・・・ニューオータニ博多でのラスト・ディナーショーについて述べたが、20年以上前に読んだ、高倉健さんについて書かれた、朝日新聞「天声人語」を思い出した。

 

 それは1999年頃の 浅田次郎さんの直木賞受賞作『鉄道員(ぽっぽや)』の映画ロケのあとに、映画監督の降旗康男監督が母校の後輩たちに『鉄道員』を見せに行った、ルポについてだった。試写会のあと、主演の高倉健さんが駆けつけ、在校生の質問を受け付ける。映画の『鉄道員(ぽっぽや)』にちなんで「仕事一途」が話題になった。

 すると、生徒から、今、父親の世代でリストラが横行し、ずっと働いてきた人たちが簡単に切り捨てられている、自分は社会に出たらやりたいことを全うし、悔いの残らぬ社会人人生を送りたいと思うのだが、という意見が出る。それに応じた、高倉さんは、「悔いの残らないよう、一生懸命走っていってほしい」と、励ました後、がらりと口調を変え「そんなに仕事って・・・」と、楽しいことでも、思い通りにうまくいくことでもないということを口にする。ほんとうに一生懸命やったあとで「ああ生きてるの悪くねえな」という瞬間が一瞬だけある程度だ、と。 

 

 NHKの朝のニュース番組中の放映であったため、私は出勤の準備をしていたのだが、予想外の健さんの言葉に思わず画面に見入ってしまった。高校生を相手に本音で向き合う「高倉健」と、そこから見える「人となり」・・・なにかとても得難いものを間近に見ている気になった。

 そして、放映から数日後、朝日新聞「天声人語」でこの記事を見つけた時、この著者も私と同じような思いを抱き、それをとどめておきたくて記事にしたのだと思った。

 

ディナーショーでのKiinaの発言と共通しているのは、年配者としての助言でありながら、高校生と同じ目線で、そして本音で話した、というところである。

健さんのニュースを見た時、こういう大人がまだ世の中にいることがうれしかった。他人の目を気にせず、本音で本心を語ってくれる人・・・そういう人がまだいることがうれしい。

 

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さてこの内容を「九州にて…その3」と、「九州」を含めることは クレームがつきそうですが、それにしました。

健さんの郷里は「福岡県中間市」だったからです。