博多座公演から数か月後の昨年10月、ホテルニューオータニ博多でのディナーショーでふたたび博多に足を踏み入れた・・・。

 

   

 

会場は満席状態。和気あいあいとした空気が流れ、始まる前からどことなく盛り上がっていた。

「さすが、地元 !! 熱気がすごい!」と思いながら見渡すと、中に数人の制服姿・・・。ディナーショーには何度か足を運んでいたが、制服姿は見たことがなかったから「関係者かな?」と思った。案の定、ショーの間に彼女たちの紹介があった。高校か中学かの後輩にあたる学生さんたち。そして、歌手を目指しているという。

 

「・・・この世界は夢があって、素晴らしい仕事、応援するから頑張って!」

・・・TV番組ではこういう時、このような言葉とともに、たいがいが後輩を励まして終わる。・・・てっきり Kiina の口からもこの言葉が出ると思っていたのだが、予想外の言葉が返ってきた。

 

「簡単なことじゃないからよく考えて。実力、努力、この世界はそれだけはないから・・・。華やかで、楽しそうに見えるかもしれないけど、それは表面の一部分。実際にこの場に立つとまったく違うから。成功するのは、本当に、本当にひとにぎり・・・たいへんな仕事だから、よく、本当によく考えて、後悔しないように将来を定めて・・・」

 

・・・「氷川きよし」にしろ「Kiina」にしろ、いつもハッピーでポジティブなイメージがある。もちろん、それは表面の顔で、実際には芸能界の競争社会の中、さまざまな苦悩と葛藤を抱えていることは誰しも想像がつく。トップを走り続けることがどんなに大変なことか・・・と、司会の西寄ひがしさんもいつも言っている・・・だが、ステージの上でそれを感じさせることはなく、常に前向きに物事をとらえる人だと思っていた。

しかし、その日、Kiina は後輩たちを前にして、芸能界の厳しさを隠さなかった。

 

これから芸能界を目指したいという後輩たちに対して、手放しで応援しなかった Kiina を周囲はどう思うだろうか?

これから羽ばたこうとする若者の夢を潰した、と、非難するだろうか?

・・・私はそうは思わなかった。むしろ反対である。

人一倍頑張り、頂点に上りつめた人だからこそ、後輩たちに本当のことを伝えたかったのだと思う。厳しい日本の芸能界で生きていく、綱渡りのような危うさ、辛さを語ることで、人生を見誤ることなく送って欲しかったのだと思う・・・年配者としての深い愛情とやさしさに裏打ちされた、これらの言葉を、あの学生さんたちはどう受け止めただろうか。

 

そして、そのとき、ステージにいたのは、「氷川きよし」でも「Kiina」ともすこし違う・・・そう、本名の「山田清志」という人だったように思えている。

今までみたことがなかった、その人・・・その「本気」の対応に私はドキドキした。

 

本当の「氷川きよし」、本当の「Kiina」・・・それが垣間見えた一瞬・・・

休養前最後の、郷里博多で開催されたディナーショーでのことだった。

 

     

 

 

★その3はこちら ↓★