五木寛之 先生、と言えば、私の世代では 誰もがその名前を知るトップクラスの著名人。作家の世界を富士山に喩えれば、頂上近くの、雲で覆われて 結局お姿は見えないようなところにおられる方だと思う。

精力的に創作され、話題作を連発し、次々に映像化された。

そして五木作品に出演するなり 俳優さんたちも 一気にスターダムにのし上がる・・・成功が約束されたようなものだった。

 

今でも憶えているのは、40年以上前、TVの歌謡番組「ザ・ベストテン」に出演した歌手の 高田みづえ ちゃんが、曲を披露する前のトークで、五木先生の本を愛読している、と言っていたこと。

司会の 久米宏 さんや 黒柳徹子 さんがその会話のあと、「それでは これは番組からプレゼントです!」と五木先生の全集が現れた。

途端、いつも優等生のようだった みづえ ちゃんの顔が ぱっとかがやき「ほんとう? ほんとうに?」と、ほころんだ。

アイドルだった みづえ ちゃんは超多忙の日々を送っていたと思うが、寸暇を惜しんで読んでいたのだと思うと、五木作品がいかに多くの人々、そして幅広い人々に受け入れられ、支持されてきたかがわかる。

 

数回断筆宣言をされたように思うが 再開され、近年でもシリーズ物も手掛けられ・・・その創作量には驚くばかりだ。

 

五木先生の作品が多く映画化されていることは先述したが、歌詞の提供も多く、たくさんのヒット曲が生まれている。日本の音楽界とは切り離せない存在だと思う。

松坂慶子さんの「愛の水中花」も大ヒットしたし、「五木ひろし」さんの名前も 五木寛之 先生に肖る、と聞いたことがある。


その 五木先生 が 2019年に「限界突破×サバイバー」を歌うKiina を観た時のコラムがある。(「週刊新潮」2019年6月6日号.五木寛之「生きぬくヒント」連載250回「氷川きよしの自己革命」)

・・・この中で 五木先生は 「氷川きよし」と演歌の在り方について的確に述べておらていて はじめてこれを読んだとき、その鋭さに今更のように驚いた。コラムのタイトルが「生き抜くヒント!」であるからには、五木先生は Kiina の姿に人間が人間として生きる上で必要な なんらかのインスピレーションを得た、ということである。

 

・・・数日前、私は ヤマザキ マリ 先生がご登壇する講演会「越境という名の文化」について触れ、Kiina の「越境」について述べたが(ヤマザキマリ先生がご登壇する講演会「越境という名の文化」の開催に Kiina を思う)、五木先生はそれを「自己革命」そして「進化」ととらえられた。

たしかに Kiina の「限界突破」は「越境」というより「revolution」や「evolution」に近い気がする。

コラムの文中にも記載されているが、「Papillon」のMVのように、蛹が脱皮して新しい生命体が生まれるような感じ・・・

そう考えると、このたびの休養期間も、「進化」の途上、やむを得ない、とても大切な期間、という気がしてくる・・・

久々に読み返して、あせらず、ゆっくり待ちましょう、という気になった。

 

ところで、2019年6月に掲載されたこのコラムは、最後に五木先生の強い希望が記されて終わる。それは、魔界の黒い天使が再臨するような氷川きよしの「限界突破×サバイバー」を年末の紅白で聴きたい、というもの。

・・・この年、2019年のNHK紅白で「限界突破×サバイバー」が紅白では初めて披露され、大きな話題となったわけだが、その熱唱を 五木先生はどのような思いで観ておられただろうか・・・

できれば その感想も読みたかったな、と思う!