人類の自殺65 避難10 | ヒロシマときどき放送部

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2016年広島で高校の教員を定年退職し現在は山奥のお寺の住職をしています。ヒロシマのこと、放送部顧問をしてきたことを書いてみます。

現代の広島市中心部

 広島駅前の地下広場のようなところを改修して防爆扉と気密扉を設置し、水や食料などを備蓄した公共の核シェルターにしたらどうなるかと考えてみたが、いつ扉を閉めるのか、いつまで避難生活に耐えられるかなど難しい問題がある。また、シェルターに収容できる人数が限られるのも大きな問題だ。

 広島市が2022年につくった災害時の安全確保計画によると、広島駅とその周辺に、時間帯によっては6万人も訪れていて、そんな時にもし大地震が起きたら帰宅困難者が約8500人出ると見込んでいる。しかしホテルなどの受け入れ可能人数は3430人。そして備蓄してある飲料水は2420人分、食料は910人分しかない。(広島都心地域都市再生緊急整備協議会「広島都心地域都市再生安全確保計画」2022)

 現状では地震など自然災害における帰宅困難者の対策は、できるだけ勤務先の会社に留まり、会社が飲料水や非常食、毛布などを用意しておくことぐらいしかないようだ。そうなると、突然核アラートが鳴って全員地下で避難生活を送るとなれば、駅前地下広場に8500人は無理。6万人なんてとんでもない。それこそ市内に大きな地下都市を建設するぐらいでないと、とても収容できないだろう。

 設備の整った核シェルターなど私たち庶民は諦めるべきなのかもしれない。例えば学校。今の校舎や体育館などは核攻撃に全く無防備だが、では限られた時間でどこに避難できるかといえば、どこにもない。校舎の地下に生徒全員が寝泊まりできるシェルターを市内すべての学校に設置しようとしたら、どれくらいの期間と費用が必要だろうか。マンションにしても同じこと。

 日本核シェルター協会の資料によれば韓国ソウル市の核シェルター普及率は323.2%だとか。しかし2023年8月24日付の「朝鮮日報」のコラムは、「韓国国内の1万7000カ所以上が備えられている-とはいうが、どこにあるのかすら知らない人は多く、きちんと機能し得ないところが無数にある」と指摘し、2022年11月12日付のAFP通信はこう伝えている。

 

 韓国では1970年代、主要都市にある一定の大きさ以上の建物に、地下室の設置を義務付ける法律ができた。有事の際に防空壕として使うためだ。

 だがソウルでは地価が高騰し、民間の建物の大半ではこうした地下室は駐車場や、アカデミー賞(Academy Awards)受賞映画『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』で有名になった半地下住宅に転用されている。(AFPBB News 2022.11.12)

 

 どうも韓国では地下鉄駅やトンネル、ビルの地下室、地下駐車場などを片っ端から市民の避難施設として登録しているみたいだ。それを核シェルターだとはとても言えないが、日本でも、できてそれぐらいではなかろうか。

 もちろん大金持ちであれば自前の核シェルターを作れるのだろう。妄想すれば、何も市内中心部でなくていい、飛行場とかミサイル基地とかレーダーサイトとか、軍事的に重要な施設からはるか遠く離れた場所に外界と遮断された秘密の村をつくるのだ。食料、燃料の自給自足が可能で、ガードマンが24時間警備、リモートワークしながらレジャーが楽しめる…。アメリカにはそんなのがあるそうだが、作ろうとしたら宝くじの1等が当たっても足りないのじゃなかろうか。