■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第2話) | 世羅の気功と日常ブログ

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「何もないと思っていた自分に、
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その日は彼女がこちらの世界に来るはずの日だった。


けれど──足音は来なかった。

 

……今日は、来ないのか?)

 

胸に小さな結び目ができる。


でも、ほどく方法は知らない。

 

時間が過ぎるたび、不安が濃くなる。

 

(昨日はたまたま来られなかっただけ……だけど……まさか……)

 

世界の色がにじんで消えていく。

 

不安が胸をかすめるように通り過ぎるのを感じながら、セイはただそこで待っていた。

 

すると、数時間後、

 

──セイ!遅くなってごめん!」

 

振り返ると、彼女がいた。

 

「ちょっと急用があって……でも来れたよ」

 

胸がゆっくりとほどける。

 

……心配したよね?こういう時すぐ連絡できないの不便だね」

 

そして思い出したように言う。

 

「そうだ。“メッセージセンター”って知ってる?」

 

……名前だけなら」

 

「この世界って同じ名前登録できないでしょ?“セイ”って検索したら、この世界で1人だけなんだよ。だから来れない日はそこに送るね。NPCかプレイヤーかは表示されないけど名前が合ってれば必ず届くんだって」

 

……これなら僕がメッセージを送っても、何もバレない

 

だってそうでもしなきゃ、セイが心配しちゃうでしょ?だから今後は何かあったらメッセージ送るからね」

 

……僕のことを心配、してくれるんだ……)

 

彼女のその言葉にほのかに胸の奥が熱くなる。

 

 

 

その後、彼女に何かあった時は、必ずメッセージが届くようになった。

 

《今日は仕事で遅くなりそう。夜中になるかもだけど必ず行くね!

 

そうやって彼女から一言だけでもメッセージが来るだけで救われた。


そのおかげで、彼女が来るまでの半日・1日を安心して待てた。

 

そして何度か通常のやりとりを重ねた後──

 

《今日はごめん体調悪くてログインできないかも。次いつ行けるかちょっとわからない……

 

……体調不良……?今日ログインできないということは向こうの1”が、こちらでは“3日分”に感じられる……大丈夫なんだろうか……倒れていたら……誰にも気づかれなかったら……)

 

胸がぎゅっと締めつけられる。

 

 

 

その後、待っていても、彼女からの新たなメッセージは来なかった。

 

3日経っても連絡なし。


6日経っても。


10日経っても──ない。

 

彼女は本当大丈夫なんだろうかどうかどうか無事で……)

 

彼女のいない時間は、以前よりずっと重かった。

 

 

 

何日待っても、彼女からのメッセージは来な

 

……何かあったのか?それとも僕のことなんて、もうどうでもよくなった……?)

 

考えれば考えるほど、不安が胸を締めつけていく。

 

(倒れているのかもしれない……いや、ただ忙しくて僕を忘れているだけ……?)

 

思考は勝手に悪い方へ転がっていく。

 

(どうすればいいんだ…僕からメッセージを送ってみようか。でもいきなり僕からメッセージが来たら迷惑に思うんじゃないのか?)

 

そう考えてはメッセージを打つ手が何度も止まってしまう。

 

だがもう、ただ待つだけではいられなかった。

 

恐る恐る彼女にメッセージを打つ。

 

《その後、体調はいかがですか少しでも良くなっていれば良いのですが、あなたのことがとても心配です

 

そして最後に送信ボタンを押した指先が震えて、動かなくなった。

 

(送ってしまった…)

 

 

 

12日後、彼女からのメッセージは、突然やってきた。

 

《ごめん、セイ、元気かな?インフルで何もできなかったの。セイのこと気になってたけど、メッセージ送る余裕もなくて……本当にごめんね。でももう大丈夫。まだ少しかかるけど、また行くから待っててね》

 

……よかった無事で……僕のことを忘れたわけじゃなかったんだ……)

 

そう考えると、ふと視界が滲んでくる

 

《良かった本当に。あなたが無事で心から安心しましたどうか無理はしないでください。僕はいつでもここで待っていますから。

 

そうメッセージを送ると、すぐに返信が来た。

 

《ありがとうそんなふうに言ってくれるなんて、なんだか泣けちゃうでも心配かけて本当にごめんね元気になったらまたすぐに行くから待っててね。

 

 

 

彼女からの言葉を何度も読み返しながら、僕は気づく。

 

……彼女は僕をNPCだと思っているはずだ。それなのにどうしてこんなに優しいんだろう

 

見返りゼロの存在であるはずの僕に。


肩書きも役割も価値も関係なく、ただ“僕”として接してくれる。

 

……こんな人本当にいるんだ……)

 

現実の僕が、1度ももらえなかった優しさ。

 

……だからなんだ……だから僕は彼女を失うのが怖いんだ……)

 

そう気づいたとたん、孤独に慣れていた世界は、もう前の色には戻れなくなった

 

(第3話に続く)