児童手当の改正法が成立しました。
これで、24年度の手当ての内容が固まり、また恒久的な法律となり、今後もこの制度で行くということが明確になりました。
平成22年度の子ども手当の立案をしていた身としては、妙な感慨があります。
法律を作る過程という観点から見たときの子ども手当の特徴は以下の3つです。
① マニュフェストで制度設計の大枠が最初から固まっていた。
② 政治的に非常に注目される法律だった。
③ 22年4月、23年4月、23年10月、24年4月と頻繁に制度改正が行われた。
①について
法律の作る過程も色んなパターンがありますが、
僕が関わった5本の法律の中でも、この法案は特殊な過程をたどりました。
21年9月の政権交代前の総選挙のマニュフェストにかかげた目玉政策だったからです。
通常、法律を作る際には、複雑な調整過程を経ます。
詳しくは、過去記事「法律の作り方」をご覧ください。
↓
http://ameblo.jp/senshoyasuhiro/entry-11173825864.html
子ども手当の場合は、このような調整過程をかなり飛ばすことになりました。
おおまかな制度設計とそれを決定することが既定方針だったからです。
他省庁との折衝も最短距離でしたし、当時は法案を提出する前に与党の了解も不要でした。
(今は、与党の了承を得てから法案を国会に提出します。自民党政権下もそうです。)
法律の中の僕が作ったあるパッケージは、総理がやると決定したため1週間で条文ができあがりました。
おそらく、後にも先にも作る制度内容が固まってから、1週間で条文ができあがるというのはないでしょう。
12月27日に、子ども手当のチームに入って、年末年始はひたすら勉強して条文のたたき台を自分なりに作って、年があけてカウンターパートの省庁も出勤したので、条文を持って行って議論を重ねました。
僕の記憶によると1月上旬には、内閣法制局との調整、官邸や省内の了承もとりつけて、実質的に固まったと思います。
他省庁との折衝の際も、総理の指示事項ですから、カウンターパートも最大限協力してくれて、
一緒に知恵を絞ってくれました。
いつも思いますが、こうやって自分と違う知見のある人と一緒に法律を作れることは、いいものを作るためには必須です。
政治主導のよいところなのだろうと思います。
②について
かなり連日報道され、当時としてはかなり無茶もありましたが、
児童手当が歴史的に抱えていた課題を解決することにつながりました。
色んな目が法律を注目し、意見が届くということは、ものを変える力になるのだと思います。
③について
法律を作る際には、非常に複雑な条文におとしこむ職人的な作業があります。
法的には児童手当を子ども手当がくるんでいる状態を条文化しなければならず技術的に非常に難しい法律でした。
これまでの子ども手当は、法的には子ども手当てだけども、児童手当でもあったのです。
連日、徹夜で内閣法制局に通うチームと、外部との調整を行うチームに分かれてフル回転でした。
私もその1人ですが、若手も色んな部署からどんどん投入されて、この2年で子ども手当に関わった人間はかなりの人数になるのではないでしょうか。
僕は、本来児童虐待の担当でしたが、3ヶ月間児童虐待の法令担当の室長補佐は不在となりました。
効率的だったかどうか難しい面はありますが、ある意味では組織論を超えて人材の集中投下がなされたのかもしれません。
気がかりだったのは、同じことが全国の自治体で起こったということです。
子ども手当は22年4月、23年4月
、23年10月、24年4月と、異常に短いスパンで法律
が変わったので市町村の方は年中新しい手当ての支給準備
に追われたと思います。
僕が不在にした3ヶ月児童虐待の対策は他のメンバーがなんとかフォローしていましたが、小さな自治体では、子ども手当と児童虐待と保育と全部同じ人が担当していたりします。
年中、子ども手当の支給作業をしていたため、他の仕事がかなりできなかったという声を聞きます。
また、国と同じで他部署からの応援も相当あったようです。
児童虐待の担当に戻った時に、自治体の人に言われました。
「子ども手当の準備で児童虐待の会議が全然開けないんです・・・。」
子どものいる家庭の方も、頻繁に申請したり、支給要件が変わったり、支給額が変わったりと、中々先が見通せない状態が続いたり、負担もあったのではないかと思います。
中身は、政治の場で話し合って、落ち着くとこに落ち着いたのだろうと思いますが、
恒久法ができたことで、ようやく先が見通せるようになったのではないでしょうか。
自治体の方も、今大変でしょうがこれで色んな仕事を落ち着いてできるようになるのではないかと思います。
制度というのは、スピード感や柔軟性を持って変えていくことが大事ですが、コロコロ変わるとあまりよくないのだろうということを、改めて勉強させていただいた気がします。
スピード感を持ちつつ、慎重に、すぐ変えなくてもよいものを作っていきたいです。