邦楽の変容を試みた楽聖宮城道雄と Kiina の軌跡

元旦早々の地震の被害状況をTVで見聞きしながらの正月３日目です．

このたびの地震で被害にあわれた方の人数が日ごとに増え、家屋の損害も激しく、また、断水など、ライフラインが閉ざされた地域があることを知り、お辛い思いをしておられる方が多いと思います．

一日も早い復旧と　安心できる環境に戻れることを願っております．

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お正月らしい話題をすこし・・・

お正月と言えば、聴こえてくるのは　筝曲「春の海」．

2022年発売の「群青の弦」でうたわれた、宮城道雄先生の作品です．

「群青の弦」を最初に聴いたのは　2021年末の「きよしこの夜」でしたが、壮大なテーマと斬新な曲調で、これを歌いこなせる人は本当に限られるだろうな、と思いました．

「群青の弦」でうたわれた宮城道雄先生は1894年（明治27年）に生誕、4歳で実母と生別し、8歳で失明した筝曲家、教育者．

明治時代まで続いた、音楽を司る「検校」という官職の、中でも「大検校」となられた方で、作曲だけではなく、楽器の開発、教育者として多岐に活躍されました．

代表曲の「春の海」は箏と尺八で構成され、1930年（昭和5年）に初披露されました．ですから、昭和になってから作られた曲なのです．

お恥ずかしながら　私は邦楽に（も）暗いため、この曲も邦楽であることくらいしか知らなかったのですが、まず箏と尺八で構成されたというだけで画期的だったそうです（従来は三味線が加わる）．

宮城先生は実は洋楽にも精通しておられて、クラシックを聴き、ラヴェルやドビュッシー、ストラヴィンスキーがお好きだったとか．

ほかにも、西洋音楽と同じようにハーモニーをもっていたことなども邦楽の様式とは異なるものでした．

そのような理由から「春の海」には賛否両論がおこったらしいですが、宮城先生がこのような試みを行ったのは、明治以降急速に日本に浸透する西洋音楽に押される中で、邦楽を残すためでありました．

西洋音楽の「ハーモニー」は取り入れたものの、「リズム」は取り入れなかったため、「春の海」を聴いて、洋楽と思う方はいないでしょう．ここに大きな工夫、つまり「変容」をみることができます．

そのようなことを知らなくとも、実際「春の海」は素晴らしい曲で、伝統的ですが、古めかしいとは思いません．だから、毎年この曲が蘇るのでしょう．この旋律はすぐに耳に馴染み、また離れません．また日本人に限らず、フランス人バイオリニストのルネ・シュメーにも愛され、共演を果たしています．

以前、五木寛之先生が「演歌」が残るためには、変容が必要だということを述べておられたことを思い出しました．

邦楽を西洋音楽に変えることではなく、邦楽を残すために西洋音楽の要素を取り入れた変容．これができるのも、西洋音楽に通じていたからのことだと思われ、幅広い分野に精通することの重要性を教えてくれます．そしてまた、このような形で、西洋音楽と邦楽の「垣根」を超えようとされたのでしょう．

宮城先生については、知れば知るほど、偉大な業績が多く、驚きました．

そして、 🔑（Kiina）と同じように思えてきたのは私だけでしょうか？

残念ながら、宮城先生は1956年（昭和31年）、62歳の時に事故で亡くなります．

東海道線にある現「JR刈谷駅」まで500mという地点で電車から転落されたそうです．

今とは違い、バリアフリーではなかった時代ですから、失明されていることが災いしたのでしょう．

反対側の線路を走っていた貨物列車の運転手に線路上に横たわる姿を発見され、現在の刈谷豊田総合病院へ搬送されたそうですが、やがて息を引き取ります．

その死を悼み、ＪＲ刈谷駅から徒歩10分の距離に供養塔があります．

写真は私が2022年初頭に訪れた時で、その後も何度か足を運びましたが、いつからかロープが張られ、立ち入りができないようになっています（見ることはできます）．

「楽聖宮城道雄先生供養塔」とあり、碑文のひとつが点字でありました．

最初に訪れてから半年後の2022年7月のある日、新歌舞伎座の🔑の舞台公演に向かう車中で、向かい座席に座った方のバッグにこの文字を見つけ、写真に撮らせていただきました．「宮城道雄記念館」・・・神楽坂にあるこちらにも機会があれば行ってみたいです．

下記を参考にさせていただきました．

「宮城道雄の著作にみる音楽観」　千葉優子

邦楽の変容を試みた 楽聖 宮城道雄 と Kiina の軌跡