―――しばらくして、ふたりは手掛かりを探すため広場を歩き始めた。
「情報、集まるといいんだけどね。まあミズキ任せになっちゃう前に、私たちも聞ける範囲で聞いてみよっか」
そう言ってプレイヤーやNPCに声をかけて回るものの、ログアウト不具合に関する手がかりはまったく掴めなかった。
ただ、その中でセツナはひとつだけ気になる噂を耳にした。
「ねぇセイ。なんかさ、このゲーム、大規模サーバー移行するって噂、聞いた?」
「サーバー……移行ですか?」
「うん。ほんとに“噂レベル”なんだけどさ。最近ユーザー増えてるから、容量パンクしそうで増設するんじゃないかって」
「なるほど……それなら普通の話ですね……」
「でしょ? だからまあ気にしなくていいとは思うんだけど……でも、なんか引っかかるよね」
ふたりが話していると、ミズキが駆け足で戻ってきた。
「お待たせ!調べてきたよ!」
「どうだった?何かわかった?」
ミズキは息を整えて話し始める。
「結論から言うと“確定情報はなし”。ただね、1つだけ気になる話はあったよ」
「気になる話?」
「このゲームの出資者、スポンサーっているでしょ?そのスポンサーがさ、一部のアカウントに何かしらの干渉をしてるとかしてないとか、そんな噂が出回ってるみたい」
「干渉……?」
「うん。でもほんとに“噂”。何をしてるかも曖昧だし、だれの話かすら分からない。断定なんて全然できないレベルだよ。ただ、そういう話だけはちらほら聞こえたって感じ」
セツナとセイは顔を見合わせた。
重い空気になりかけたところで、ミズキが思い出したように声を上げる。
「あ、そうそう。ついでに面白い話も聞いたよ!」
「面白い話?」
「“特別な人”って設定あるでしょ?」
「あるね。でも使ってる人ほとんど見たことないけど」
「でしょ?あれ、デメリット多いから普通はスルーされるんだけど、実はね。あれって、特別イベント発生率めっちゃ上がるらしいよ。ポイント貯めると色々できるとかなんとか」
「へぇ。そんなシステム、知らなかった」
「まあ私は拘束されんの嫌だから使わないけどね〜!」
冗談めかして笑ったあと、ミズキは手を振る。
「今日はこのくらいかな!また何かわかったら連絡するね!」
「うん、ありがとう」
ミズキが去り、再び静けさが戻る。
セツナは小さく息をつく。
「情報は増えたけど、解決にはまだ遠いね」
「はい……ですが、進展はしています」
ふたりの“距離”も、ほんの少しだけ。
そうしてこの日は静かに終わって行った。
(第9話に続く)