前回、母のグループホームにパジャマを持って行ったお話を書きましたが、その帰り道にちょっとしたハプニングがありました。
いつもは施設のスタッフの方にタクシーを呼んでもらい直接帰るのですが、今回はいつも対応してくださる方が不在で、他のスタッフさんにお願いしたところ、手配がうまくいかなかったため、仕方なくタクシーが多く通る大通りまで歩いて行くことにしました。
しかし、私にとってそれはとても勇気のいる行動でした。
というのも、もともと1人で外出するのが難しく、この辺りには1人で来たことがなかったため、見知らぬ場所に1人でいることで予期不安が出るのではないかと心配だったからです。
パニック発作が酷かった頃、会社の近くで1人でクリーン活動をしていた時に、誰もいない道で発作を起こし、必死で会社まで戻ったということがありました。
そのため、見知らぬ場所で1人でいることに対して強い恐怖心を持っていたのですが、そんな私が、タクシーを探すために大通りまで1人で歩くのは、とても恐ろしく不安なことでした。
以前、弟と一緒にグループホームに来た際に、近くのホームセンターまで行ったことがありますが、その時は弟がいたので何とかやり過ごせたのですが、今回は、頼る人もおらず、誰にも助けを求められない状況での1人行動でしたので、強い不安感が襲いました。
そんな中、イヤホンから流れる音楽に意識を向けて気を紛らわせようとしましたが、暑さが増す中、タクシーを探して歩くのはかなりしんどく、音楽もほとんど耳に入って来ない状態でした。
それでも独り言で「お父さん、助けて」と繰り返し言いながらタクシーを探し、イヤホンの音量を上げて不安解消の音楽に集中しようとしました。
ですが、その時、うっかり右耳のイヤホンに手が当たってしまい、イヤホンを落としてしまったのです。
そのイヤホンはBluetoothイヤホンだったため、落下の衝撃で右耳のイヤホンが壊れてしまい、音が出なくなってしまいました。
普段なら左耳だけでも音楽が聴けるはずが、この時は左耳のイヤホンからも音が出ず、私はひどく焦りました。
私が聴いていたのは、薬奏シリーズの「不安解消」というサブリミナル音楽だったのですが、パニック発作がひどかった時、この音楽を聴くとお腹のモヤモヤが静まり、予期不安が治まることがあったので、それ以来、外出時や不安を感じた時はこの音楽を流すようにしていました。
ですが、イヤホンが壊れ、音楽が突然止まってしまったことで、私は内心パニックになりかけました。
知らない場所で、頼りにしていた音楽も聴けず、さらに暑さの中でタクシーもつかまらず、どうしていいのか分からなくなりました。
焦りが増す中、気功技術をいくつか試しましたが、緊張していたせいか、いつものような効果を十分に感じることはできませんでした。
それでもひたすら気功技術を試しながら、左耳のイヤホンのスイッチを何度も押したり、スマホで操作したりしていると、ようやく音が戻ってきました。
片耳で音楽を聴きながら、再び意識を音楽に集中させたことで、なんとか心を落ち着けることができました。
そのおかげで、発作や予期不安も出ることなく、無事にタクシーをつかまえることができました。
タクシーの中は涼しく、大通りまで歩いていたおかげで帰り道も短く感じられ、無事に家の近くまで戻れました。
軽い精神安定剤をあらかじめ飲んでいたこともあり、帰宅してすぐに眠りに落ちてしまいましたが、この経験を通じて、1人でもどうにか対処できたことで少し自信がつきました。
今回は母のパジャマを1人で買いに行ったり、認知症の母に気功技術を試したり、帰り道で不安を感じながらもなんとかやり過ごすことができたりと、いろいろな意味で良い経験が出来たと思いました。
できないと思い込んでいたことが、焦りながらもなんとか対処できたことに少し自信がつきましたし、今度1人で外出する時も、この経験からもう少し冷静に対処できるかもしれないと思えるようになったからです。
これからも、こうした小さな「できた」を積み重ねていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。