いてないって、どういうこと?」
「ヒントを頼りに、答えを導く形式のようですね」
「へえ……なんか、面白そうじゃない?」
「はい。内容自体も、日常系に分類されています」
「しかも報酬が『幸せの種』って、なんか良くない?」
「幸せの種、ですか」
「うん。なんていうか……本当に幸せを育ててる気分になりそうでさ」
セイは少し考えるようにしてから、静かに言った。
「なるほど。物そのものより、そこに残る意味を大切にする……セツナさんらしい選択ですね」
「そう?」
「はい……僕の価値観とも、近い気がします」
「だったらさ、このクエスト、一緒にやってみようよ」
「はい。セツナさんさえよろしければ」
「決まりだね。じゃあ、最初のチェックポイントに行ってみようか」
「はい、そうしましょう」
2人はクエストを受注し、人の流れから少し外れた、広場の隅へと移動した。
(第17話に続く)